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突然の別れ
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刑務所。
流刑が確定したその日から、1年くらい経った日だった。
一人の刑務官が僕の独房の前に立ち、静かな口調で話しかけてきた。彼は50歳くらいで、非常に物静かで真面目な人だった。やれ、事あるごとに汚い言葉とでかい態度で口癖のように「懲罰だ、懲罰だ」と叫んでいる若い者とは正反対で、僕たちのような人にも優しく紳士的に接してくれた。
「シンイチくんのような人が流刑とは、本当に気の毒に思うよ。」
僕の様子を見て、その人はそう言った。
刑務官一人だけ、時間帯からも流刑執行ではないことはわかるが、何か様子が違うことがあるとその都度心臓が痛くなる。その時点で、人生が終わるのだ。気が狂い、おかしくなってしまう人の気持ちが痛いほどわかる。
その優しい言葉に、あらためて、数カ月後、いや、数日後だろうか・・・。自分の人生が終わる日が来ることを悟る。そしてまた、強い後悔の念に駆られる。
刑務官は静かな口調で続けた。
「無理を承知で、一つだけ伝えたいことがあるんだ。ここだけの話でね。」
突然何だろう。無言で目で返事をする。辺りをきょろきょろと見ると、彼はヒソヒソ話で続けた。
「流刑で流される通称、墓場島と呼ばれている島はとても奇妙な島でね。お化けが住んでいるとか、信じ難いだろうが別世界に通じているとも言われている。」
何を言い出すのかと耳を疑う。しかしながら、いたって真剣な目とその口調は冗談で言っているようには聞こえない。
「もし、その別世界に行くようなことがあったら、その世界を仕切っているボスのような者がいるかもしれない。もし可能ならその情報を教えてほしい。」
「で、でも教えるって、どうやって?」
「さあね。わからない。おそらく不可能だろうね。できたらでいいよ。」
そう言うと刑務官は小さな紙切れを僕に渡し、そそくさとその場を離れていった。紙切れには電話番号のような数字が書かれていた。
変なことを言う人だ。その日はその事が気になっていたが、やがて夢でも見ていたのか、気のせいだったのかと思い、やがてその事は記憶から消えていった。
数日前、ショウイチさんと話したとき、彼も刑務官にその話をされたと言っていた。夢ではなかった。
そしてそれが現実にいることを知った。
アドミニストレーター。何者なのか?彼がスィーを操り、ここを支配しているというのか?
ただ、あの刑務官が言うようにその情報を伝える術など存在しない。
今日も穴掘りの仕事だった。
数日前より、ショウイチさんが穴掘りの道具作りの仕事に移った。今まで、穴掘りの道具として雑に削られた石が時たま手渡されしかたなくそれを利用していたが、あまり特別役立つ事はなかった。他の石と同じく使っているとすぐ砕けてしまう。それが、ショウイチさんが道具作りに携わるようになってから、硬めの石を使って丁寧作られた道具になった。太い木にどこからか調達してきたツタを使って石を固定し、オノのように利用できるようになっている。とても使いやすく作業も少しはかどるようになった。ショウイチさんは夜遅くまで熱心に道具作りをしていた。一般企業で言えばサービス残業だ。僕も数日だけ横に居させてもらい少しばかりお手伝いさせてもらった。そのとき通りすがりにショウイチさんに声とかける人が多かった。その都度ショウイチさんは少し嬉しそうに笑みを浮かべながら丁寧に返事をしていた。その姿を見てとても羨ましく思った。
また、その数日後、数日だけ監視の仕事を命じられた。
とにかく上からずっとヘイリーが現れないかを見つめているだけの仕事で、楽ではあるが恐ろしく退屈だった。ペアとなった男は恐ろしく物静かで、話しかけても会話にならなく、そのこともものすごく気を重くした。彼は僕よりも少し若く見えた。一体何をして流刑となったのか?一切話してはくれなかった。
ある日の夕方、ヘイリーが現れた。
岩陰に数匹隠れていて、川にいる者に向かっていくつもの石を投げて嫌がらせをしていた。威嚇するとヘイリー達はあっさりと去っていった。幸い大怪我するものは居なかったが、擦り傷を負ったり、選択中の服を川に流してしまった者がいたようだ。
そしてまたその数日後、穴掘りを命じられたある日の朝だった。
穴掘りの現場へと行くと、現場近くが騒然としていた。何があったかを聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった。
「ショウイチさんが事故で亡くなったってよ。頭にでかい岩が落ちて即死だろうって。」
穴掘りの現場では良く事故が起きると聞いていた。しかし僕がいたときは起きたことはなかった。よく考えれば、ヘルメットもしてないし指揮官もいない中、見様見真似で仕事をしている。発生してもおかしくはない。しかし・・・。
人だかりの向こうに、倒れている人の足と巨大な岩が見える。岩の横は無情にも濃く赤い血が滲んでいる。
