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第1話
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「ごめんなさい。」
彼女からのこの返事で俺の告白は終わりを告げた。
彼女からの返事を聞いて、脈が全くないわけじゃないだろうと思っていた告白する前の自分に「やめておけ。」と忠告できるなら残りの高校生活の髪型を坊主にしてもいいとすら思った。
でも、本当に脈はあると思ったんだよな。高一の時に隣の席だったから少しずつ話すようになって、放課後に教室で読んでる漫画の話をしたり、俺や恭平とか数人とカラオケに行ったりして遊んだりしていたから友だちだとは思ってもらえているとは思うんだけど…もしかして友だちとしか思えないから付き合えないってことなのか?それとも他に好きな人がいるからなのか?ああ、理由を聞きたいけど聞いたら未練がましい奴だと思われるか?ああ、でも聞きたいなぁ。
「あのさ、戸塚くんには申し訳ないんだけど、トツカくんって彼女いないじゃん…だから付き合えない。」
ん?今なんて言った?
俺は彼女が口にした俺を振った理由が全く予想していなかったものだったので戸惑ってしまった。
「え~と、ごめん。聞き間違いかな?彼女がいないから俺と付き合えないって言われた気がしたんだけど?」
俺の問いかけに対して「何かおかしなこと私言った?」と言わんばかりにきょとんとした表情で「うん。そう言ったけど。」と彼女は返答してきた。
俺はますます意味が分からず、「え?どういうこと?俺に彼女がいるから付き合えないっていうのなら分かるけど、いないから付き合えないって…いない方が良くない?もしかして『彼女がいたことがないモテない男子はお断りだ!』っていうこと?」と問いかけ続けた。
すると彼女はにっこり笑いながら「ううん。違うよ。まあ確かに誰からも相手にされない魅力のない男子はお断りだけど、トツカくんは話も合うし見た目も清潔感あるし良い印象を持っているよ。だけど…。」と返答した。
「だけど…何?」
ここまで来てはぐらかされるのだけは嫌だったので俺は更に問い詰めた。
「私さ、本命の彼女にはなるつもりはないんだ。私、愛人志望なの。だから…。」
そう言って彼女は不敵な笑みを浮かべつつ一拍置いて言葉を続けた。
「トツカくんに彼女が出来たら付き合ってあげる。」
俺が好意を寄せて告白した相手、梶原れもんは愛人志望の女子高生だった。
「はぁ~。」
俺は翌日の昼休みに親友である一宮恭平の前で大きなため息をついていた。
「ハハハ。まあ確かに『愛人志望だから彼女がいない人とは付き合えない。』なんて言われて振られたらため息をつきたくもなるよな。」
キョウヘイは笑いながらも俺のことを気遣ってくれているようだった。
しかし俺はまだ振られた理由が納得できずキョウヘイに愚痴っていた。もちろん周りに人がいなくて、話を聞かれる心配が少ない場所で話をしていた。俺がカジワラに振られたことやカジワラが愛人志望だなんてことを誰かに聞かれたくなかったからだ。
「しかもずっと愛人でいたいみたいで結婚願望もないみたいなんだよ!いや、俺も結婚を前提に付き合ってほしかったわけではないよ!けど大人の女性ならともかく、高校生の女子が愛人志望だなんておかしいだろ!自分の将来に希望を持たな過ぎだろ!まずは自分が生活できるくらいの収入を得て、余裕ができたら好きな人と結婚して子供を作って育てようと思うのが普通じゃないのか?」
俺の愚痴に対してさっきまで笑っていたキョウヘイは急に真顔になり、「誠。俺もそれが普通だと思うけど、今は多様性を認めなきゃいけない時代だから、『これが普通だ!』って言って自分の考えを押し付けるのは良くないんじゃないかな。例えば結婚はしたいけど子供は欲しくないっていう人もいるだろうし、同性愛者の人は今の日本では結婚すらできないんだぜ。」と俺を諭すような発言をした。
「確かに今の俺の発言は間違っていたけど、キョウヘイが例に挙げた人たちとカジワラは違うだろ!愛人は良くないことでもあるだろ!」
俺はこんな時まで正論を言ってくるキョウヘイに苛立ち、声を荒らげて反論した。
