43 / 74
43・プロ彼女妻の帰還
しおりを挟む
玄関のドアを開けたら、明かりがついていた。
あれ?お茶っ葉を買いに家を出たとき消し忘れたかな?
まさか泥棒?と思ったが、このマンションのセキュリティは万全なはず。
だけど、テレビの音もする。
おそるおそる室内をのぞき込むと、のんきな声が飛んできた。
「やっほーかのこ」
ソファで寛いだままわたしに手を降るのは、美咲だった。
片手にはワイングラス、ローテーブルの上にはすでに中身が半分以上なくなっているボトル。
かなりご機嫌な様子。
少し日に焼けたのか、最後に会ったときより元気そうだ。
「美咲!どうしてここに?」
「残りの荷物を取りに来たのよ。思ったより早く騒ぎになってマンションに入れるか心配だったけど、ちょうどマスコミがあんたに群がった隙に合鍵で入ったのよ。ほんと助かったわ。あ、これお土産あげる」
美咲は、つまみがわりにしていた食べかけの海外土産定番チョコレートの箱をわたしに寄越した。
「あ、ありがと」
「いまテレビ見てたんだけど、これヒドいと思わない?」
と、美咲がテレビの画面を指差した。
夜のニュース番組の芸能コーナーで、池上光太郎の妻A子さん不倫熱愛旅行発覚!と取り上げられている。
“池上光太郎のプロ彼女妻、結婚半年でジムトレーナー、カリスマ美容師、バーテンダーらと親密デート。年下DJとハワイお忍び愛から帰国したばかり”
うわ、たしかにひどい。
こんなデタラメ、名誉毀損も視野に入れて訴えないといけないのでは?
「ひどいね」
「でしょ?!あたしの名前も出すべきよね。しかも顔にモザイクって失礼しちゃうわ。マスコミにリークしたとき宣材用写真もちゃんと送ったのに!」
「は?」
ちょっと待った。
怒りの理由はそこなの?
それからリークって言った?
「あ、あのさ、ちょっと確認したいんだけど、この報道の内容に間違いは?」
「ないわ。ほぼほぼ合ってる。あ、最初の彼はジムのトレーナーじゃなくてヨガインストラクターだけどね」
「つまりほぼほぼ…事実ということ?」
「そおよん」
あったりまえでしょ、と鼻で笑って美咲はワインをぐいっと飲み干した。
愛のない契約結婚、離婚したいけどスキャンダルはダメだからって、涙ながらにわたしを家政婦兼影武者にしたのではなかったのか?。
そんなことはお構いなしに、美咲は空のグラスにワインをどぼどぼ注ぎ足しながら聞いてくる。
「ところで光太郎は?今日はね、あいつにコレを叩きつけるために来たんだから!」
と、彼女は一枚の紙を取り出しテーブルの上にばーんと広げた。
光太郎の名前とサイン以外は記入済みの離婚届けだった。
あれ?お茶っ葉を買いに家を出たとき消し忘れたかな?
まさか泥棒?と思ったが、このマンションのセキュリティは万全なはず。
だけど、テレビの音もする。
おそるおそる室内をのぞき込むと、のんきな声が飛んできた。
「やっほーかのこ」
ソファで寛いだままわたしに手を降るのは、美咲だった。
片手にはワイングラス、ローテーブルの上にはすでに中身が半分以上なくなっているボトル。
かなりご機嫌な様子。
少し日に焼けたのか、最後に会ったときより元気そうだ。
「美咲!どうしてここに?」
「残りの荷物を取りに来たのよ。思ったより早く騒ぎになってマンションに入れるか心配だったけど、ちょうどマスコミがあんたに群がった隙に合鍵で入ったのよ。ほんと助かったわ。あ、これお土産あげる」
美咲は、つまみがわりにしていた食べかけの海外土産定番チョコレートの箱をわたしに寄越した。
「あ、ありがと」
「いまテレビ見てたんだけど、これヒドいと思わない?」
と、美咲がテレビの画面を指差した。
夜のニュース番組の芸能コーナーで、池上光太郎の妻A子さん不倫熱愛旅行発覚!と取り上げられている。
“池上光太郎のプロ彼女妻、結婚半年でジムトレーナー、カリスマ美容師、バーテンダーらと親密デート。年下DJとハワイお忍び愛から帰国したばかり”
うわ、たしかにひどい。
こんなデタラメ、名誉毀損も視野に入れて訴えないといけないのでは?
「ひどいね」
「でしょ?!あたしの名前も出すべきよね。しかも顔にモザイクって失礼しちゃうわ。マスコミにリークしたとき宣材用写真もちゃんと送ったのに!」
「は?」
ちょっと待った。
怒りの理由はそこなの?
それからリークって言った?
「あ、あのさ、ちょっと確認したいんだけど、この報道の内容に間違いは?」
「ないわ。ほぼほぼ合ってる。あ、最初の彼はジムのトレーナーじゃなくてヨガインストラクターだけどね」
「つまりほぼほぼ…事実ということ?」
「そおよん」
あったりまえでしょ、と鼻で笑って美咲はワインをぐいっと飲み干した。
愛のない契約結婚、離婚したいけどスキャンダルはダメだからって、涙ながらにわたしを家政婦兼影武者にしたのではなかったのか?。
そんなことはお構いなしに、美咲は空のグラスにワインをどぼどぼ注ぎ足しながら聞いてくる。
「ところで光太郎は?今日はね、あいつにコレを叩きつけるために来たんだから!」
と、彼女は一枚の紙を取り出しテーブルの上にばーんと広げた。
光太郎の名前とサイン以外は記入済みの離婚届けだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる