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調理係ファンク
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ーー5日後ーー
私は、ラフィとブランカと共に植樹をした草原にきている。
セレンツリーは、植樹から5日もすれば成長する。
そろそろ、程よい頃合いだと思いやってきた。
「凄い…セレンツリーの林になってる。見事だわ…」
思わずブランカが声を上げた。
「いや…本当に、これは圧巻だね。分かってはいたけど…目の当たりにするとね…」
「ああ…ラフィ。これはなかなか感慨深い」
私達は、見事なセレンツリーの林に感動すら覚えていた。
「ねぇ、これならいつでもツリーハウスを建設できるわよね」
「ああ、そうだな…その前に、食堂と学びの場の設置をしないといけないのではないか?」
「うん。サビィ、僕もそう思うよ。まずは食堂かな~。それなら、調理係をお願いしたファンクに来てもらった方が良いね」
「そうよね…ラフィ、ファンクに連絡してもらえる?」
ラフィは頷くと、左手の人差し指にはめている指輪に話しかけた。
「ああ、ファンクかい?突然で悪いんだけど、今から食堂を設置しようと思うんだ」
「ラフィ様!私はこの日を待っていました!今すぐ伺います!」
指輪からファンクの嬉々とした声が響いてきた。
「うん。待ってるね」
ラフィが会話を終えてすぐ、頭上から声が聞こえてきた。
「ラフィ様~」
見上げると、ファンクが籐の大きなバスケットを抱
えて舞い降りてきた。
「ラフィ様~お待たせしました~」
「ファンク、突然呼び出して悪かったね」
「いいえ、ラフィ様。私はいつ声が掛かるかと待ってました。もう、嬉しくて嬉しくて…」
ファンクは、でっぷりと太った恰幅のいい天使だ。
喜びからニコニコしている彼の頬は、丸く盛り上がり赤々としている。
「それで、皆さんに召し上がって頂こうと私が焼いたパンをお持ちしました」
ファンクは、たくさんのパンが入っているバスケットを私達に見せた。
「凄く美味しそう!一つ頂いていい?」
「ブランカ様、一つと言わずお幾つでもどうぞ」
「ありがとう」
ブランカはパンを取ると口に運んだ。
「うん!美味しい。中のクリームはベリーかしら?」
「ブランカ様!さすがです。このクリームにはスカッシュベリーを使っています」
スカッシュベリーは、とても甘くみずみずしい。しかし、その水分の多さからパンや焼き菓子には不向きだも言われている。
「サビィ様、ラフィ様も召し上がってみて下さい。私の自信作です」
私達は頷き、スカッシュベリーのクリームパンを口にする。
「これは…素晴らしい…」
スカッシュベリーの甘さや、みずみずしさをしっかりと感じるクリームに驚いた。
「ファンク、凄く美味しいよ。スカッシュベリーをそのまま感じるね」
ラフィも目を丸くしている。
ファンクは、そんな私達を見て嬉しそうに頷いた。
「喜んで頂けて嬉しいです。試行錯誤して、ようやく作り上げました。子供達にもこのパンを食べてもらいたいです」
「うん。本当に美味しい。やっぱり調理係をファンクにお願いして良かったよ」
「ええ、子供達もあなたの料理を気に入るはずよ」
絶賛するラフィとブランカ。
そんな2人に、私は声を掛ける。
「盛り上がっているところ悪いが…そろそろ食堂を設置するとしようと思うのだが…」
「そうね。そろそろ始めましょう。」
ラフィは頷くとファンクに目を向けた。
「ファンク、君はどんな食堂にしたい?君が思う存分、腕を振るえる食堂が良いと思うんだ」
ラフィの言葉にファンクは腕を組みしばし考える。