そんな俺に対してキョウヘイはあくまで冷静に「そうだな。セイの言う通り、事実婚でも結婚している男性の愛人なら違法だな。でもそれを訴えられるのはその男性のパートナーの人だけだから、そのパートナーの人が黙認してしまえばどうしようもできないぞ。それに金持ちの男性の愛人になれれば、普通に結婚するよりもいい暮らしができるかもしれないから、民法上違法だからといってカジワラの考え方を変えさせるのは難しいと思うぞ。」と意見を述べてきた。
キョウヘイの意見は何となく聞いてしまえば納得してしまいそうな意見だったが、俺の「愛人は良くないことだろ!」という意見の反論にはなっていないように感じた。なぜなら愛人は民法上違法だとキョウヘイも認めたからだ。
だけど問題はそこじゃない。問題はキョウヘイの言う通り、愛人になった相手のパートナーが黙認または(ありえないと思いたいが)承認してしまえば、俺がとやかく言おうとカジワラが聞き入れるとは思えないことだ。しかも相手がとんでもない金持ちなら一般的な会社員と結婚するよりも幸せに暮らせるかもしれない。それにお金目的だけでなく相手のことも好きだったら全く問題ないようにすら思えてくる。
みるみるうちに顔が青ざめていく(ように感じている)俺に対してキョウヘイは冷酷な言葉を投げてきた。
「まあ、カジワラを止めたいなら悪い方向へ進む前に何とかした方がいいぞ。愛人で生きていこうと考えている女子高校生なら、もうすでに行動に移しているかもしれないからな。」
「行動?行動ってなんだよ?」
「例えばパパ活とかかな。将来そのまま愛人になれそうな相手を探しながらやっているかもしれないぞ。クラスの男子の意見とかを何となく聞いた感じだとカジワラは同じ学年の女子の中でも可愛い方に入るみたいだから、相手には困らないだろうな。「ブスは三日で慣れる。」って言葉もあるくらいだから、カジワラが金銭的な幸せを重視していたら、ブサイクな金持ちのおじさんともパパ活してるかもしれないぞ。」
「……それはヤダな。」
「やっぱりブサイクなおじさんにカジワラを取られるのは嫌か?」
「いや、ブサイクとかおじさんとか関係なく、誰かにカジワラを取られるのが嫌だ。」
「……ハハハハ!」
急にキョウヘイが笑いだしたので、何かおかしなこと言ったかな?と不思議に思っているとキョウヘイが「ハハハ!そうだよな!お前はそういう奴だったよな!ハハハハ!」と、よく分からないことを言ってきた。
キョウヘイが笑う理由が分からなかったので、「何がそんなにおかしいんだよ!」と問いただすと、キョウヘイは「ごめんごめん。何もおかしくないよ。ただセイと友だちで良かったなと思ってさ。」と余計に分からなくなるようなことを言ってきた。
ただ言われて恥ずかしいことを言われたので、「何急に恥ずかしいこと言ってんだよ!気持ち悪いな。」と辛辣な言葉を言って照れ隠しをした。
「まあ、とりあえず…。」
キョウヘイは真面目な顔をしてさっきまでのことをなかったかのように仕切り直した。
「カジワラの考えを変えたかったらセイが証明するしかないな。」
「証明?なにを?」
「愛人になるよりも本命の彼女になった方がいいってことをだよ。」
「どうやって?本命の彼女としては付き合えないって言われたんだぞ。」
「だからまずはカジワラをお前に惚れさせればいいだろ。そうすれば愛人じゃなくても付き合ってくれると思うぞ。」
「そうか!カジワラが俺に惚れれば問題ないのか!で、どうやって惚れさせればいいんだ?」
俺は当然カジワラを俺に惚れさせる方法も考えてくれているものだと思い、すごく期待しながらキョウヘイの返答を待った。
するとキョウヘイは急に焦った表情になり、「それは……分からん!少しは自分でも考えろよ!」と少し俺を突き放した言葉を言ってきた。
期待は裏切られたが、キョウヘイが言うことももっともだと感じた。自分の好きな相手を自分に惚れさせる方法が簡単に分かれば、誰も恋愛事で悩んだりしないだろう。それに何もかも他人からのアドバイスで行動する奴を好きになる女子はいないだろうしな。
「分かった!カジワラを俺に惚れさせればいいって所までは考えてくれたんだから、方法は自分で考えるよ!ありがとな!キョウヘイ!」
「あ、ああ。まあ俺も考えておくけどな。カジワラをお前に惚れさせる方法。」
「ホントか?ありがとう!キョウヘイ!」
