わんこ騎士団長は伝えたい!〜2度目の異世界転移、助けた子犬が大型犬に成長してました〜

佐藤 あまり

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2度目

21 お休みなったら帰っておいで

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 愉快な奴らに見送られギルドを後にする。次はアンナさんに会いに行こう。

 「アンナさーん!」

 「まあコハクちゃん!今日はどうしたの?なんだか嬉しそうね」

 コハクの後ろからひょこっと顔を出す。

 「お久しぶりです、アンナさん」

 「えっ……れ、レイちゃん……?」

 驚愕の表情を浮かべるアンナさんがこちらにゆっくりと歩いてくる。

 「本当に……レイちゃんなの?」

 「そうだよ、アンナさん!レイが帰ってきたんだ!」

 コハクが嬉しそうにアンナさんの手を取り支える。
 
 「まあ……まあまあ、なんてこと……!」

 口元を抑えたアンナさんの目に涙が溜まり、震える手がそっと俺の手を握る。

 とりあえず入ってちょうだい、と言われお店の休憩室にお邪魔した。
 振舞ってくれたにんじんのクッキーは新鮮なにんじんがとっても甘くて美味しい。
 温かいお茶ともマッチして、ほっと一息だ。

 「うふふ、コハクちゃんがお店に入ってきた時ね、とっても懐かしい気持ちになったの、レイちゃんと一緒のコハクちゃんみたいって」  

 「コハクが?俺的にはあんまり変わってないと思うんですけど……」

 「だって普段のコハクちゃんったらいつもキリッとしてて、頼りにされてて、人あたりが良くて落ち着いた感じなんだもの、こーんなに満面の笑みでにぱあってしたコハクちゃん、とっても久しぶりなのよ?」

 「だって、レイが帰ってきたから嬉しいの!」

 クッキーの食べかすをつけながらにぱにぱするコハクに、俺はアンナさんが語った【普段のコハクちゃん】を全く想像できなかった。

 「コハク~ついてるぞ」

 「んっ……レイありがと!」

 フランツ君と話していた時はちょっと大人っぽく見えたけど……そんなに違うのか?

 「まあまあ、帰ってきてくれて本当に嬉しいわ…!おうちとかは決まっているの?良ければまたあそこを使ってもいいのよ?」

 「ありがとうございます。それじゃあ、またお世話になります」

 「えっ」

 即答する俺の横で、コハクが固まった。

 「レイ、俺と一緒に住まないの……?」

 「ああ、昨夜は本当に助かった。でもそんなにお世話になる訳には行かないしな」

 またまたきゅーん……としょんぼりしてしまったコハク。

 「コハクも普段は騎士団のところで寝泊まりするんだろ?あの屋敷にもそんなに帰らないんじゃないか?」

 「レイがいるなら帰るよ……!」

 瞳をうるうるさせながら必死にアピールしてくるものだから俺も負けそうになる。

 「ん……じゃあ週末、お休みなったら帰っておいで?シチューを作って待ってるから、いつでも来ていいぞ」

 「ほんと……?絶対いく……!」

 すぐにしっぽをぶんぶん振ってにぱああ!っとするコハクの耳をむにむにふかふかする。

 「うふふ、待っててちょうだい、鍵を持ってくるわ、1個はコハクちゃんが持ってるけど……」

 「そのまま借りていて大丈夫ですか?」

 コハクも帰ってくる家だし、出来れば俺とコハクでひとつずつ持っておきたい。

 「もちろんよ、持ってくるわね」

 鍵を受け取ってアンナさんと別れ、懐かしい家に向かった。木のぬくもりを感じる家は庭や玄関がとても綺麗にされていて、大切にされていたのを感じる。

 カチャ……扉を開ければ少し薄暗い部屋のソファーに、窓から光が差し込んでいて……コハクはあそこでひなたぼっこするのが大好きだったなぁ

 中に入り色んな所を見たけれど、どれもこれも記憶とさほど変わらずゆるやかに時間が流れている気がする。

 「変わらないな……」

 「うん、ずっと変えたくなくて……でも、これからはどんな風にだってできるよ」

 差し込む光の中、いつかみたいにソファーに転がって心底嬉しそうに微笑むコハクに込み上げる気持ちが抑えきれず、ふわふわの頭を抱きしめた。

 「ぷぁっ……レイ、いきなりどうしたの?」

 「コハク……ごめん、もう大丈夫だ、今日泊まってくか?」

 「いいの?やった!」

 「夕飯は何がいい?リクエスト受付中だ」

 「シチュー!」

 「ふふ、だよな、材料を買ってこよう」

 「一緒にいきたい!」

 一緒に買い物をして、夕方に家に帰って……昔みたいに2人でご飯を食べる。

 「っ……レイのシチュー、美味しい……」

 コハクがぼろぼろと泣き出してしまった。

 「ご飯はちゃんと食べてるのか?今日の朝の目玉焼きとパンくらいじゃ足りないんじゃ……」

 「いつもは騎士団の食堂で食べてるし、今日はたまたま食材がなかっただけ!」

 「それならいいんだ、ちゃんと食べるんだぞ?」

 「もう、レイったら……お腹のすき過ぎで泣いたんじゃないよ……」

 「ふふ、悪い悪い、おかわりあるからな」

 「うん!」


 懐かしい暮らし……冒険者ギルドにも復帰し3年ぶりの戦闘にも慣れてきて、あの頃の日常が戻ってくるような感じがする。

 「レイー」
 
 「はーい、なんですか?」
 
 「これ、騎士団の方に持ってってくれ」

 「騎士団?」

 「ああ、今度の大規模なタイアップの相談をな」

 あの魔物が現れた時、コハクに冒険者ギルドの人達に避難の誘導を頼むよう言ったが、本来それは騎士団の役目だったようで……しかしそれをきっかけに、騎士団がギルドに依頼をするなどの形でよくタイアップするようになったらしい。
 3年前にコハクが団長になってからはさらに連携が取りやすくなり、活発に交流が行われているようだ。

 「分かりました、行ってきますね」

 「おう、コハクによろしく」

 騎士団か、初めて行くな……地図を見て到着したそこは、王宮がすぐ近くに見える立派な建物だった。

 おお、圧倒されそうだ。コハクは毎日ここに来てるのか……あっ誰かいるみたいだな

 「すみません、冒険者ギルドから書類を届けに来ました」



 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
 次回騎士団編です。
 やっと団長モードのコハクを書けます⸜(*ˊᗜˋ*)⸝
 感想とっても嬉しいです*.(๓´͈ ˘ `͈๓).*
 ゆっくり読んで返信しますので少しだけお返しが遅くなる時があるかもしれませんがよろしくお願いします(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)
 
 

 

 
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