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1.「首を切り落としてくれ!」
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「首を切り落としてくれ!」
毎日、軽い拷問を受け続けている。
私は異質な世界に迷い込んでしまった。日常から非日常へと続く門をくぐり、虚無の深淵が底無しに続く。
「もういいかげんにしてくれよ!」と自分の首に叫びたい気持ちだ。
脳が右を向けと指令を出す。私の意識とは関係なく頭が勝手に右に回ろうとする。真正面を向こうと、意識的に頭を左に回そうと試みるが、身体は拒否する。思考が非線形に脳内を交錯して駆け巡る。両手を後頭部に添えて、頭を固定しながらため息をつく。
軽く目を瞑り、沈思黙考。鼻から大きく息を吸い込み、口からゆっくり息を吐き出す。そのまま、慎重に右を向けた頭を真正面に持っていこうとする。きつく目を瞑り、歯を食いしばる。頭を動かそうと何とか努力するが、全く反応しない。歯がゆい。目鼻や口だけは何とか意識を左に向けてみる。滑稽な顔になるだけだ。どう足掻いても、頑張っても頭は右を向いたままだ。むしろ、頭はもっと右へ右へ回転しようとする。
「歩、お前の頭の真正面はこれだ!」
自分自身に叱咤激励するが、効果はない。
両手で頭を固定して、鏡の前の自分自身に何度も叫ぶ。何度も何度も、自分に言い聞かせる。ゆっくり手を放す、と同時に首は右にぐるりと回転してしまう。
「うぅー」と呻いたところで何も事態に変化はなし。頭の中も、ぐるぐるぐるぐる螺旋階段のように、回旋していく。
首が勝手に右へ向く以外、他に症状はないのだ。最高の良薬は、横臥安静にしておくことしかない。読書をしても、テレビを視聴していても、否応なく頭は右を向うとする。そのため、何をしても集中できない。ベッドやソファに横たわり続けるしかなかった。無駄に消費する時間が空しく過ぎていく。
マンションの窓から外を眺める。十数羽の鳥が群れをなして、翼を広げて旋回していた。何度も何度も回転しながら、飛んでいる。何か目的があるのだろうか。
私に残された手段は思考実験や頭で物事を色々考えることくらいだなと自嘲気味に笑う。「鳥はなぜ飛べる?空を飛ぶ鳥類は、骨の内部を空洞化させるという軽量化の工夫がみられるからだ。鳥類の骨は軽いのに、強靭だから、負荷のかかる部分を強化している。鳥類はそのように進化した……」
私の場合は、進化ではなく、何と言えばいいのだろうか。自問自答を繰り返す。
「誰が首を乗っとった?なぜこんな病気になった?」
いくら考えても答えは出てこない。どこかに魂を置き去りにしてしまいたい。
しばらく外を眺めていると、一羽が群れから外れた。それでも他の鳥たちは、気にせずに、いつまでもぐるぐると同じ場所をずっと回っていた。
毎日、軽い拷問を受け続けている。
私は異質な世界に迷い込んでしまった。日常から非日常へと続く門をくぐり、虚無の深淵が底無しに続く。
「もういいかげんにしてくれよ!」と自分の首に叫びたい気持ちだ。
脳が右を向けと指令を出す。私の意識とは関係なく頭が勝手に右に回ろうとする。真正面を向こうと、意識的に頭を左に回そうと試みるが、身体は拒否する。思考が非線形に脳内を交錯して駆け巡る。両手を後頭部に添えて、頭を固定しながらため息をつく。
軽く目を瞑り、沈思黙考。鼻から大きく息を吸い込み、口からゆっくり息を吐き出す。そのまま、慎重に右を向けた頭を真正面に持っていこうとする。きつく目を瞑り、歯を食いしばる。頭を動かそうと何とか努力するが、全く反応しない。歯がゆい。目鼻や口だけは何とか意識を左に向けてみる。滑稽な顔になるだけだ。どう足掻いても、頑張っても頭は右を向いたままだ。むしろ、頭はもっと右へ右へ回転しようとする。
「歩、お前の頭の真正面はこれだ!」
自分自身に叱咤激励するが、効果はない。
両手で頭を固定して、鏡の前の自分自身に何度も叫ぶ。何度も何度も、自分に言い聞かせる。ゆっくり手を放す、と同時に首は右にぐるりと回転してしまう。
「うぅー」と呻いたところで何も事態に変化はなし。頭の中も、ぐるぐるぐるぐる螺旋階段のように、回旋していく。
首が勝手に右へ向く以外、他に症状はないのだ。最高の良薬は、横臥安静にしておくことしかない。読書をしても、テレビを視聴していても、否応なく頭は右を向うとする。そのため、何をしても集中できない。ベッドやソファに横たわり続けるしかなかった。無駄に消費する時間が空しく過ぎていく。
マンションの窓から外を眺める。十数羽の鳥が群れをなして、翼を広げて旋回していた。何度も何度も回転しながら、飛んでいる。何か目的があるのだろうか。
私に残された手段は思考実験や頭で物事を色々考えることくらいだなと自嘲気味に笑う。「鳥はなぜ飛べる?空を飛ぶ鳥類は、骨の内部を空洞化させるという軽量化の工夫がみられるからだ。鳥類の骨は軽いのに、強靭だから、負荷のかかる部分を強化している。鳥類はそのように進化した……」
私の場合は、進化ではなく、何と言えばいいのだろうか。自問自答を繰り返す。
「誰が首を乗っとった?なぜこんな病気になった?」
いくら考えても答えは出てこない。どこかに魂を置き去りにしてしまいたい。
しばらく外を眺めていると、一羽が群れから外れた。それでも他の鳥たちは、気にせずに、いつまでもぐるぐると同じ場所をずっと回っていた。
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