絶対に信じたくない。人違いであってほしい。
人だかりの上にスィーが群がり始める。不気味に旋回しながら様子を見ている。
「ドケ!」
スィーどんどん増えてゆく。そしてその死体に群がる。
大きな岩が持ち上がる。なんという力だろう。死体を引きずり出しているようだ。居ても立っても居られない。スィーの指示を無視し近づく。
スイーの群れが死体を持ち上げる。血が滴り落ちる。そして体の向きが少し変わる。首から先がない。ショウイチさんかどうかわからない。
「ドケ!」
「ジャマダ」
スィーが威嚇してくる。スィーたちの隙間から左肩が覗かせた。1811。その数字が無情にもショウイチさんであることを証明する。
続いて岩に潰された頭だけを持ったスィーが飛ぶ。何匹ものスィーがすべてを覆い尽くしているためその顔は見えない。
それを見ていた近くのカラスがそれを追うように飛びたつ。
そのまま黒い森へ連れていくというのか?止めてくれ。カラスの餌になどしないでくれ。僕が初めて心から尊敬した人だ。
「ドケ!」
「ドケ!」
追う僕を数匹のスィーが針で威嚇してくる。
これがショウイチさんの、そして僕たちの最期なのか。あんまりだ。
我々は確かに重罪を犯した犯罪者だ。だからと言ってこんな最期なんてあって良いものか。ショウイチさんは心から償っていた。誰が見ても立派だった。
人の命を奪った身でありながら、言うべきことではないのかもしれない。しかし、もっと人の命は尊いもののはずだ。
僕に葬らせてくれ。
全身が複雑な心境に襲われる。両手で顔を覆い膝から崩れる。指の間からは水が滴り落ちる。
同じ気持ちだっただろう男が僕の肩を擦ってくれる。
「立派は人だった。みんなの模範となる人だった。俺も本当に彼を尊敬していた。本当に残念だ。」
肩の手は小刻みに震えていた。
ゆっくりと遠ざかる死体に手を合わせる。それしかできなかった。
刑務所生活、そして短かったがここでの生活。辛かったはずだ。でも一切ショウイチさんはそんな素振りは見せなかった。絶対に辛かったはずだ。なのに最期まで自分の罪を償い、人のために尽くすことだけを考えていた。
安らかに。天国でもお元気で。心の中で祈った。
「おい、これヘイリーじゃねえか?」
思わぬ声が耳に入る。岩の様子や、その上の崖の状態を見ていた男が口々に噂する。
たまに山の上にも現れては、大きな岩を落とし嫌がらせをすることがあるらしい。岩が丸い事や他の岩があまり散乱していないことからその可能性があるとのことだ。
深い悲しみが怒りに変わる。頭の熱が急激に上昇し、涙がその熱で蒸発し、同時に猫のように全身の毛が逆立つ。
あいつらは一体何なのだ。一体何が目的だというのだ。
「シゴトニツケ」
残った数匹のスィーが指示してきた。
気持ち悪さとともに、全員、現場に戻った。
流刑が確定したその日から、1年くらい経った日だった。
一人の刑務官が僕の独房の前に立ち、静かな口調で話しかけてきた。彼は50歳くらいで、非常に物静かで真面目な人だった。やれ、事あるごとに汚い言葉とでかい態度で口癖のように「懲罰だ、懲罰だ」と叫んでいる若い者とは正反対で、僕たちのような人にも優しく紳士的に接してくれた。
「シンイチくんのような人が流刑とは、本当に気の毒に思うよ。」
僕の様子を見て、その人はそう言った。
刑務官一人だけ、時間帯からも流刑執行ではないことはわかるが、何か様子が違うことがあるとその都度心臓が痛くなる。その時点で、人生が終わるのだ。気が狂い、おかしくなってしまう人の気持ちが痛いほどわかる。
その優しい言葉に、あらためて、数カ月後、いや、数日後だろうか・・・。自分の人生が終わる日が来ることを悟る。そしてまた、強い後悔の念に駆られる。
刑務官は静かな口調で続けた。
「無理を承知で、一つだけ伝えたいことがあるんだ。ここだけの話でね。」
突然何だろう。無言で目で返事をする。辺りをきょろきょろと見ると、彼はヒソヒソ話で続けた。
「流刑で流される通称、墓場島と呼ばれている島はとても奇妙な島でね。お化けが住んでいるとか、信じ難いだろうが別世界に通じているとも言われている。」
何を言い出すのかと耳を疑う。しかしながら、いたって真剣な目とその口調は冗談で言っているようには聞こえない。
「もし、その別世界に行くようなことがあったら、その世界を仕切っているボスのような者がいるかもしれない。もし可能ならその情報を教えてほしい。」
「で、でも教えるって、どうやって?」
「さあね。わからない。おそらく不可能だろうね。できたらでいいよ。」
そう言うと刑務官は小さな紙切れを僕に渡し、そそくさとその場を離れていった。紙切れには電話番号のような数字が書かれていた。
変なことを言う人だ。その日はその事が気になっていたが、やがて夢でも見ていたのか、気のせいだったのかと思い、やがてその事は記憶から消えていった。
数日前、ショウイチさんと話したとき、彼も刑務官にその話をされたと言っていた。夢ではなかった。
そしてそれが現実にいることを知った。
アドミニストレーター。何者なのか?彼がスィーを操り、ここを支配しているというのか?
ただ、あの刑務官が言うようにその情報を伝える術など存在しない。
今日も穴掘りの仕事だった。
数日前より、ショウイチさんが穴掘りの道具作りの仕事に移った。今まで、穴掘りの道具として雑に削られた石が時たま手渡されしかたなくそれを利用していたが、あまり特別役立つ事はなかった。他の石と同じく使っているとすぐ砕けてしまう。それが、ショウイチさんが道具作りに携わるようになってから、硬めの石を使って丁寧作られた道具になった。太い木にどこからか調達してきたツタを使って石を固定し、オノのように利用できるようになっている。とても使いやすく作業も少しはかどるようになった。ショウイチさんは夜遅くまで熱心に道具作りをしていた。一般企業で言えばサービス残業だ。僕も数日だけ横に居させてもらい少しばかりお手伝いさせてもらった。そのとき通りすがりにショウイチさんに声とかける人が多かった。その都度ショウイチさんは少し嬉しそうに笑みを浮かべながら丁寧に返事をしていた。その姿を見てとても羨ましく思った。
また、その数日後、数日だけ監視の仕事を命じられた。
とにかく上からずっとヘイリーが現れないかを見つめているだけの仕事で、楽ではあるが恐ろしく退屈だった。ペアとなった男は恐ろしく物静かで、話しかけても会話にならなく、そのこともものすごく気を重くした。彼は僕よりも少し若く見えた。一体何をして流刑となったのか?一切話してはくれなかった。
ある日の夕方、ヘイリーが現れた。
岩陰に数匹隠れていて、川にいる者に向かっていくつもの石を投げて嫌がらせをしていた。威嚇するとヘイリー達はあっさりと去っていった。幸い大怪我するものは居なかったが、擦り傷を負ったり、選択中の服を川に流してしまった者がいたようだ。
そしてまたその数日後、穴掘りを命じられたある日の朝だった。
穴掘りの現場へと行くと、現場近くが騒然としていた。何があったかを聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった。
「ショウイチさんが事故で亡くなったってよ。頭にでかい岩が落ちて即死だろうって。」
穴掘りの現場では良く事故が起きると聞いていた。しかし僕がいたときは起きたことはなかった。よく考えれば、ヘルメットもしてないし指揮官もいない中、見様見真似で仕事をしている。発生してもおかしくはない。しかし・・・。
人だかりの向こうに、倒れている人の足と巨大な岩が見える。岩の横は無情にも濃く赤い血が滲んでいる。
絶対に信じたくない。人違いであってほしい。
人だかりの上にスィーが群がり始める。不気味に旋回しながら様子を見ている。
「ドケ!」
スィーどんどん増えてゆく。そしてその死体に群がる。
大きな岩が持ち上がる。なんという力だろう。死体を引きずり出しているようだ。居ても立っても居られない。スィーの指示を無視し近づく。
スイーの群れが死体を持ち上げる。血が滴り落ちる。そして体の向きが少し変わる。首から先がない。ショウイチさんかどうかわからない。
「ドケ!」
「ジャマダ」
スィーが威嚇してくる。スィーたちの隙間から左肩が覗かせた。1811。その数字が無情にもショウイチさんであることを証明する。
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人の命を奪った身でありながら、言うべきことではないのかもしれない。しかし、もっと人の命は尊いもののはずだ。
僕に葬らせてくれ。
全身が複雑な心境に襲われる。両手で顔を覆い膝から崩れる。指の間からは水が滴り落ちる。
同じ気持ちだっただろう男が僕の肩を擦ってくれる。
「立派は人だった。みんなの模範となる人だった。俺も本当に彼を尊敬していた。本当に残念だ。」
肩の手は小刻みに震えていた。
ゆっくりと遠ざかる死体に手を合わせる。それしかできなかった。
刑務所生活、そして短かったがここでの生活。辛かったはずだ。でも一切ショウイチさんはそんな素振りは見せなかった。絶対に辛かったはずだ。なのに最期まで自分の罪を償い、人のために尽くすことだけを考えていた。
安らかに。天国でもお元気で。心の中で祈った。
「おい、これヘイリーじゃねえか?」
思わぬ声が耳に入る。岩の様子や、その上の崖の状態を見ていた男が口々に噂する。
たまに山の上にも現れては、大きな岩を落とし嫌がらせをすることがあるらしい。岩が丸い事や他の岩があまり散乱していないことからその可能性があるとのことだ。
深い悲しみが怒りに変わる。頭の熱が急激に上昇し、涙がその熱で蒸発し、同時に猫のように全身の毛が逆立つ。
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どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
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