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欲張りなカラスとユニークなデグー
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「ただいま~」
ある日、学校から帰った琴を祖母がニコニコしながら出迎えた。
「おかえりなさい。あのね、琴ちゃんに話しがあるのよ。」
「ばぁば、何だか嬉しそう。何かあったの?」
「話しはリビングでするから早くいらっしゃい。琴ちゃんの好きなチョコレートケーキもあるわよ。」
「チョコレートケーキ!やった!」
急いで靴を脱ぎ、リビングに行くと祖父母がソワソワしながら琴を待っていた。
「2人共、何だかいつもと違うよ。どうしたの?」
「琴ちゃん、まずはランドセルを置いて手洗いとうがいよ。」
「は~い。」
琴は首を傾げながら、急いでランドセルを置き手洗いうがいを済ませた。
再びリビングに行くと、祖母がテーブルにチョコレートケーキを置いているところだった。
「いただきます。」
琴がチョコレートケーキを頬張っていると、祖母がニコニコしながら話し掛けてきた。
「琴ちゃん、食べながらで良いから聞いてね。ずっと前にペットを飼いたいって言ってたでしょ?」
琴は、手を止めフォークを置くと、悲しみが滲んだ瞳で祖母を見た。
「うん…あの時は、パパもママも反対したから諦めたんだ。」
琴は両親の事を思い出していた。
(あの時…琴には、まだお世話は無理だからダメって言われたっけ…思わず、パパもママも大嫌い!って言っちゃったんだよね。そんなこと言わなければ良かったな…)
琴は過去の言動に胸を痛め俯いた。
「そうだったわね…それでね、そろそろ琴ちゃんもペットのお世話ができるだろうから、何か飼おうかってじぃじと話してたの。」
「え!本当?」
琴は顔を上げ祖父母を見た。
2人が笑顔で頷くと、悲しみと後悔で滲んだ瞳に光が差し、キラキラと輝いた。
「何を飼うの?犬や猫?それともウサギとかハムスター?」
琴は嬉しさから思わず立ち上がり、祖母の顔を覗き込んだ。
「琴ちゃん、落ち着いて。」
祖母がクスクス笑いながら、琴の肩をソッと押さえ座らせた。
「琴ちゃんは、何が飼いたいの?」
「えっとね~ハムスターかな…あ!でも、この前テレビで観たハリネズミも気になるんだよね。」
琴は、腕を組み真剣に考え始めた。
「今度の週末に、近くのペットショップに行ってみる?琴ちゃんが気に入った子がいたら飼いましょうよ。ね、じいじ?」
「ウンウン、そうだな。琴ちゃんが好きな子を選びなさい。」
「良かったわね、琴ちゃん。じいじが買ってくれるって。」
「おいおい、買うのはじいじなのかい?」
「じいじお願いします!」
琴は祖父にペコリと頭を下げた。
「よし!じいじに任せなさい。」
「やった~!何を飼おうかな~楽しみだな~」
嬉しそうに再びケーキを頬張る琴を、祖父母はニコニコしながら見つめるのだった。
ーーーパタンーーー
琴は自分の部屋に入ると、本棚から1冊の本を引っ張り出し机に置いた。
「琴ちゃん、何の本を読むの?」
シャイニーが覗き込むと、本の表紙には " 可愛い小動物 " と書かれてあった。
「これこれ。いつかペットを飼う時の為に買っておいた本。やっと役立つ日が来たよ。」
琴はウキウキした様子で本をめくっていった。
「琴ちゃん、良かったね。何を飼うのかな?」
シャイニーは琴に話し掛けながら、リビングでの3人のやり取りを思い出していた。
(喜ぶ琴ちゃんを見ている、おじいさんとおばあさんも嬉しそうだったな~)
「やっぱりハリネズミ可愛いな~」
琴の呟きを聞き、シャイニーが本に目線を落とすと、ハリネズミが載っているページが開かれていた。
「琴ちゃん、ハリネズミを飼いたいの?」
シャイニーは腕を組み少し考えると、パッと顔を輝かせた。
「琴ちゃんにピッタリのハリネズミを探してこよう!近くのペットショップに行くって言ってたよね。」
シャイニーは琴の部屋の窓から外に出ると、キョロキョロと辺りを見渡した。
「えっと…ペットショップはどこにあるのかな?」
すると、1羽のカラスが屋根の上で羽繕いしている姿が目に入った。
「あ!あのカラスさんに聞いてみよう。」
シャイニーは羽繕いに夢中になっているカラスの側に行き話し掛けた。
「カラスさん、こんにちは。」
カラスは広げた翼の隙間から顔を覗かせ、シャイニーをジッと見ながら答えた。
「おや?君は天使だね。何か用かい?」
「この辺りにペットショップがあると思うんだけど、どこにあるか知ってる?」
カラスは少し考えると、再び羽繕いしながら答えた。
「あぁ、あのペットショップか…知ってるよ。」
「え!本当?どこにあるの?」
カラスはシャイニーをチラリと見ると興味がなさそうに横を向いた。
「君に教えて、僕は何か得があるのかい?」
「え!得?」
「そう得。何か良い事があるのかい?」
「う~ん…得か~」
シャイニーは、腕を組みながら考えていたが、自分の羽を抜くとカラスに渡した。
「得かどうか分からないけど…この羽を光にかざしてみてくれる?」
カラスがシャイニーの羽を嘴に咥え、光にかざすとキラキラと虹色に輝いた。
「いや~ほれは、また随分ほ綺麗な羽らな~」
カラスは羽を咥えながらウットリとしている。
「カラスさん、これで大丈夫?」
「ほの羽、もうI枚くれるはい?」
カラスは、羽を落とさないようにシッカリと咥えたまま頼んだ。
シャイニーはもうI枚羽を抜き渡すと、カラスはその羽も咥え2枚になった羽をかざし、満足そうに頷いた。
そして、一旦屋根の上に置きシャイニーを見た。
「この虹色に輝くのが何とも言えないね~よし、ペットショップの場所を教えてやろう!」
「本当?カラスさん、ありがとう。」
「特別に連れて行ってやるよ。」
カラスは再び羽を咥え飛び立つと、シャイニーも後を追い飛び立った。
ペットショップは。琴の家の近くにあるホームセンターに隣接されており、すぐに見えてきた。
「天使は~ん、あれがほうだよ~」
カラスが羽を落とさないように気を付けながら、シャイニーに教えると、ペットショップの前に降り立った。
「ほほがペットショップらよ。」
「カラスさん、案内してくれてありがとう。ところで、その羽はどうするの?」
カラスは、羽を置くと誇らしげに胸を張った。
「家宝にするのさ。こんな綺麗な羽は見た事がないからね。」
「僕の羽を気に入ってくれたみたいだね。」
シャイニーは、誇らしげに胸を張るカラスの様子がおかしくて、クスクス笑いながら言った。
「うん、気に入った。この羽、大切にするよ。ありがとな。」
カラスは、羽を大切そうに咥えると飛び立っていった。
シャイニーは手を振りながらカラスを見送ると、ペットショップの中に入っていった。
「さてと、ハリネズミはどこかな…あ!いた!」
ハリネズミは、何匹もいて1匹ずつガラスケースに入れられていた。
「まだ赤ちゃんなんだ。小さくて可愛いな~でも、みんな寝てる…」
シャイニーは横一列に並んでいるガラスケースを1つ1つ覗きながら話し掛けた。
「ハリネズミさん、寝ているところごめんね。お願いがあるんだけど…」
しかし、ハリネズミ達は全く起きる気配がない。
「ダメだ…起きないや。」
シャイニーが肩を落としていると、右上の棚から良く通る高い声が聞こえてきた。
「天使さん、どうしたの?」
声が聞こえる方に顔を向けると、1匹のデグーがケージに前足を掛け、シャイニーを見ていた。
「こんにちは。僕はシャイニー。君はえ~と…」
「僕はデグーだよ。名前はまだないんだ。天使さん、もしかして困ってる?」
「シャイニーで良いよ。実は、ある女の子がペットを飼う事になったんだ。僕は、その子にピッタリな子を探しに来たんだ。」
「ふ~ん…その子は、どんな女の子なの?」
シャイニーは、琴についてデグーに詳しく説明した。
「琴ちゃんは、だいぶ元気になったけど、やっぱり凄く寂しいと思うんだ…そんな琴ちゃんが癒されて元気になれるような子を探しに来たんだよ。」
シャイニーの話しをジッと聞いていてデグーは、顔を上げ真剣な顔で言った。
「シャイニー、僕が琴ちゃんの所に行くよ。」
「え?君が?」
「うん。」
「え~と…気持ちは凄く嬉しいし、有難いけど…実は、琴ちゃんはハリネズミが飼いたいみたいなんだ。」
「そっか…ハリネズミか。ハリネズミは人気あるよね。僕は、ずっとここにいるんだ。子供の時に来たけど…誰も僕を見てくれない。見てくれたと思ったら、な~んだネズミか…そう言われるんだ。ネズミじゃないのに…」
「そうなんだ…君は、ずっと買ってくれる人を待っているんだね。」
「うん。ずっと待ってる。そうこうするうちに、僕はもうすぐ大人になるから買ってくれるかどうか…シャイニー、僕に付いた値段見てよ。売れないからって安くなってるんだよ。」
デグーが指差した値札には、19,600円と書かれた上に赤で大きく9,800円と訂正されていた。
「酷いと思わない?半額だよ半額!」
デグーは、プリプリ怒りながら腕を組んだ。
シャイニーは、そんなデグーが気の毒になってきた。
「安くなってから、誰か君を買おうとはしなかったの?」
「それが、誰もいないんだ…僕は、やっぱりネズミに見えるんだ…」
さっきまでプリプリ怒っていたデグーは、ガックリと肩を落とし、近くあった牧草を手に取り食べ始めた。
「デグーくん、君は琴ちゃんを癒してあげられる?」
デグーは手にしていた牧草を放り投げると、再びケージに前足を掛け力強く頷いた。
「うん!僕は、こう見えて人が大好きなんだ。触ってもらうのも好きだし、遊ぶ事も大好き!それに、小鳥にみたいにも鳴くよ。鳴き声で、感情を伝える事ができるんだ。琴ちゃんが元気になること間違いなしだよ!」
デグーは目を輝かせ、ここぞとばかりにアピールをした。
「うん、分かった。今度、ここに琴ちゃんが来るんだ。ハリネズミを見ると思うから、琴ちゃんが君に気付くようにしてみるよ。君もアピールしてみてね。」
「うん!僕頑張る!シャイニー、協力頼んだよ。」
「分かった。それじゃ、僕はそろそろ帰るよ。デグーくん、またね。」
「またね!シャイニー、待ってるよ~」
デグーは、シャイニーの姿が見えなくなるまで、小さな手を一生懸命振っていた。
シャイニーは、ペットショップを後にすると空に舞い上がった。
「琴ちゃんがデグーくんを気に入ると良いけど…フルルはどう思う?」
フルルは、髪の中でモゾモゾと動くだけだった。
「フルル、寝てる…」
(琴ちゃん、デグーくんを気に入るよね。〕
シャイニーは、デグーを可愛がる琴の姿を思い浮かべながら大空を羽ばたくのだった。
ある日、学校から帰った琴を祖母がニコニコしながら出迎えた。
「おかえりなさい。あのね、琴ちゃんに話しがあるのよ。」
「ばぁば、何だか嬉しそう。何かあったの?」
「話しはリビングでするから早くいらっしゃい。琴ちゃんの好きなチョコレートケーキもあるわよ。」
「チョコレートケーキ!やった!」
急いで靴を脱ぎ、リビングに行くと祖父母がソワソワしながら琴を待っていた。
「2人共、何だかいつもと違うよ。どうしたの?」
「琴ちゃん、まずはランドセルを置いて手洗いとうがいよ。」
「は~い。」
琴は首を傾げながら、急いでランドセルを置き手洗いうがいを済ませた。
再びリビングに行くと、祖母がテーブルにチョコレートケーキを置いているところだった。
「いただきます。」
琴がチョコレートケーキを頬張っていると、祖母がニコニコしながら話し掛けてきた。
「琴ちゃん、食べながらで良いから聞いてね。ずっと前にペットを飼いたいって言ってたでしょ?」
琴は、手を止めフォークを置くと、悲しみが滲んだ瞳で祖母を見た。
「うん…あの時は、パパもママも反対したから諦めたんだ。」
琴は両親の事を思い出していた。
(あの時…琴には、まだお世話は無理だからダメって言われたっけ…思わず、パパもママも大嫌い!って言っちゃったんだよね。そんなこと言わなければ良かったな…)
琴は過去の言動に胸を痛め俯いた。
「そうだったわね…それでね、そろそろ琴ちゃんもペットのお世話ができるだろうから、何か飼おうかってじぃじと話してたの。」
「え!本当?」
琴は顔を上げ祖父母を見た。
2人が笑顔で頷くと、悲しみと後悔で滲んだ瞳に光が差し、キラキラと輝いた。
「何を飼うの?犬や猫?それともウサギとかハムスター?」
琴は嬉しさから思わず立ち上がり、祖母の顔を覗き込んだ。
「琴ちゃん、落ち着いて。」
祖母がクスクス笑いながら、琴の肩をソッと押さえ座らせた。
「琴ちゃんは、何が飼いたいの?」
「えっとね~ハムスターかな…あ!でも、この前テレビで観たハリネズミも気になるんだよね。」
