好きになった女子が愛人にしかなる気がないと言っていたので、形だけの彼女を作って愛人として付き合ってもらった。

無自信

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第3話

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 昇降口へ向かう間、カジワラとハタケは俺とキョウヘイの前を歩きながら楽しそうに漫画の話をしていた。俺はそんなカジワラの様子を見て、ますますカジワラの心理状態が理解できずにいた。そんな俺の肩をポンポンとキョウヘイが叩いてきたので「なんだよ。」と尋ねた。

するとキョウヘイは右手の人差し指を立てて自分の口に当て「シーッ。」と言ってきた。よく分からないがあまり大きな声を出してほしくないみたいなので、俺は小声で「どうしたんだ?」と尋ねた。キョウヘイは小声で「一緒に帰れないか?」と聞いてきた。

「大丈夫だけど、何かあったのか?」

「あとで話すよ。」

そう言うとキョウヘイはそれ以上何も言ってこなかった。

昇降口で靴に履き替えて校門まで行くとキョウヘイを迎えに来ていた黒塗りの高級車が止まっていた。キョウヘイは使用人の方が開けたドアから車に乗り込むと「それじゃ、3人ともまた明日。」と言って、そのまま帰宅してしまった。

あれ?キョウヘイの奴すぐ帰っちゃったけど、何か俺に話があるんじゃなかったっけ?まあ、あとで電話で話せばいいと思ったのかな?と自分なりに納得する理由を考えると俺はカジワラとハタケの2人と一緒に家路に着いた。

俺は徒歩で帰るがカジワラとハタケは同じ駅で電車に乗って帰るので、その駅までいつも一緒に帰っていた。カジワラと2人きりだったら気まずかったが(そもそも2人きりで一緒に帰るかどうかも怪しいが)ハタケも一緒だったので何とかなった。

というのもほとんどカジワラとハタケの2人が話をしていて、俺は時々「ね?トツカくん?」や「トツカくんはどう?」と言われて、「ああ、そうだな。」と相槌を打ったり、「俺はこう思うよ。」と答えたりすれば良かったからだ。

何事もなく駅に着くと「また明日ね。トツカくん。」と言ってカジワラとハタケは改札口を通って行った。正直な話をすると俺の家にまっすぐ帰るなら、駅に寄らない方が早く帰れるのだが、カジワラとハタケと話すのが楽しかったのでいつも一緒に帰っていた。

ただ昨日のことがあるのでこれからどうしようか悩む。でも急に一緒に帰らなくなったら、ハタケに勘繰られるかもしれない。そう思うと、このままカジワラの俺への接し方が変わらない限り俺も接し方を変えない方がいいと思ってしまう。はぁ~。どうしよう。それでも踏ん切りがつかない俺がため息をついていると、俺の目の前にどこかで見たことがある黒塗りの高級車が止まった。

あれ?この車って?

すると黒塗りの高級車の後部座席の窓が開いて、キョウヘイが「よぉ!」と手を挙げて声を掛けてきた。

「キョウヘイ!お前帰ったんじゃなかったっけ?」

「何言ってんだよ?あとで話があるって言ったじゃん。でもカジワラとハタケに知られたくなかったから、2人とセイが離れる時を待ってたんだよ。さぁ、早く乗れよ!」

「おっ!送ってくれるのか?サンキュー。」

そう返事をしてキョウヘイの送り迎えをしてくれる黒塗りの高級車に乗り込んだ。
俺が乗り込むと車はすぐに発進した。

「で、俺に話って何だ?別に家に帰ってから電話で話すこともできたのに。」

「直接話したくってさ。それで話っていうのは、俺気付いたんだよ。カジワラをお前に惚れさせる方法。」

「え!マジで?どんな方法だよ?」

今日の昼休みに話をしてからまだ5時間くらいしか経っていないのに、もうカジワラを俺に惚れさせる方法を思いついたとキョウヘイが言ってきたので、驚きと嬉しさから大きな声を出してしまった。

「まぁ、待て待て。焦るなよ。いいか?まずカジワラはお前の外見と性格は知っていて、その点については文句がないって言ってたんだよな?」

「ああ、そう言ってたよ!で、方法は?」

俺はすぐにでも方法を聞きたいので、キョウヘイの話をさっさと進めようとキョウヘイを急かしたが、キョウヘイは慌てることなく自分のペースで話を進めた。

「だから、あとはセイがカッコよく輝いてるところをカジワラに見せるしかないと思うんだよ。そして同じ学校の学生という立場でセイが輝いているところをカジワラに見せるとしたら勉強面か部活面のどちらかってことだ。でも部活面は運動部に入っても今から活躍できるほどセイにスポーツの才能はないと思うし、文化部にしても何かしらの成果を残すのは残りの高校生活では難しいと思う。」

「うんうん。それはそうだよな。それでどうしたらいいんだ?」

「だけど運動という点なら部活じゃなくても活躍しているところを見せられるよな?何だか分かるか?」

こんな時にいちいちクイズを入れないでほしい。でも口に出すと余計に時間が掛かりそうだな。ここは素直にクイズに参加しておくか。

「え~と?運動で活躍だろ?……分かった!球技大会だろ!うちの高校は所属している部活と同じ球技には参加できないからな!」

「そう!球技大会でカジワラにカッコいいところを見せて、『付き合ってあげてもいいかな。』ぐらいに考えを変えさせればいいんだよ!だから特訓するぞ!セイ!」

「分かった!……ところでこの車どこに向かってるんだ?俺の家じゃなさそうだけど?」

キョウヘイは俺の発言の意味が理解できないという表情をして、「セイ、お前何言ってるんだよ?特訓するって言ったじゃないか。」と返答してきた。

今度は俺がキョウヘイの発言の意味が理解できないという表情をして、「言ったけど、どこで特訓するんだよ?確か、男子の球技大会での種目はバスケとバレーと卓球じゃなかったっけ?どれも設備がなければ特訓できそうにないけど……。」と問い返した。

するとキョウヘイはニヤリと笑いながら、「大丈夫。設備がある場所に向かってるから。ほら!もうすぐ着くぞ!」と視線を車の進行方向に向けて返答してきた。

俺がキョウヘイの視線の方向へ顔を向けると、何度か見たことがある門が見えてきた。

「なぁ、もしかして特訓する場所って?」

「そう。俺の家だよ。」
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