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第25章〜転生王子は2年生
2021年元日 特別編 新年のお祝いカード
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これは学校が始まる前。コルトフィアからステア王立学校へ戻る道中のお話である。
宿屋の一室。机に向かう俺に向かって、ホタルが尋ねる。
【フィル様、お勉強してるです?】
俺は文字を書き終えてから、ホタルを振り返った。
「これは勉強じゃないよ。グレスハートにいる父さんたち皆に、お祝いのカードを書いてるんだ」
【何のお祝いっすか?】
テンガは机に前足をかけ、背伸びをして覗き込む。
俺は書き上げたばかりのカードを、テンガに見せた。
「新しい年になったお祝いだよ。今年は直接会って、新年の挨拶ができないからね」
この世界にも、元日のように一年のはじまりを祝う日がある。
グレスハートでも神へ年初めの祈りをささげた後、家族そろってお祝いの食事を食べていた。
しかし、今年は急遽コルトフィア旅行に行くことになったので、俺とアルフォンス兄さんは参加できない。
ステラ姉さんがお嫁に行って、さらに俺たちもいないとなると、父さんたちも寂しいだろう。
とくに、レイラ姉さんが沈んでるんじゃないかなぁ。
新しい年の晴れやかな日に、しょんぼりとしているレイラ姉さんの姿が浮かぶ。
だから、年賀状みたいに、せめて年初めのお祝いカードを送ろうかなって思ったんだよね。
「アルフォンス兄さまたちにも家族皆へのお祝いカードを書いてもらってるんだ。アリスはお母さんのアリアに、カイルはお世話になっているスケさんとカクさんに書くって言ってた」
【皆喜んでくれたらいいですわね】
微笑むヒスイに、俺は頷く。
「だから、テンガ。皆のカードが完成したら、ポケットを使ってお城のポストに送ってくれる?」
【了解っす!皆の大事なお祝いカード、しっかり送り届けるっす】
テンガは任せろとばかりに、前足で自分の胸を叩く。
「ありがとう。よろしくね」
俺が微笑んでそんなテンガを撫でていると、ザクロがおずおずと言った。
【フィル様。オイラも城にいる兄貴にお祝いカード送りてぇんですが……】
ザクロのお兄さんであるガァちゃんは、城で働く料理長の召喚獣だ。
「僕が一言添えれば、ガァちゃんに渡してもらうことは可能だと思うよ。ちなみにだけど……氷亀だけでやり取りする文字みたいなものはないよね?」
【それがねぇと、やっぱりカード作れねぇんですかぃ】
シュンとするザクロを、慌てて抱き上げる。
「大丈夫!方法を考えるから!」
……とは言ったものの、どうしたらしいだろう。
俺が書いて、料理長に読んでもらう?
いや、ガァちゃんが見て直接ザクロの気持ちが伝わるものの方がいいよな。
だから当然、ザクロが人間の文字を書く方法も、ガァちゃんに伝わらなきゃダメなわけで……。
「ん~。……あ!」
抱き上げたザクロを見つめて、しばらく考え込んでいた俺は、不意に思いつく。
そうして絵日記用に使っている画材を取り出し、絵の具をつけた筆でザクロの足の裏を塗り始めた。
【うひゃひゃひゃひゃひゃ!】
笑ってジタバタともがくザクロを、俺はなだめる。
「ちょっとだけ我慢して。植物で作られた絵の具だから、ピリピリしないでしょ?」
【ピリピリはしやせんが、くすぐってぇです!うひゃひゃ!】
「待って待って……はい、終わったよ」
ザクロの右前足の裏を水色に塗り終えて、俺は息を吐く。
【綺麗なお空の色です!】
ホタルが言い、飛んできたルリが俺の肩に降りて尋ねる。
【フィル様、何やってるんですか?】
「ガァちゃんにも伝わる、お祝いカード作りだよ。こうしてザクロの足をカードに押し付けて……」
ハガキサイズのカードに、ぺったりと足形をスタンプする。
「よし、綺麗に出来た!これに僕がザクロの絵を描いて……」
【おぉぉぉ!ザクロのカードっす!】
【フィル様、すごいです!】
【絵もついてるから、ザクロからのお祝いカードだってわかりますわね】
テンガとホタル感嘆の声を上げ、ヒスイが手を叩く。
すると、コハクを頭に乗せたランドウが机によじ登ってきた。
【何騒いでるかと思ったら、お祝いカードとか面白そうなことやってるなぁ】
ザクロはそんなランドウに向かって「へへっ」と自慢げに笑ってから、足を拭く俺を見上げる。
【ありがとうごぜぃやす。フィル様】
ザクロが喜んでくれて良かった。もらったガァちゃんもきっと喜ぶだろう。
【コハクもやる!】
ランドウの頭から机に降り立ったコハクが、ピッと片翼を挙げる。