琴は、腕を組み真剣に考え始めた。
「今度の週末に、近くのペットショップに行ってみる?琴ちゃんが気に入った子がいたら飼いましょうよ。ね、じいじ?」
「ウンウン、そうだな。琴ちゃんが好きな子を選びなさい。」
「良かったわね、琴ちゃん。じいじが買ってくれるって。」
「おいおい、買うのはじいじなのかい?」
「じいじお願いします!」
琴は祖父にペコリと頭を下げた。
「よし!じいじに任せなさい。」
「やった~!何を飼おうかな~楽しみだな~」
嬉しそうに再びケーキを頬張る琴を、祖父母はニコニコしながら見つめるのだった。
ーーーパタンーーー
琴は自分の部屋に入ると、本棚から1冊の本を引っ張り出し机に置いた。
「琴ちゃん、何の本を読むの?」
シャイニーが覗き込むと、本の表紙には " 可愛い小動物 " と書かれてあった。
「これこれ。いつかペットを飼う時の為に買っておいた本。やっと役立つ日が来たよ。」
琴はウキウキした様子で本をめくっていった。
「琴ちゃん、良かったね。何を飼うのかな?」
シャイニーは琴に話し掛けながら、リビングでの3人のやり取りを思い出していた。
(喜ぶ琴ちゃんを見ている、おじいさんとおばあさんも嬉しそうだったな~)
「やっぱりハリネズミ可愛いな~」
琴の呟きを聞き、シャイニーが本に目線を落とすと、ハリネズミが載っているページが開かれていた。
「琴ちゃん、ハリネズミを飼いたいの?」
シャイニーは腕を組み少し考えると、パッと顔を輝かせた。
「琴ちゃんにピッタリのハリネズミを探してこよう!近くのペットショップに行くって言ってたよね。」
シャイニーは琴の部屋の窓から外に出ると、キョロキョロと辺りを見渡した。
「えっと…ペットショップはどこにあるのかな?」
すると、1羽のカラスが屋根の上で羽繕いしている姿が目に入った。
「あ!あのカラスさんに聞いてみよう。」
シャイニーは羽繕いに夢中になっているカラスの側に行き話し掛けた。
「カラスさん、こんにちは。」
カラスは広げた翼の隙間から顔を覗かせ、シャイニーをジッと見ながら答えた。
「おや?君は天使だね。何か用かい?」
「この辺りにペットショップがあると思うんだけど、どこにあるか知ってる?」
カラスは少し考えると、再び羽繕いしながら答えた。
「あぁ、あのペットショップか…知ってるよ。」
「え!本当?どこにあるの?」
カラスはシャイニーをチラリと見ると興味がなさそうに横を向いた。
「君に教えて、僕は何か得があるのかい?」
「え!得?」
「そう得。何か良い事があるのかい?」
「う~ん…得か~」
シャイニーは、腕を組みながら考えていたが、自分の羽を抜くとカラスに渡した。
「得かどうか分からないけど…この羽を光にかざしてみてくれる?」
カラスがシャイニーの羽を嘴に咥え、光にかざすとキラキラと虹色に輝いた。
「いや~ほれは、また随分ほ綺麗な羽らな~」
カラスは羽を咥えながらウットリとしている。
「カラスさん、これで大丈夫?」
「ほの羽、もうI枚くれるはい?」
カラスは、羽を落とさないようにシッカリと咥えたまま頼んだ。
シャイニーはもうI枚羽を抜き渡すと、カラスはその羽も咥え2枚になった羽をかざし、満足そうに頷いた。
そして、一旦屋根の上に置きシャイニーを見た。
「この虹色に輝くのが何とも言えないね~よし、ペットショップの場所を教えてやろう!」
「本当?カラスさん、ありがとう。」
「特別に連れて行ってやるよ。」
カラスは再び羽を咥え飛び立つと、シャイニーも後を追い飛び立った。
ペットショップは。琴の家の近くにあるホームセンターに隣接されており、すぐに見えてきた。
「天使は~ん、あれがほうだよ~」
カラスが羽を落とさないように気を付けながら、シャイニーに教えると、ペットショップの前に降り立った。
「ほほがペットショップらよ。」
「カラスさん、案内してくれてありがとう。ところで、その羽はどうするの?」
カラスは、羽を置くと誇らしげに胸を張った。
「家宝にするのさ。こんな綺麗な羽は見た事がないからね。」
「僕の羽を気に入ってくれたみたいだね。」
シャイニーは、誇らしげに胸を張るカラスの様子がおかしくて、クスクス笑いながら言った。
