好きになった女子が愛人にしかなる気がないと言っていたので、形だけの彼女を作って愛人として付き合ってもらった。

無自信

文字の大きさ
58 / 60

第58話

しおりを挟む
 ハタケは「何でもする。」って言ってるんだし、一緒に下校してくれるようにカジワラを説得してもらうってのはどうだろう?でも、夏休み中はナツキとハナザワさんのことに集中しないと2人に失礼な気がするから、ハナザワさんと一緒に図書室で本を読むことやナツキと一緒に下校することをやめて、カジワラと一緒に下校することはできないよなぁ。

それならデートをなかなかしてくれないカジワラと休日も一緒にいるために、ハタケやキョウヘイと一緒に4人で遊ぶ約束を取り付けるのを手伝ってもらうってのはどうだろう?4人で遊ぶのならカジワラも拒否しない気がするし。ハタケとキョウヘイは事情を知っているから、頼めば俺とカジワラを2人きりにしてくれるだろうし、この案は悪くないんじゃないか?

いや、待てよ。ナツキとは公園デートしてるし、ハナザワさんとは図書館デートをしてる。てことは、カジワラをデートに誘うことはすでに可能なのか。ハナザワさんとのデートを数に入れていいのかは少し疑問だが、デートはデートだからいいだろう!ということはハタケに頼むようなことは今のところないんだな。せっかく強力な助っ人を手に入れたのに使いどころがないのはもったいない気がするなぁ……。

「……先輩。トツカ先輩!」

「……あ!ハナザワさんどうかした?」

「もうそろそろ降りるバス停に着きますよ!」

「ごめんごめん。考え事してて全然気づかなかった。降りる準備しなきゃね。」

ナツキとハナザワさんのことに集中しなきゃいけない!と考えていたが、実際はデートの移動中に考え事をするぐらいハナザワさんのことをほったらかしにしてしまい申し訳なく感じていた。

こんなんじゃいけない!もっとハナザワさんに楽しんでもらえるようにしないと!
俺は気を引き締め直した。


 県立図書館に着くとまずはカウンターに向かった。そこで俺とカジワラさんが借りた本を返却した。俺は2冊だけだったが、ハナザワさんは6冊返却していた。前回県立図書館に来た時に借りるところを見ていたので分かってはいたのだが、2週間で6冊も本を読むことができるハナザワさんの本を読む速さに驚いた。

まあ、俺の生活習慣では2週間で6冊も本を読むのが難しいというだけで、俺が漫画を読む時間やスマホで動画を見る時間なんかをハナザワさんは読書に当ててるのかもしれないな。

本を返却し終えると席を確保してハナザワさんが薦めてくれた本を読んだ。今回薦めてくれた本も恋愛小説だったが、発行された年が古いので内容を理解することよりもまず使用されてる言葉を理解する方が難しかった。

俺が四苦八苦しながら本を読んでいたら、ポンポンと肩を叩かれた。パッと振り向くとハナザワさんが、「そろそろお昼ですけど、どうします?」と聞いてきた。

腕時計を見ると12時5分前ぐらいだった。俺は1時間以上頭をフルに使って本を読んでいたため、お腹が減ってたので、「それじゃお昼にしようか?」と返答した。

俺の返答を聞くとハナザワさんは、「それじゃあ、この前と同じく3階のラウンジに行きましょう。」と提案してきた。

ハナザワさんの提案を了承して、俺とハナザワさんは3階のラウンジに向かった。

ラウンジに着くとハナザワさんはバッグから前回よりも大きな弁当箱を取り出した。前回と同じく俺が肩にかけて図書館まで来たのだが、今回はそれなりに大きなバッグを2つも肩にかけて来たのですごく大変だった。1つはハナザワさんが借りていた本を入れてきたのは分かったのだが、2つ目はお弁当を入れてきていたことが今分かった。

「保冷剤を入れておいたので、中身は悪くなってないと思います。安心して食べてください!」

前回よりも大きな弁当箱とはいえ、あんなにバッグが重かったのは何故だろう?と疑問に思っていたがナツキの時と同じく大量の保冷剤がバッグに入っているのが見えて、俺は疑問が解決できてスッキリした。

ハナザワさんが弁当箱を開けると、前回よりも品数が増えて豪華になっているのが見て取れた。

「美味しそうだなぁ。いただきます!」

俺はハナザワさんが作ってくれたお弁当を食べ始めながら、これ2人で食べ切れるかな?残したら悪い気がするし、俺が食べなきゃな!ナツキみたいに食後に運動を勧めてこないよな?と余計なことを考えてしまい、もうすでに少し食欲が落ちていた。


 俺がハナザワさんのお弁当をしばらく食べていると、ハナザワさんが、「そろそろお話ししましょうか?」と聞いてきた。

「え?何を?」

「私がトツカ先輩を好きになった理由をですよ。」

「あー。そうだったね。うん。話してもらえるなら、是非お願いするよ。」

いろいろ考えることがあったため、俺はこの日の一番の目的を忘れていた。

「私、小学生の時から暇さえあれば本を読んでいたんです。だから友だちもほとんどいなくて……でも、友だちが欲しくないわけではなかったんです。」

「……うん。」

この話がどう本題につながっていくか分からないが、急かすのも悪いと思い、相槌を打ちながらハナザワさんの話を聞いた。

「友だちが欲しいけど友だちを作る努力をしてこなかったから、友だちの作り方が分からなくなって、中学生の時は友だちがいませんでした。だからと言っていじめられていたわけでもないので、クラスの人たちにとって私は空気みたいな存在だったんです。このままじゃダメだ!このままじゃいけない!と思いつつも、自分からは何も行動を起こしませんでした。いつかこんな私にも興味を持って話しかけてくれる人が現れることを信じて待つだけでした。でも結局中学生の時はそんな人は現れませんでした。そして高校生になっても自分を変えられない私は高校生活スタート時の友だち作りもうまく行かず、高校でも一人ぼっちかなと思っている時に、トツカ先輩と出会ったんです。」

「うん。」

そうか。あまり関係なさそうな話からこんな風に本題につながって来るんだな。でもこれだと一人ぼっちだったハナザワさんが、ちょっと接点を持った俺に抱いた好意を恋愛感情だと勘違いしたんじゃないかな?という疑問が浮かんだ。

「トツカ先輩との出会いが昔の少女漫画に出てきそうな出会いだから好きになったわけではないですよ!トツカ先輩と小説の話をするのが楽しかったから、トツカ先輩ともっといろんな話をしたい!と思うようになっていた時にヒナタ先輩とトツカ先輩が付き合ってると知ったんです。」

あー!市立図書館でハナザワさんと出くわした時の話だな。と俺ははっきりと思い出していた。

「その時すごいショックだったけど、ヒナタ先輩みたいな美人でスタイルもいい彼女がいるんだったら私なんて相手にしてくれるわけないな。と納得しようとしたんです。でもしばらくしてトツカ先輩が別な女性と一緒にいるところを目撃してしまったんです。それにもすごいショックを受けたんですけど、同時に、『あーやっぱり、まだ私トツカ先輩のこと好きなんだな。』って確信したんです。その後、トツカ先輩を問い質してヒナタ先輩が形ばかりの彼女だと聞いたので、それならその役は私でもいいんじゃないかな?って思い、現在に至るって感じですかね。」

「そっか。」

ハナザワさんが俺を好きになった理由は小説の話をして楽しかったから、好きだと気付いたのはカジワラと俺が一緒にいるところを見た時か。まあ、よくある理由と言えばよくある理由だな。だが1つだけ気になることがある。

「ハナザワさんはナツキを形ばかりの彼女にして愛人を作ってる俺を嫌いにはならなかったの?」

「いえ、むしろそこまでして好きな人と付き合おうとするトツカ先輩を振り向かせたいと思いました。それに振り向いてもらえれば、きっとずっと私のことを見てくれると思ったから。それを言うならトツカ先輩も『愛人にしかなりたくない。』って言われて振られた相手をホントに愛人にするなんて変わってますよ。」

確かにハナザワさんだけでなく俺も十分変わり者だった。普通、「愛人にしかなりたくない。」なんて言って自分を振った相手をホントに愛人にしようとする奴なんていないよな。でも諦めたくなかったんだ!諦めたらいけない気がしたんだ!あれ?なんか引っかかるぞ?なんでカジワラは愛人にしかなりたくないんだ?なんかそこに俺がカジワラを好きになった理由が隠れてる気がする。そうだ!それなら!

俺はハタケにどうしてもしてもらいたいことを思いついた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...