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第3章 秘湯の守り神と、白濁の湯けむり旅情
湯けむりの誓い、北への旅路 ☆
「ふあぁ……。極楽、極楽……」
俺、轟豪(とどろき・ごう)は湯けむりの立ち込める大露天風呂で、手足を大きく伸ばしていた。
復活した「湯霧の里」の源泉。
硫黄の香りと、肌にまとわりつくようなトロトロの泉質。
昨夜の激闘(と激しい儀式)の疲れがお湯に溶け出していくようだ。
だが、俺が「極楽」と感じている理由は温泉の質だけではない。
目の前に広がる絶景のせいだ。
「……ごうさん、背中流しますね」
「あ、ズルいセレーネ! 昨日は私がごうさんの係だったのに!」
「あら、昨日は『治療』でしょう? 今日は『慰労』よ」
俺の背後で二人の美女がスポンジとタオルを持って小競り合いをしている。
セレーネは雪のように白い肌と、凛とした筋肉質な肢体を惜しげもなく晒し、豊満な胸を俺の背中に押し付けてくる。
ゼファはチョコレート色の肌にお湯を弾かせ、引き締まったお尻をプリプリと動かして俺の横を陣取っている。
そして、正面には――。
「ふふ。お二方とも、そう焦らなくても。旦那様の体は大きいですから三人で洗っても余りますわよ」
白蛇の神・ミズチが岩場に腰掛けて艶然と微笑んでいた。
昨夜は衰弱しきっていたが、俺の「熱」で完全に復活した彼女は神々しいほどの美しさを放っている。
長い黒髪をアップにし、うなじを露わにした姿。
水面下に見えるHカップのたわわな乳房と、白くむっちりとした太腿。
人間離れしたプロポーションは見ているだけで目の保養だ。
「ミズチ様、体調はもう万全か?」
「ええ。おかげさまで数百年ぶりに体が軽うございます」
(……全部、あなたのおかげ。お腹の中に注がれたあの熱い「種」が……私の炉心となって燃えている。もうあなた無しじゃいられない体になっちゃった……)
ミズチは熱っぽい瞳で俺を見つめ自身の豊満な胸を腕で持ち上げて強調した。
「さあ、旦那様。私も混ぜてくださいな。……昨夜のお礼に、全身くまなく綺麗にして差し上げますわ」
そう言うとミズチは滑るように湯船に入り、俺の股間に向かって泳いできた。
「ちょっ、ミズチ様!? どこを洗う気ですか!」
「そこはまだ早いわよ! 今日はお休みなんだから!」
セレーネとゼファが慌てて牽制する。
俺は苦笑しながら、三人の美女に囲まれるという男の本懐を噛み締めていた。
†
「――んっ、そこ。肩甲骨の下」
「はい、ここね。……ごうさんの筋肉、硬くて素敵」
セレーネが泡立てたタオルで俺の背中を丁寧に洗ってくれる。
ゴシゴシという音と共に、彼女の柔らかな乳房が背中に当たる感触。
硬さと柔らかさのサンドイッチだ。
(……この広い背中。私たちがどんなに寄りかかっても、ビクともしない。……好き。ずっと洗っていたい)
「ごうさん、腕上げるよー! 脇の下も洗うから!」
ゼファは俺の正面から脇や胸板を洗ってくれる。
彼女の手つきは少し乱暴だが、その分、スキンシップが多くて愛らしい。
屈み込んだ彼女の胸元から、ピンク色の乳首がチラチラと見え隠れする。
(ごうさんの匂い……。石鹸の匂いと混ざってすごくいい匂い。……舐めたいな。泡ごと食べちゃいたい)
「ふふ。では私は……足を」
ミズチは湯船の中に潜り、俺の太腿をマッサージし始めた。
お湯の中で彼女の手が這い回る。
人間の手のはずなのに、どこか蛇が巻きつくようなねっとりとした吸着感がある。
「……ミズチ様、ちょっと手が上すぎないか?」
「あら、そうですか? リンパを流しているだけですのに」
(……ここ。一番太くて熱い場所。昨日はこれが私の中に……。思い出すだけでお股が疼いちゃう)
ミズチの手が際どい場所を掠めるたびに、俺のペニスがピクンと反応する。
だが今日は我慢だ。
これから重要な話がある。
「……ふぅ。さっぱりしたな」