「コハクも?いいけど。誰にあげるの?」
コハクは挙げていた翼を、小首を傾げていた俺に向かって指し示した。
「僕?」
コハクは頷いて、フンスと鼻息を吐く。
それを聞いて、ランドウは高々と前足を挙げた。
【はいはーい!俺もやるー!!】
【俺もあげたいっす!】
【ボクもフィル様にあげるです!】
【わ、わた、私も!】
テンガも元気よく前足を挙げ、ホタルやルリも慌てて言う。
【オイラももちろん、作りますぜ】
ザクロはにっこりと笑い、ヒスイも微笑む。
【私は足跡ではありませんが、植物をつかったカードにしますわ】
俺はあたたかい気持ちで笑った。
「嬉しいよ。もらうのが楽しみだ」
そうして、皆で俺のためのお祝いカード作りが始まった。
ヒスイは押し花のカードを作ってくれた。
ザクロは一度作ったこともあり、綺麗な足跡のカードができた。
テンガは元気のいい足跡のカード。
ランドウは押す勢いが強すぎて、若干輪郭がブレていた。
ホタルの足は埋もれるほど短いので手伝ってあげたのだが、それでも押すのになかなか苦労した。
ルリはカードの上に着地したので、小さな足跡が真ん中に4つ。
コハクはカードの上で動き回り、なかなか楽しい仕上がりになった。
「わぁ、可愛いカードがいっぱいできたね。どうもありがとう!」
カードを受け取った俺は、ホタルたちの頭を撫でる。
【コクヨウのアニキは、フィル様にお祝いカード作らないっすか?】
布巾で足を拭いていたテンガが、コクヨウに尋ねる。
【誰が好き好んで足を汚すか】
寝転がっていたコクヨウは、頭だけ持ち上げてフンと鼻を鳴らした。
「え、コクヨウはくれないの?コクヨウの可愛い肉球スタンプ欲しかったのに」
催促するものではないが、こんな機会はないから召喚獣皆のお祝いカードが欲しい。
残念そうに呟くと、コクヨウはむくりと起き上がった。
【……特別だぞ】
そう言って机の上にひょいっと上がったコクヨウは、絵の具のパレットにタンッ、真っ白なカードにタンッ、とリズミカルに足を載せる。
無造作に押したわりに、カードにはくっきり綺麗な足跡がついた。
「やっぱりコクヨウの肉球絶妙に可愛い!ありがとう、コクヨウ」
コクヨウを抱き上げ、足を拭きながら微笑む。
【まぁ、新年の祝いだからな】
尻尾を揺らしつつ、コクヨウは呟く。
「うん。今年もよろしくね」
宿屋の一室。机に向かう俺に向かって、ホタルが尋ねる。
【フィル様、お勉強してるです?】
俺は文字を書き終えてから、ホタルを振り返った。
「これは勉強じゃないよ。グレスハートにいる父さんたち皆に、お祝いのカードを書いてるんだ」
【何のお祝いっすか?】
テンガは机に前足をかけ、背伸びをして覗き込む。
俺は書き上げたばかりのカードを、テンガに見せた。
「新しい年になったお祝いだよ。今年は直接会って、新年の挨拶ができないからね」
この世界にも、元日のように一年のはじまりを祝う日がある。
グレスハートでも神へ年初めの祈りをささげた後、家族そろってお祝いの食事を食べていた。
しかし、今年は急遽コルトフィア旅行に行くことになったので、俺とアルフォンス兄さんは参加できない。
ステラ姉さんがお嫁に行って、さらに俺たちもいないとなると、父さんたちも寂しいだろう。
とくに、レイラ姉さんが沈んでるんじゃないかなぁ。
新しい年の晴れやかな日に、しょんぼりとしているレイラ姉さんの姿が浮かぶ。
だから、年賀状みたいに、せめて年初めのお祝いカードを送ろうかなって思ったんだよね。
「アルフォンス兄さまたちにも家族皆へのお祝いカードを書いてもらってるんだ。アリスはお母さんのアリアに、カイルはお世話になっているスケさんとカクさんに書くって言ってた」
【皆喜んでくれたらいいですわね】
微笑むヒスイに、俺は頷く。
「だから、テンガ。皆のカードが完成したら、ポケットを使ってお城のポストに送ってくれる?」
【了解っす!皆の大事なお祝いカード、しっかり送り届けるっす】
テンガは任せろとばかりに、前足で自分の胸を叩く。
「ありがとう。よろしくね」
俺が微笑んでそんなテンガを撫でていると、ザクロがおずおずと言った。
【フィル様。オイラも城にいる兄貴にお祝いカード送りてぇんですが……】
ザクロのお兄さんであるガァちゃんは、城で働く料理長の召喚獣だ。
「僕が一言添えれば、ガァちゃんに渡してもらうことは可能だと思うよ。ちなみにだけど……氷亀だけでやり取りする文字みたいなものはないよね?」
【それがねぇと、やっぱりカード作れねぇんですかぃ】
シュンとするザクロを、慌てて抱き上げる。
「大丈夫!方法を考えるから!」
……とは言ったものの、どうしたらしいだろう。
俺が書いて、料理長に読んでもらう?