「私は、特に希望はありません。料理を作れれば良いので…ただ、厨房や調理器具に関しては私に任せてくれませんか。それ以外は皆様にお任せします」
「なるほど…ファンク、良く分かった。それでは、まずは私達で食堂を設置していく事にしよう。ラフィ、ブランカ、建物から考えよう」
「そうね…どんな建物にする?ツリーハウスに合わせて木目調にするのも素敵よね…」
「うん。木目調良いと思う。サビィはどう思う?」
「ああ。ツリーハウスと統一感もあり良いと思う」
「それなら決定ね。では、始めましょう!まずは材木からね。セレンツリーに分けてもらいましょう」
ブランカは翼を羽ばたかせ舞い上がると、枝葉を広げる1本のセレンツリーに話しかける。
「セレンツリー、食堂を建設の為にあなたの葉を頂いても良いかしら?」
セレンツリーは、ブランカの問い掛けに答えるように、枝をザワザワと揺らした。
すると、たくさんの葉が風に舞いヒラヒラと落ちていく。
「セレンツリー、ありがとう」
ブランカはニッコリと笑い、セレンツリーを抱き締めた。
「これだけあれば、材木には困らないな…」
「うん。サビィ、ではこの葉を材木に変化させよう。ブランカ、始めるよ!」
ラフィの呼び掛けにブランカが戻り、私達はたくさんの葉を材木に変えていく。
葉を1枚ずつ丁寧に並べ、手をかざし光を送る。
すると、葉は材木へと変化する。
3人で手分けして、沢山の材木を用意した。
「ひぇ~あっという間にこれだけの材木を用意するとは…皆さんのパワーは素晴らしいですね。私には、こんな事とてもできません」
ファンクは目を丸くして、感心しながら材木を眺めている。
「ファンク、これくらいで驚くのはまだ早いよ」
ラフィがイタズラっぽい笑顔でウィンクをする。
「では、いよいよ食堂を建設するとしよう」
私が声を掛けると、ラフィとブランカが頷く。
3人で手をかざすと、材木は宙に浮き上がった。
「それじゃ、一気に造るわよ~」
ブランカの言葉を合図に、材木はどんどん積み上がる。
私達は息を合わせて組み上げながら、強度確認もしていく。
「うん。とりあえずは、こんな感じかな…次は窓と入り口の扉の取り付けだね」
「ラフィ、窓は私が取り付けよう。まずは、ガラスを作るか…」
私は、材木作りで余ったセレンツリーの葉を数枚手に取ると息を吹き掛けた。
すると、葉は大きな1枚のガラス板となった。
それを窓に合わせると、ガラスは自ずとカットされ窓枠にはまる。
その作業を繰り返し、窓の取り付けは終了した。
「凄いわ~さすがサビィね。でも、私も負けていられないわ!扉は私が取り付けるわね」
張り切るブランカが可愛らしく、思わず笑みが溢れる。
「あはは。ブランカ、あんなに張り切って可愛いね~」
ブランカを優しい目で見つめるラフィ…
その目は慈しみが溢れている。
やはり…君もブランカを…
私は胸に痛みを感じた。
しかし、私の思いは少し変化をしていた。
ブランカを愛おしいと思っている。
この事には何ら変わりはない。
だが…ラフィも大切な友人だ…
複雑な思いに私はソッと溜め息をつく。
そんな時、ブランカの声が響いた。
「ねぇ見て!扉を取り付けたわ。我ながら良くできたと思うの」
私は自分の思いに蓋をすると、ラフィと共にブランカの元に向かった。
私は、ラフィとブランカと共に植樹をした草原にきている。
セレンツリーは、植樹から5日もすれば成長する。
そろそろ、程よい頃合いだと思いやってきた。
「凄い…セレンツリーの林になってる。見事だわ…」
思わずブランカが声を上げた。
「いや…本当に、これは圧巻だね。分かってはいたけど…目の当たりにするとね…」
「ああ…ラフィ。これはなかなか感慨深い」
私達は、見事なセレンツリーの林に感動すら覚えていた。
