ハッコウ少女とネクラな俺と

無自信

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第14話

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 「……という質問をしてみようと思うんだけど、どうかな?」

次の日、俺は最近当たり前のようになった朝のホームルーム前のナカマくんとの会話で、昨日思いついた質問の可否をナカマくんに聞いていた。

「うん。いいと思う。確かにちょっと不思議だったしな。」

「そうだよね。この質問いいと思うよね。」

ナカマくんのお墨付きをもらって俺は自分が考えた話題に自信を持った。

「根倉はどう予想している?美化委員の活動だけあった理由?」

ナカマくんが俺の意見にすごく興味があるかのように楽しそうに質問してきた。

「え?俺は美化活動の時間が短かったから大丈夫だったのかな?って考えた。俺たちがゴミ拾いしたの40分くらいだったじゃん?」

「やっぱりそう予想するよな。あとはゴミ拾いしたのが学校の敷地内と校舎の周りだったからかな?」

「それもあると思う。」

「まあ、美化委員のセキネさんに質問すればきっと分かるよな。理由が分かったら俺にも教えてくれよ!」

「分かった。絶対教えるよ。」

「頼むぞ。そろそろホームルームの時間だな。俺は自分の席に戻るよ。」

「ちょっと待って!」

ナカマくんが席に戻ろうとするのを俺は呼び止めた。

「どうした?根倉?」

俺に呼びとめられた理由をナカマくんは尋ねてきた。俺は「これ約束していた漫画。」と言ってカバンから漫画を3冊取り出した。

「もう持ってきてくれたのか。ありがとう。根倉。ちょっと待っててくれ。」

ナカマくんは漫画を受け取らずに一度自分の席に戻り、カバンから何かを取り出して戻ってきた。

「はい。これ!返そう返そうとは思っていたんだけどなかなか持ってこなくてごめん!」と言って、ナカマくんは以前貸した小説を俺に返してきた。

「ありがとう。ナカマくんって律義なんだね。」

「借りた物を返さずにまた何かを借りるのは借りる相手に対して失礼だと思うからさ。律義とかそんな大層なものじゃないよ。それじゃあ、漫画借りてくな。ありがとう。」

漫画を受け取ってナカマくんが自分の席に戻って行った後に担任の先生が教室に入ってきてホームルームが始まった。そのまま何事もなく午後の授業まで終わった。

俺がセキネさんに話しかけることもセキネさんに話しかけられることも当然だがなかった。帰りのホームルームも終わりあとは下校するだけとなった。俺は明日の美化活動でセキネさんに話しかける作戦を話し合うためにナカマくんが一緒に駅まで帰ってくれると思っていたが、ナカマくんはクラスの友達と一緒に下校してしまった。

別に約束していたわけでもないし、ナカマくんにも友達付き合いがあるのは分かっているのだけれど、少し、いやかなり寂しい気持ちになりながら1人で下校した。


 次の日の土曜日に登校すると最近は当然のように話しかけてきてくれたナカマくんは昨日一緒に下校していたクラスの友達と楽しそうに会話していた。

俺はチラッとだけそれを見て自分の席に着き、カバンから小説を取り出して読み始めた。と言っても小説の内容は全然頭に入ってこなかった。

いやいや今まで通りに戻っただけだから!最近の状態が異常だっただけだから!と自分に言い聞かせて納得しようとしたが、人間1回いい思いをすると以前の状態には戻れない体になってしまうらしく、寂しい気持ちは全然払拭出来なかった。

そもそも友だちでもないナカマくんが俺に話しかけてくれないことを寂しがること自体が筋違いというものだ。話しかけられるのを待つのではなくこちらから話しかけることができるような関係にナカマくんとなっておけば良かったんだ。だがそれが出来たらとっくにセキネさんとも友だちになれているだろう。話しかけたことがない人に話しかけるという精神的ストレスに耐えられる人に友だちが出来るのかな?友だち作りをほとんどしてこなかった俺には到底できそうにない。

まず考えるべきだったのはセキネさんと友だちになる方法ではなくて、友だちでもない俺に話かけてくれていたナカマくんと友だちになる方法だったんだ。とひどく後悔した。でもまだナカマくんと友だちになる機会がないわけではない!今回の美化活動は参加してくれると言ってたので、美化活動の時に頑張って話しかけてナカマくんと友だちになろう!と考え直した。

本来の目的とは違うけどナカマくんとセキネさんのどちらが俺と友だちになってくれる可能性が高いか?と考えるとナカマくんの方が可能性高そうなので今後のことも考えてまずはナカマくんと友だちになれるように努力しようと決意した。そして午前の授業はナカマくんに話しかける話題を考えていたためにほとんど上の空だった。
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