全員で洗いっこを終え、再び湯船に浸かったタイミングで俺は切り出した。
「さて、ミズチ様。約束通り北への道を開けてもらえるか?」
俺の言葉に場の空気が少し引き締まる。
ミズチは濡れた髪をかき上げ、真剣な表情(瞳孔が縦に細まった神の顔)に戻った。
「ええ、もちろんです。……ですが一つ訂正がございます」
「訂正?」
「道を開けるだけでは不十分です。……『氷獄のカルデラ』は今の私の力を持ってしても、完全に吹雪を止めることはできません」
ミズチによると、北の地は今、魔王軍の結界と暴走した氷竜の冷気によって、空間そのものが歪んでいるという。
ただの通行手形では結界を抜けられても、その後の極寒地獄で遭難するのがオチだ。
「それに……あの場所には空からの監視者もおります」
「空からの監視者?」
「はい。魔王軍四天王が一角……『空(から)の女王』ハルピュイア。彼女が上空から常に目を光らせています」
冬将軍フィンブルが地上の守りなら、空の守りもいるということか。
サウナ馬車は地上走行だ。
空からの攻撃には分が悪い。
「そこで、提案がございます」
ミズチが湯の中から立ち上がった。
雫が滴る白い肢体が湯気に煙って幻想的に輝く。
「私もお供させてください」
「……えっ?」
「ミズチ様が、一緒に?」
セレーネとゼファが驚く。
土地神である彼女がその地を離れることは異例中の異例だ。
「この里はもう大丈夫です。源泉は復活しましたから。……それに」
ミズチは頬を染め、再び「メス」の顔になって俺を見た。
「私の体はもう、旦那様の『熱』なしでは維持できませんの。……離れ離れになったら、私、寂しくてまた凍え死んでしまいますわ」
(というのは建前で……。もう他のオスなんて考えられないだけ。もっと色んな場所で、色んな体位で温めてほしいんですもの)
彼女の心の声は相変わらず欲望に忠実だ。
だが戦力としても知識としても、彼女以上の適任はいない。
「……分かった。歓迎するぜ、ミズチ」
俺は手を差し伸べた。
「俺のサウナ馬車は定員4名だ。ちょうど一人分、空いてたところだ」
「ふふ。ありがとうございます、旦那様」
ミズチは俺の手を取り、その甲に恭しく口づけをした。
冷たかった唇は、今や温かい。
†
出発の時。
里の村人たちが総出で見送りに来ていた。
彼らは俺たちに大量の食料と、防寒具、そして感謝の言葉を贈ってくれた。
「サウナの勇者様! 本当にありがとうございました!」
「ミズチ様をよろしくお願いします!」
「おう! 任せとけ! 世界中をサウナみたいに熱くして帰ってくるからな!」
俺はサウナ馬車「トトロキ号」の運転席から手を振った。
馬車の後部にはミズチの力で召喚された「魔法の温泉タンク」が増設されている。
これにより、いつでもどこでも「源泉かけ流し」の露天風呂が展開可能になった。
最強の移動要塞の完成だ。
「よし、全員乗ったな?」
リビングには地図を広げるセレーネ、毒の調合(アロマ作り)をするゼファ、そして専用の長椅子で優雅にキセルを吹くミズチ。
見事なハーレムパーティだ。
「目指すは北の最果て、『氷獄のカルデラ』!」
「そこで氷竜をサウナに入れて整わせる!」
「そして、世界に春を取り戻す!」
「出発進行ォォォッ!!」
『ブモォォォォッ!!』
スチーム・ホースが高らかに嘶き、馬車が走り出す。
温泉郷を抜け、景色は再び白銀の世界へ。
だが、行く手の空は今まで以上に暗く、不気味な紫色に淀んでいた。
「……来るわよ、ごうさん」
ミズチが窓の外を見上げ、目を細める。
「あの雲の向こう……。『空の女王』が獲物を狙っている気配がします」
「上等だ。飛んでるハエは蒸気で叩き落としてやる」
俺はハンドルを強く握りしめた。
四人の「熱」があれば、どんな寒さもどんな敵も恐るるに足りない。
俺たちの旅はいよいよ最終局面(クライマックス)へと加速していく。
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