97 / 161
本物の家族
97
しおりを挟む
「有紗に離婚届を書いてくれって言われたんだけど、断った。このまま有紗の夫として有紗を見届けてやりたいんだけど、いいかな?」
「どうして私に聞くの?」
柴原さんは逡巡してから、まっすぐな目で私を見つめる。その瞳は意思が強くて視線を外すことができない。
「美咲がこの家を出ていってしまいそうだから。」
「そりゃいつかは、とは思っているけど。」
「そうじゃなくて、俺はずっと美咲にいてほしい。」
「いやいや、私便利屋じゃないし。」
「俺は美咲と家族になりたい。」
「…はい?」
思わずすっとんきょうな声が出て、その声に反応してかすずが身じろいだ。私は慌てて声のトーンを落とす。
「家族って言ったって柴原さん結婚してるじゃん。」
「うん、だから聞いてる。」
「意味がわかりません。」
「正直、初めから有紗には恋愛感情はない。あるのは情のみだ。すずがいるから繋がっている。俺が好きなのは美咲だけだよ。」
「な、な、な、なにそれ。」
まるで最初から私たち付き合っていましたみたいな発言だ。
でも正直嬉しいと思ってしまった。
受け入れたいと思ってしまった。
ずっとこの言葉を待っていたかのように、私の心は跳ね上がる。
「柴原さんって不器用だよね。」
「そうかな?」
「出ていかないよ。これからも一緒にいる。お姉ちゃんの代わりにすずを立派に育てる。」
「しまったな、先にすずを布団に寝かせておくんだった。美咲を抱きしめられない。」
「なにそれ。私は求めてないですけど。」
私はそっと柴原さんにもたれ掛かるように肩に頭を置いた。いつかのお昼寝の時のように。ぴったりとくっつく。
「今はこれだけでいい。」
「そうか。」
ちょっと残念そうな声が頭の上から聞こえた。
でも私は十分幸せな気分だった。
「どうして私に聞くの?」
柴原さんは逡巡してから、まっすぐな目で私を見つめる。その瞳は意思が強くて視線を外すことができない。
「美咲がこの家を出ていってしまいそうだから。」
「そりゃいつかは、とは思っているけど。」
「そうじゃなくて、俺はずっと美咲にいてほしい。」
「いやいや、私便利屋じゃないし。」
「俺は美咲と家族になりたい。」
「…はい?」
思わずすっとんきょうな声が出て、その声に反応してかすずが身じろいだ。私は慌てて声のトーンを落とす。
「家族って言ったって柴原さん結婚してるじゃん。」
「うん、だから聞いてる。」
「意味がわかりません。」
「正直、初めから有紗には恋愛感情はない。あるのは情のみだ。すずがいるから繋がっている。俺が好きなのは美咲だけだよ。」
「な、な、な、なにそれ。」
まるで最初から私たち付き合っていましたみたいな発言だ。
でも正直嬉しいと思ってしまった。
受け入れたいと思ってしまった。
ずっとこの言葉を待っていたかのように、私の心は跳ね上がる。
「柴原さんって不器用だよね。」
「そうかな?」
「出ていかないよ。これからも一緒にいる。お姉ちゃんの代わりにすずを立派に育てる。」
「しまったな、先にすずを布団に寝かせておくんだった。美咲を抱きしめられない。」
「なにそれ。私は求めてないですけど。」
私はそっと柴原さんにもたれ掛かるように肩に頭を置いた。いつかのお昼寝の時のように。ぴったりとくっつく。
「今はこれだけでいい。」
「そうか。」
ちょっと残念そうな声が頭の上から聞こえた。
でも私は十分幸せな気分だった。
4
あなたにおすすめの小説
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
地味女だけど次期社長と同棲してます。―昔こっぴどく振った男の子が、実は御曹子でした―
千堂みくま
恋愛
「まりか…さん」なんで初対面から名前呼び? 普通は名字じゃないの?? 北条建設に勤める地味なOL恩田真梨花は、経済的な理由から知り合ったばかりの次期社長・北条綾太と同棲することになってしまう。彼は家事の代償として同棲を持ちかけ、真梨花は戸惑いながらも了承し彼のマンションで家事代行を始める。綾太は初対面から真梨花に対して不思議な言動を繰り返していたが、とうとうある夜にその理由が明かされた。「やっと気が付いたの? まりかちゃん」彼はそう囁いて、真梨花をソファに押し倒し――。○強がりなくせに鈍いところのある真梨花が、御曹子の綾太と結ばれるシンデレラ・ストーリー。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
初恋を諦めたら、2度目の恋が始まった
suguri
恋愛
柚葉と桃花。双子のお話です。
栗原柚葉は一途に澤田奏のことが好きだった。しかし双子の妹の桃花が奏と付き合ってると言い出して。柚葉は奏と桃花が一緒にいる現場を見てしまう。そんな時、事故に遭った。目覚めた柚葉に奏への恋心はなくなってしまうのか。それから3人は別々の道へと進んでいくが。
初投稿です。宜しくお願いします。
恋愛あるある話を書きました。
事故の描写や性描写も書きますので注意をお願いします。
借りてきたカレ
しじましろ
恋愛
都合の良い存在であるはずのレンタル彼氏に振り回されて……
あらすじ
システムエンジニアの萩野みさをは、仕事中毒でゾンビのような見た目になるほど働いている。
人の良さにつけ込まれ、面倒な仕事を押しつけられたり、必要のない物を買わされたり、損ばかりしているが、本人は好きでやっていることとあまり気にしていない。
人並みに結婚願望はあるものの、三十歳過ぎても男性経験はゼロ。
しかし、レンタル彼氏・キキとの出会いが、そんな色の無いみさをの日常を大きく変えていく。
基本的にはカラッと明るいラブコメですが、生き馬の目を抜くIT企業のお仕事ものでもあるので、癖のあるサブキャラや意外な展開もお楽しみください!
イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~
美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。
貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。
そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。
紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。
そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!?
突然始まった秘密のルームシェア。
日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。
初回公開・完結*2017.12.21(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.02.16
*表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。
お見合いから本気の恋をしてもいいですか
濘-NEI-
恋愛
元カレと破局して半年が経った頃、母から勧められたお見合いを受けることにした涼葉を待っていたのは、あの日出逢った彼でした。
高橋涼葉、28歳。
元カレとは彼の転勤を機に破局。
恋が苦手な涼葉は人恋しさから出逢いを求めてバーに来たものの、人生で初めてのナンパはやっぱり怖くて逃げ出したくなる。そんな危機から救ってくれたのはうっとりするようなイケメンだった。 優しい彼と意気投合して飲み直すことになったけれど、名前も知らない彼に惹かれてしまう気がするのにブレーキはかけられない。
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる