異世界で転生悪役令嬢の侍女になりました

坂井ユキ

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一章

第九話

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「もう、そのままこの部屋を使えばいいのに……」

荷物……というような物は何もないが、使用人用の部屋に移動する準備をしていたら、部屋にセリーナさんがやって来た。
頬をぷくーっと膨らませて不満顔だけど、それもまた可愛い。

「いえ、流石にそれは他の使用人の皆さんにも悪いですし……」

「そんなこと気にするような使用人はうちには居ないわよ。ねえ?」

「確かにその通りではありますが、そこはミリ様のご意志を尊重しませんと」

とはマリーさん。
ブツブツと文句を言っているセリーナさんを相手にしても、穏やかな笑顔は全く変わらない。

他者が居る時は令嬢モードで過ごしているらしいセリーナさんだが、マリーさんの前では素の状態になっている。
なんでも、マリーさんは今は私のお世話をしてくれているけど、本来はセリーナさん付きの侍女らしく、ものごごろつく前からずっと一緒にいるそうだ。

「あ、マリー。
ミリは服とか身の回りの物もないだろうから、また私の物から適当に持って行ってね」

……え?今なんと?

「あの、もしかして今私の着てる服とかって……」

「ん?私の服よ。
ほら、私達の身長同じくらいでしょ?だからサイズ何とかなるかなーって」

恐る恐る尋ねる私の横に立ち、身長を比べて見せるセリーナさん。
いや、確かに同じくらいではあるけど。

「ずっと制服着てる訳にもいかないでしょ?」

超絶美少女に耳元でそっと囁かれ、同性なのに思わずドキドキしてしまう。
制服ではこの世界の服装とはあまりにもかけ離れていて、悪目立ちしてしまうのはわかるけど、仮にも公爵令嬢という立場の人の服をそんな簡単にホイホイと借りていいものなのか。

「お嬢様は気になさる方ではありませんし、1度言い出したら聞かない方でもありますので、諦めてください」

心中お察ししますという感じに、マリーさんも苦笑いしている。
あー、やっぱりあんまり普通のことじゃないみたい。
そりゃそうか。

その後も、あれも持ってけこれも持ってけと言い続けるセリーナさんを宥めつつ、最終的にはマリーさんに止めてもらって無事に使用人部屋への引越しは完了した。
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