「うん、気に入った。この羽、大切にするよ。ありがとな。」
カラスは、羽を大切そうに咥えると飛び立っていった。
シャイニーは手を振りながらカラスを見送ると、ペットショップの中に入っていった。
「さてと、ハリネズミはどこかな…あ!いた!」
ハリネズミは、何匹もいて1匹ずつガラスケースに入れられていた。
「まだ赤ちゃんなんだ。小さくて可愛いな~でも、みんな寝てる…」
シャイニーは横一列に並んでいるガラスケースを1つ1つ覗きながら話し掛けた。
「ハリネズミさん、寝ているところごめんね。お願いがあるんだけど…」
しかし、ハリネズミ達は全く起きる気配がない。
「ダメだ…起きないや。」
シャイニーが肩を落としていると、右上の棚から良く通る高い声が聞こえてきた。
「天使さん、どうしたの?」
声が聞こえる方に顔を向けると、1匹のデグーがケージに前足を掛け、シャイニーを見ていた。
「こんにちは。僕はシャイニー。君はえ~と…」
「僕はデグーだよ。名前はまだないんだ。天使さん、もしかして困ってる?」
「シャイニーで良いよ。実は、ある女の子がペットを飼う事になったんだ。僕は、その子にピッタリな子を探しに来たんだ。」
「ふ~ん…その子は、どんな女の子なの?」
シャイニーは、琴についてデグーに詳しく説明した。
「琴ちゃんは、だいぶ元気になったけど、やっぱり凄く寂しいと思うんだ…そんな琴ちゃんが癒されて元気になれるような子を探しに来たんだよ。」
シャイニーの話しをジッと聞いていてデグーは、顔を上げ真剣な顔で言った。
「シャイニー、僕が琴ちゃんの所に行くよ。」
「え?君が?」
「うん。」
「え~と…気持ちは凄く嬉しいし、有難いけど…実は、琴ちゃんはハリネズミが飼いたいみたいなんだ。」
「そっか…ハリネズミか。ハリネズミは人気あるよね。僕は、ずっとここにいるんだ。子供の時に来たけど…誰も僕を見てくれない。見てくれたと思ったら、な~んだネズミか…そう言われるんだ。ネズミじゃないのに…」
「そうなんだ…君は、ずっと買ってくれる人を待っているんだね。」
「うん。ずっと待ってる。そうこうするうちに、僕はもうすぐ大人になるから買ってくれるかどうか…シャイニー、僕に付いた値段見てよ。売れないからって安くなってるんだよ。」
デグーが指差した値札には、19,600円と書かれた上に赤で大きく9,800円と訂正されていた。
「酷いと思わない?半額だよ半額!」
デグーは、プリプリ怒りながら腕を組んだ。
シャイニーは、そんなデグーが気の毒になってきた。
「安くなってから、誰か君を買おうとはしなかったの?」
「それが、誰もいないんだ…僕は、やっぱりネズミに見えるんだ…」
さっきまでプリプリ怒っていたデグーは、ガックリと肩を落とし、近くあった牧草を手に取り食べ始めた。
「デグーくん、君は琴ちゃんを癒してあげられる?」
デグーは手にしていた牧草を放り投げると、再びケージに前足を掛け力強く頷いた。
「うん!僕は、こう見えて人が大好きなんだ。触ってもらうのも好きだし、遊ぶ事も大好き!それに、小鳥にみたいにも鳴くよ。鳴き声で、感情を伝える事ができるんだ。琴ちゃんが元気になること間違いなしだよ!」
デグーは目を輝かせ、ここぞとばかりにアピールをした。
「うん、分かった。今度、ここに琴ちゃんが来るんだ。ハリネズミを見ると思うから、琴ちゃんが君に気付くようにしてみるよ。君もアピールしてみてね。」
「うん!僕頑張る!シャイニー、協力頼んだよ。」
「分かった。それじゃ、僕はそろそろ帰るよ。デグーくん、またね。」
「またね!シャイニー、待ってるよ~」
デグーは、シャイニーの姿が見えなくなるまで、小さな手を一生懸命振っていた。
シャイニーは、ペットショップを後にすると空に舞い上がった。
「琴ちゃんがデグーくんを気に入ると良いけど…フルルはどう思う?」
フルルは、髪の中でモゾモゾと動くだけだった。
「フルル、寝てる…」
(琴ちゃん、デグーくんを気に入るよね。〕
シャイニーは、デグーを可愛がる琴の姿を思い浮かべながら大空を羽ばたくのだった。
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