俺がキョウヘイにお礼を言ったところで昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。
「それじゃ、話の続きは放課後ってことにして、まずは教室に戻ろう!」
「ああ、そうだな。」
そう返事をして、俺とキョウヘイは教室に戻った。
彼女からのこの返事で俺の告白は終わりを告げた。
彼女からの返事を聞いて、脈が全くないわけじゃないだろうと思っていた告白する前の自分に「やめておけ。」と忠告できるなら残りの高校生活の髪型を坊主にしてもいいとすら思った。
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俺は彼女が口にした俺を振った理由が全く予想していなかったものだったので戸惑ってしまった。
「え~と、ごめん。聞き間違いかな?彼女がいないから俺と付き合えないって言われた気がしたんだけど?」
俺の問いかけに対して「何かおかしなこと私言った?」と言わんばかりにきょとんとした表情で「うん。そう言ったけど。」と彼女は返答してきた。
俺はますます意味が分からず、「え?どういうこと?俺に彼女がいるから付き合えないっていうのなら分かるけど、いないから付き合えないって…いない方が良くない?もしかして『彼女がいたことがないモテない男子はお断りだ!』っていうこと?」と問いかけ続けた。
すると彼女はにっこり笑いながら「ううん。違うよ。まあ確かに誰からも相手にされない魅力のない男子はお断りだけど、トツカくんは話も合うし見た目も清潔感あるし良い印象を持っているよ。だけど…。」と返答した。
「だけど…何?」
ここまで来てはぐらかされるのだけは嫌だったので俺は更に問い詰めた。
「私さ、本命の彼女にはなるつもりはないんだ。私、愛人志望なの。だから…。」
そう言って彼女は不敵な笑みを浮かべつつ一拍置いて言葉を続けた。
「トツカくんに彼女が出来たら付き合ってあげる。」
俺が好意を寄せて告白した相手、梶原れもんは愛人志望の女子高生だった。
「はぁ~。」
俺は翌日の昼休みに親友である一宮恭平の前で大きなため息をついていた。
「ハハハ。まあ確かに『愛人志望だから彼女がいない人とは付き合えない。』なんて言われて振られたらため息をつきたくもなるよな。」
キョウヘイは笑いながらも俺のことを気遣ってくれているようだった。
しかし俺はまだ振られた理由が納得できずキョウヘイに愚痴っていた。もちろん周りに人がいなくて、話を聞かれる心配が少ない場所で話をしていた。俺がカジワラに振られたことやカジワラが愛人志望だなんてことを誰かに聞かれたくなかったからだ。
「しかもずっと愛人でいたいみたいで結婚願望もないみたいなんだよ!いや、俺も結婚を前提に付き合ってほしかったわけではないよ!けど大人の女性ならともかく、高校生の女子が愛人志望だなんておかしいだろ!自分の将来に希望を持たな過ぎだろ!まずは自分が生活できるくらいの収入を得て、余裕ができたら好きな人と結婚して子供を作って育てようと思うのが普通じゃないのか?」
俺の愚痴に対してさっきまで笑っていたキョウヘイは急に真顔になり、「誠。俺もそれが普通だと思うけど、今は多様性を認めなきゃいけない時代だから、『これが普通だ!』って言って自分の考えを押し付けるのは良くないんじゃないかな。例えば結婚はしたいけど子供は欲しくないっていう人もいるだろうし、同性愛者の人は今の日本では結婚すらできないんだぜ。」と俺を諭すような発言をした。
「確かに今の俺の発言は間違っていたけど、キョウヘイが例に挙げた人たちとカジワラは違うだろ!愛人は良くないことでもあるだろ!」
俺はこんな時まで正論を言ってくるキョウヘイに苛立ち、声を荒らげて反論した。
そんな俺に対してキョウヘイはあくまで冷静に「そうだな。セイの言う通り、事実婚でも結婚している男性の愛人なら違法だな。でもそれを訴えられるのはその男性のパートナーの人だけだから、そのパートナーの人が黙認してしまえばどうしようもできないぞ。それに金持ちの男性の愛人になれれば、普通に結婚するよりもいい暮らしができるかもしれないから、民法上違法だからといってカジワラの考え方を変えさせるのは難しいと思うぞ。」と意見を述べてきた。