いや、ガァちゃんが見て直接ザクロの気持ちが伝わるものの方がいいよな。
だから当然、ザクロが人間の文字を書く方法も、ガァちゃんに伝わらなきゃダメなわけで……。
「ん~。……あ!」
抱き上げたザクロを見つめて、しばらく考え込んでいた俺は、不意に思いつく。
そうして絵日記用に使っている画材を取り出し、絵の具をつけた筆でザクロの足の裏を塗り始めた。
【うひゃひゃひゃひゃひゃ!】
笑ってジタバタともがくザクロを、俺はなだめる。
「ちょっとだけ我慢して。植物で作られた絵の具だから、ピリピリしないでしょ?」
【ピリピリはしやせんが、くすぐってぇです!うひゃひゃ!】
「待って待って……はい、終わったよ」
ザクロの右前足の裏を水色に塗り終えて、俺は息を吐く。
【綺麗なお空の色です!】
ホタルが言い、飛んできたルリが俺の肩に降りて尋ねる。
【フィル様、何やってるんですか?】
「ガァちゃんにも伝わる、お祝いカード作りだよ。こうしてザクロの足をカードに押し付けて……」
ハガキサイズのカードに、ぺったりと足形をスタンプする。
「よし、綺麗に出来た!これに僕がザクロの絵を描いて……」
【おぉぉぉ!ザクロのカードっす!】
【フィル様、すごいです!】
【絵もついてるから、ザクロからのお祝いカードだってわかりますわね】
テンガとホタル感嘆の声を上げ、ヒスイが手を叩く。
すると、コハクを頭に乗せたランドウが机によじ登ってきた。
【何騒いでるかと思ったら、お祝いカードとか面白そうなことやってるなぁ】
ザクロはそんなランドウに向かって「へへっ」と自慢げに笑ってから、足を拭く俺を見上げる。
【ありがとうごぜぃやす。フィル様】
ザクロが喜んでくれて良かった。もらったガァちゃんもきっと喜ぶだろう。
【コハクもやる!】
ランドウの頭から机に降り立ったコハクが、ピッと片翼を挙げる。
「コハクも?いいけど。誰にあげるの?」
コハクは挙げていた翼を、小首を傾げていた俺に向かって指し示した。
「僕?」
コハクは頷いて、フンスと鼻息を吐く。
それを聞いて、ランドウは高々と前足を挙げた。
【はいはーい!俺もやるー!!】
【俺もあげたいっす!】
【ボクもフィル様にあげるです!】
【わ、わた、私も!】
テンガも元気よく前足を挙げ、ホタルやルリも慌てて言う。
【オイラももちろん、作りますぜ】
ザクロはにっこりと笑い、ヒスイも微笑む。
【私は足跡ではありませんが、植物をつかったカードにしますわ】
俺はあたたかい気持ちで笑った。
「嬉しいよ。もらうのが楽しみだ」
そうして、皆で俺のためのお祝いカード作りが始まった。
ヒスイは押し花のカードを作ってくれた。
ザクロは一度作ったこともあり、綺麗な足跡のカードができた。
テンガは元気のいい足跡のカード。
ランドウは押す勢いが強すぎて、若干輪郭がブレていた。
ホタルの足は埋もれるほど短いので手伝ってあげたのだが、それでも押すのになかなか苦労した。
ルリはカードの上に着地したので、小さな足跡が真ん中に4つ。
コハクはカードの上で動き回り、なかなか楽しい仕上がりになった。
「わぁ、可愛いカードがいっぱいできたね。どうもありがとう!」
カードを受け取った俺は、ホタルたちの頭を撫でる。
【コクヨウのアニキは、フィル様にお祝いカード作らないっすか?】
布巾で足を拭いていたテンガが、コクヨウに尋ねる。
【誰が好き好んで足を汚すか】
寝転がっていたコクヨウは、頭だけ持ち上げてフンと鼻を鳴らした。
「え、コクヨウはくれないの?コクヨウの可愛い肉球スタンプ欲しかったのに」
催促するものではないが、こんな機会はないから召喚獣皆のお祝いカードが欲しい。
残念そうに呟くと、コクヨウはむくりと起き上がった。
【……特別だぞ】
そう言って机の上にひょいっと上がったコクヨウは、絵の具のパレットにタンッ、真っ白なカードにタンッ、とリズミカルに足を載せる。
無造作に押したわりに、カードにはくっきり綺麗な足跡がついた。
「やっぱりコクヨウの肉球絶妙に可愛い!ありがとう、コクヨウ」
コクヨウを抱き上げ、足を拭きながら微笑む。
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