【R18】熱波師の俺が転生したら、氷河期の異世界で【惑星ごと整う】らしい ~伝説のタオル捌きで女神たちを昇天させてみた~

のびすけ。

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第4章 天空のサウナ要塞、トトロキ号

夢幻の氷城、はじまりの足湯

ハルピュイアとの一件から数時間後。 
簡単な応急処置を終えたサウナ馬車「トトロキ号」はついにカルデラの中心部へ到達した。

「……あれが、『竜の涙』」

セレーネが息を呑む。 
吹雪の中心に鎮座していたのは天を突くほどの巨大な氷柱だった。 
透明度が高く、内部で青白い光が脈動している。 
まるで巨大な生物が流した涙が、そのまま凍りついたかのような美しさと哀しみ。

「この中に氷竜の精神世界への入り口があるのですね」

ミズチが長い尾を揺らしながら氷柱に手をかざす。

「行きましょう、旦那様。……彼女の『悪夢』を終わらせるために」

俺たちは四人で手を取り合った。 
俺、セレーネ、ゼファ、ミズチ。 
ここまで旅をしてきた「熱」の絆だ。 
俺は大きく深呼吸をし、氷柱に触れた。

「……お邪魔するぜ、お姫様!」

キィィィィン……! 

視界が青白い光に包まれ、俺たちの意識は肉体を離れ精神の深淵へと吸い込まれていった。



目を開けると、そこは無音の世界だった。 
上も下もない、無限に広がる真っ白な空間。 
床は鏡のように磨かれた氷でできており、どこまでも冷たく静かだ。

「……誰もいないわね」

ゼファが周囲を見渡す。 
その時、遠くにポツンと小さな影が見えた。

俺たちが近づくと、それは巨大な玉座に座る一人の幼い少女だった。 
透き通るような肌、床まで届くプラチナブロンドの髪。 
着ているのは薄いネグリジェのようなドレス一枚。 
彼女は膝を抱え、ガタガタと震えながら虚空を見つめていた。

「……誰?」

少女が顔を上げた。 
その瞳は深海のような深い青色で、絶望的な孤独の色を宿していた。 
氷竜の本体――コキュートスだ。

「……来ないで。……熱いのは、嫌い」

彼女が拒絶の言葉を口にした瞬間、周囲の空気が絶対零度まで低下した。 
バリバリバリッ! 
氷の棘が地面から生え、俺たちを威嚇する。

(怖い……。あたたかいのは、痛い。溶かされると私が私じゃなくなっちゃう……。お願い、放っておいて……)

彼女の心の声が直接脳内に響いてくる。 
怯えている。
世界を滅ぼすほどの力を持っているのに、中身はただの迷子の子供だ。

「下がってろ、みんな」

俺は両手を上げて武器を持っていないことを示しながら、ゆっくりと歩み寄った。

「来ないでって言ってるの!」

コキュートスが手を振るう。 
鋭い冷気が俺の頬を掠め、血が滲む。 
だが、俺は止まらない。
サウナで鍛えた精神力(ととのいマインド)はこの程度の拒絶では揺らがない。

「痛いことはしねぇよ。……ただ、冷えてるのが辛そうだったからな」

俺は彼女の目の前、棘が届かないギリギリの距離で腰を下ろした。 
そして精神世界ならではのイメージ力で、スキルを発動した。

「【簡易設営:檜(ひのき)の足湯】」

ポンッ。 
湯気の立つ四角い桶が出現した。 
中には適温の42度に調整されたお湯と、血行を良くする薬草が浮かんでいる。

「……なに、これ?」

「『足湯』だ。全身入らなくてもいい。足先だけ、ちょっと浸けてみないか?」

「……あし、だけ?」

コキュートスが警戒しながら桶の中を覗き込む。 
湯気からは柑橘系のいい匂いがする。

「熱いのは怖いんだろ? だから、少しずつだ。……怖かったらすぐに足を出せばいい」

俺は優しく微笑んだ。 
これは、サウナが苦手な初心者を沼に引きずり込む時の手口だ。 
いきなり高温サウナはハードルが高い。
まずは気持ちいいところから教える。

「……ちょっと、だけ」

コキュートスは恐る恐る、玉座から華奢な足を下ろした。 
霜焼けで赤くなった小さな足先がお湯の水面に触れる。

チャプン……。

「……っ!」

(あ……。熱い……? ううん、違う。……じわじわする。噛みつかない熱さ……)