キョウヘイの意見は何となく聞いてしまえば納得してしまいそうな意見だったが、俺の「愛人は良くないことだろ!」という意見の反論にはなっていないように感じた。なぜなら愛人は民法上違法だとキョウヘイも認めたからだ。
だけど問題はそこじゃない。問題はキョウヘイの言う通り、愛人になった相手のパートナーが黙認または(ありえないと思いたいが)承認してしまえば、俺がとやかく言おうとカジワラが聞き入れるとは思えないことだ。しかも相手がとんでもない金持ちなら一般的な会社員と結婚するよりも幸せに暮らせるかもしれない。それにお金目的だけでなく相手のことも好きだったら全く問題ないようにすら思えてくる。
みるみるうちに顔が青ざめていく(ように感じている)俺に対してキョウヘイは冷酷な言葉を投げてきた。
「まあ、カジワラを止めたいなら悪い方向へ進む前に何とかした方がいいぞ。愛人で生きていこうと考えている女子高校生なら、もうすでに行動に移しているかもしれないからな。」
「行動?行動ってなんだよ?」
「例えばパパ活とかかな。将来そのまま愛人になれそうな相手を探しながらやっているかもしれないぞ。クラスの男子の意見とかを何となく聞いた感じだとカジワラは同じ学年の女子の中でも可愛い方に入るみたいだから、相手には困らないだろうな。「ブスは三日で慣れる。」って言葉もあるくらいだから、カジワラが金銭的な幸せを重視していたら、ブサイクな金持ちのおじさんともパパ活してるかもしれないぞ。」
「……それはヤダな。」
「やっぱりブサイクなおじさんにカジワラを取られるのは嫌か?」
「いや、ブサイクとかおじさんとか関係なく、誰かにカジワラを取られるのが嫌だ。」
「……ハハハハ!」
急にキョウヘイが笑いだしたので、何かおかしなこと言ったかな?と不思議に思っているとキョウヘイが「ハハハ!そうだよな!お前はそういう奴だったよな!ハハハハ!」と、よく分からないことを言ってきた。
キョウヘイが笑う理由が分からなかったので、「何がそんなにおかしいんだよ!」と問いただすと、キョウヘイは「ごめんごめん。何もおかしくないよ。ただセイと友だちで良かったなと思ってさ。」と余計に分からなくなるようなことを言ってきた。
ただ言われて恥ずかしいことを言われたので、「何急に恥ずかしいこと言ってんだよ!気持ち悪いな。」と辛辣な言葉を言って照れ隠しをした。
「まあ、とりあえず…。」
キョウヘイは真面目な顔をしてさっきまでのことをなかったかのように仕切り直した。
「カジワラの考えを変えたかったらセイが証明するしかないな。」
「証明?なにを?」
「愛人になるよりも本命の彼女になった方がいいってことをだよ。」
「どうやって?本命の彼女としては付き合えないって言われたんだぞ。」
「だからまずはカジワラをお前に惚れさせればいいだろ。そうすれば愛人じゃなくても付き合ってくれると思うぞ。」
「そうか!カジワラが俺に惚れれば問題ないのか!で、どうやって惚れさせればいいんだ?」
俺は当然カジワラを俺に惚れさせる方法も考えてくれているものだと思い、すごく期待しながらキョウヘイの返答を待った。
するとキョウヘイは急に焦った表情になり、「それは……分からん!少しは自分でも考えろよ!」と少し俺を突き放した言葉を言ってきた。
期待は裏切られたが、キョウヘイが言うことももっともだと感じた。自分の好きな相手を自分に惚れさせる方法が簡単に分かれば、誰も恋愛事で悩んだりしないだろう。それに何もかも他人からのアドバイスで行動する奴を好きになる女子はいないだろうしな。
「分かった!カジワラを俺に惚れさせればいいって所までは考えてくれたんだから、方法は自分で考えるよ!ありがとな!キョウヘイ!」
「あ、ああ。まあ俺も考えておくけどな。カジワラをお前に惚れさせる方法。」
「ホントか?ありがとう!キョウヘイ!」
俺がキョウヘイにお礼を言ったところで昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。
「それじゃ、話の続きは放課後ってことにして、まずは教室に戻ろう!」
「ああ、そうだな。」
そう返事をして、俺とキョウヘイは教室に戻った。
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