君は僕だけの

アラレ

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15時5分

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「じゃあ、5時過ぎには帰るから

帰ったらパスタ作ろうね」




「うん!行ってらっしゃい!」








結希に見送られるようになって少し経つけど、

今だに照れくさいし、にやけそうなのを我慢している


だってずっと好きな子に毎朝見送ってもらえるなんて、どんだけ最高だよ







「部長、これ終わったので外回り行ってそのまま昼休憩いきます」



「おお、そうか、頼むぞ!」




仕事にも前より身が入る



家で待ってる人がいるって、すばらしい






「ほぉ~、吉高はここんとこはりきってるなぁ!仕事に生きる気だな!」



「…部長全然わかってな~い、逆でしょ(ボソ)」



「ん?美咲どうした?」


「なぁんでもないで~す」









よし、今日も定時で上がれそうだ



そう思った時に限って、事件は起きる


 





「なに?!送る資料を間違えた?!
お前!それ明日使う資料じゃないのか!」


「はいいぃぃぃすみません!!」




「…部長どうしたんですか」


「吉高さん!すみません!!
僕が新商品の資料、訂正前の方のと間違えてしまって!!」



ミスをしたのは後輩の男性社員、若林


どうやら、間違えないように訂正前のデータは消去したつもりだったが、訂正後の方を消去してしまっていたそうだ



「僕、全然気づかなくて!!」





「…送っちゃったもんはもうしょうがないでしょ。部長この件は俺に任せてください。」




…はぁ、今からだったら7時すぎるな






「市内の店舗だから今からやればまだ間に合うよ。俺があっちに連絡するから若林は速攻で訂正資料とポスター作り直して。」


「ほんとにすみません!!!」






こんな時に思い知る




今だに連絡先すらしらないこと



あれから、荷物の連絡をした以外はずっと電源を切っているみたいで、渡した電話番号にも、かかってこないまま

あわよくば、なんて思って渡したけど


こんなとこで思い知るはめになるとは








「お世話になっております┈┈┈┈┈



そうですか、もう掲示して頂いているんですね

はい、今すぐそちらに伺います。」






店舗まで行って、すでに掲示し終わっていた誤ったポスターを一緒に剥がして回って


やっと訂正し終わり到着した若林も加わって今度はそれを貼って回って


誤った資料を配布してしまった店舗を直接回って新しいものを渡して



時刻は8時20分




「吉高さんっ!!今回はほんっとうに!」

「もーいいそれ何回も」


「でもっでも俺!ただでさえ仕事遅いのにこんなミスまでして…」


「こんなもんですんでよかった方だよ。
歩き回って疲れただろ、しっかり休めよ。」




「吉高さん…ありがとうございました!!」



少し涙目の若林は勢いよく頭を下げる




俺ってこんなに優しいやつだったっけ



「…じゃあな」


どっちかって言うと、面倒臭いことは見て見ぬふりしてきたけどな

今日だって、ほっといて定時で普通に帰ることだってできた






なんだかんだで俺も、この仕事に誇りを持ってるんだよな





「…変わったなぁ俺も」


着信はゼロ件

もしかしたら心配して電話してくれるかもって思ってたからちょっと残念だけど



まぁ事件も解決したところだし




早く帰ろう


俺の、全ての、きっかけをくれた君のところに

 




まぁでも後で考えたら、


こんなのこの後起こるもっと大きな事件の前触れにすぎなかった





















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