彼女の足がお湯の中に沈んでいく。 
冷え切った末端血管が開き、温かい血液が全身へと巡り始める感覚。

「……ふぅ……」

彼女の口から無意識に溜め息が漏れた。 
強張っていた肩の力が少しだけ抜ける。

「いい顔だ。……でも、まだ心が緊張してるな」

俺が合図を送ると待機していたヒロインたちが動いた。 
まずは、ゼファだ。

「失礼するわね、お嬢さん」

ゼファは音もなくコキュートスの横に座り、小さな香炉を取り出した。

「いい匂い……」

「ええ。『安らぎの樹液』のアロマよ。……私もね、昔は毒(孤独)の中にいて誰も寄せ付けなかったの。でも、この匂いと温かさが固まった心を解いてくれたわ」

(このお姉ちゃん……私と同じ匂いがする。寂しくて怖がりな匂い。……でも今はすごく幸せそう……)

ゼファが焚いた甘い香りが冷たい空気を柔らかく変えていく。 
コキュートスの瞳孔が少し開き、トロンとし始めた。

次は、セレーネだ。 
彼女は反対側に座り、コキュートスの冷たい手を自身の手で包み込んだ。

「冷たい手……。私と一緒ね」

「……お姉ちゃんも、冷たいの?」

「ええ。私も氷の魔法使いだから。……熱いものに触れるのが怖かった。自分が溶けて消えてしまう気がして」

セレーネは優しく微笑み俺の方を見た。

「でもね、大丈夫よ。この人の熱はあなたを消したりしない。……あなたが凍らせてしまった『本当の自分』を溶かして取り出してくれるだけ」

(溶けても消えない……? 本当の私が出てくる……?)

セレーネの共感がコキュートスの最大の恐怖(消滅への不安)を取り除いていく。 
そして最後はミズチだ。

「さあ、背中を預けてくださいな」

ミズチはコキュートスの背後に回り込み、豊満な体で彼女を後ろから抱きしめた。 
その柔らかい感触と、母性溢れる包容力。

「……ふわぁ……。やわらかい……」

「ふふ。子供は温かい場所に包まれて眠るのが仕事ですわ。……もう一人で震えなくていいのよ」

ミズチの体温が背中からじんわりと伝わる。 
足湯の熱、アロマの香り、手の温もり、背中の安心感。 
全方位からの「温かい包囲網」により、コキュートスの氷の城壁は音を立てて崩れ去ろうとしていた。

「……ごう、さん……」

コキュートスが潤んだ瞳で俺を見上げた。 
その頬には血色が戻り、桜色に染まっている。

「……もっと。……もっと、温かくして……」

(足だけじゃ足りない。……もっと体の奥までこのポカポカが欲しい。寂しい穴を埋めてほしい……)

彼女の心の声が変わった。 
拒絶から、渇望へ。 
「絶対零度」の氷竜は今、ただの「愛に飢えた少女」へと戻りつつある。

ピキッ、パリンッ……!

周囲の氷の床に亀裂が走った。 
それは崩壊ではない。
 氷の下から春の芽吹きのような、温かい光が溢れ出してきたのだ。

「ああ、任せろ。ここからが本番だ」

俺は立ち上がりタオルを肩にかけ直した。 
足湯は終了だ。 
次はいよいよ、彼女の心の最深部――魂の源泉に入り込み、全てを溶かす「全身浴(ディープ・ラブ)」の時間だ。

「コキュートス。お前の悪夢(さむさ)、俺が全部、汗と一緒に流してやる」

俺が手を差し伸べると彼女は小さく頷き、その小さな手を俺の手のひらに重ねた。 
冷たくて小さな手が俺の熱を吸い取って、ギュッと握り返してくる。

その瞬間、精神世界全体が眩い光と温かい蒸気に包まれた。
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