影の薄い悪役に転生してしまった僕と大食らい竜公爵様

佐藤 あまり

文字の大きさ
23 / 28

広間side

しおりを挟む
 とある騎士視点

 何がどうなっていることやら……俺はルイス様の偉業が未だに信じられずにいた。
 ルイス様の美しさとそれに相反するような性格は周知の事実のはずなのに、立太子式の時の飾り気の無い服に画期的なレシピ、ディヴィス様のお話される様子など、あまりに噂とかけはなれた姿に俺は未だ戸惑いを隠せていなかった。
 この場にいるほとんどの人がそう思っているだろう、それほど衝撃的だった。


 扉が開いた瞬間、あまりに現実離れした美しさに俺は息を飲んだ。俺だけではない、広間中がルイス様に見蕩れていた。
 こんなにお美しい方だっただろうか……洗練された衣装に身を包んだルイス様は絨毯を1歩、2歩と進み、ふっと上を見上げて小さく微笑んだ。

 天井の硝子から差し込む光が金糸のごとき髪を透かし、柔らかく照らしている。碧の瞳が光を映して煌めき。名画を見ているような、いや、どんな名画も敵わない、どこか神聖ささえ感じる光景だった。

 式は無事に終わりに近づき、ルイス様がこちらに振り返ろうとした瞬間、

 「かふっけふっけふっ」

 覆った手の隙間から漏れ出る赤が衣装に、絨毯に染みを残していく。これは、なんだ。何が起こっている。
 
 破られた沈黙、その後の全ての言葉に理解が追いつかない。
 
 ルイス様が去った後、広間は大混乱に陥った。フィリスの呪い、誰かがそんな言葉を零した。
 ぼかしているが子供の絵本にも出てくる有名な話だ。美しい魂を持った王家の者にだけかかるという、恐ろしい呪いだ。
 運命の番とのキスによって呪いをとくか、7人の命と引き換えに生きながらえるか。触れた人を死に至らせ、やがて自分も死ぬ、孤独の呪い。

 人を避け、少しでも近づかせないようにしていたのは……そればかりか民のためにレシピを開発していただなんて。

 どれだけ孤独だっただろう、呪いの進行で体調も思わしくなかっただろうに。

 ルイス様が去った扉を見つめながら、後悔と焦燥が胸を満たしていた。





 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた

BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。 断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。 ーーそれなのに。 婚約者に婚約は破棄され、 気づけば断罪寸前の立場に。 しかも理由もわからないまま、 何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。 ※最終的にハッピーエンド ※愛され悪役令息

悪役の僕 何故か愛される

いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ 王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。 悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。 そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて… ファンタジーラブコメBL シリアスはほとんどないです 不定期更新

事なかれ主義の回廊

由紀菜
BL
大学生の藤咲啓嗣は通学中に事故に遭い、知らない世界で転生する。大貴族の次男ランバート=アルフレイドとして初等部入学前から人生をやり直し、学園で出会う無愛想で大人顔負けの魔法の実力者であるヨアゼルン=フィアラルドと親友になるが、彼に隠された力に翻弄され次々と襲ってくる災難に巻き込まれる。終いには、国家の存続を揺るがす大事件にまで発展することに・・・

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。

キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。 しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。 迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。 手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。 これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。 ──運命なんて、信じていなかった。 けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。 全8話。

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。

処理中です...