「ねぇ、これならいつでもツリーハウスを建設できるわよね」
「ああ、そうだな…その前に、食堂と学びの場の設置をしないといけないのではないか?」
「うん。サビィ、僕もそう思うよ。まずは食堂かな~。それなら、調理係をお願いしたファンクに来てもらった方が良いね」
「そうよね…ラフィ、ファンクに連絡してもらえる?」
ラフィは頷くと、左手の人差し指にはめている指輪に話しかけた。
「ああ、ファンクかい?突然で悪いんだけど、今から食堂を設置しようと思うんだ」
「ラフィ様!私はこの日を待っていました!今すぐ伺います!」
指輪からファンクの嬉々とした声が響いてきた。
「うん。待ってるね」
ラフィが会話を終えてすぐ、頭上から声が聞こえてきた。
「ラフィ様~」
見上げると、ファンクが籐の大きなバスケットを抱
えて舞い降りてきた。
「ラフィ様~お待たせしました~」
「ファンク、突然呼び出して悪かったね」
「いいえ、ラフィ様。私はいつ声が掛かるかと待ってました。もう、嬉しくて嬉しくて…」
ファンクは、でっぷりと太った恰幅のいい天使だ。
喜びからニコニコしている彼の頬は、丸く盛り上がり赤々としている。
「それで、皆さんに召し上がって頂こうと私が焼いたパンをお持ちしました」
ファンクは、たくさんのパンが入っているバスケットを私達に見せた。
「凄く美味しそう!一つ頂いていい?」
「ブランカ様、一つと言わずお幾つでもどうぞ」
「ありがとう」
ブランカはパンを取ると口に運んだ。
「うん!美味しい。中のクリームはベリーかしら?」
「ブランカ様!さすがです。このクリームにはスカッシュベリーを使っています」
スカッシュベリーは、とても甘くみずみずしい。しかし、その水分の多さからパンや焼き菓子には不向きだも言われている。
「サビィ様、ラフィ様も召し上がってみて下さい。私の自信作です」
私達は頷き、スカッシュベリーのクリームパンを口にする。
「これは…素晴らしい…」
スカッシュベリーの甘さや、みずみずしさをしっかりと感じるクリームに驚いた。
「ファンク、凄く美味しいよ。スカッシュベリーをそのまま感じるね」
ラフィも目を丸くしている。
ファンクは、そんな私達を見て嬉しそうに頷いた。
「喜んで頂けて嬉しいです。試行錯誤して、ようやく作り上げました。子供達にもこのパンを食べてもらいたいです」
「うん。本当に美味しい。やっぱり調理係をファンクにお願いして良かったよ」
「ええ、子供達もあなたの料理を気に入るはずよ」
絶賛するラフィとブランカ。
そんな2人に、私は声を掛ける。
「盛り上がっているところ悪いが…そろそろ食堂を設置するとしようと思うのだが…」
「そうね。そろそろ始めましょう。」
ラフィは頷くとファンクに目を向けた。
「ファンク、君はどんな食堂にしたい?君が思う存分、腕を振るえる食堂が良いと思うんだ」
ラフィの言葉にファンクは腕を組みしばし考える。
「私は、特に希望はありません。料理を作れれば良いので…ただ、厨房や調理器具に関しては私に任せてくれませんか。それ以外は皆様にお任せします」
「なるほど…ファンク、良く分かった。それでは、まずは私達で食堂を設置していく事にしよう。ラフィ、ブランカ、建物から考えよう」
「そうね…どんな建物にする?ツリーハウスに合わせて木目調にするのも素敵よね…」
「うん。木目調良いと思う。サビィはどう思う?」
「ああ。ツリーハウスと統一感もあり良いと思う」
「それなら決定ね。では、始めましょう!まずは材木からね。セレンツリーに分けてもらいましょう」
ブランカは翼を羽ばたかせ舞い上がると、枝葉を広げる1本のセレンツリーに話しかける。
「セレンツリー、食堂を建設の為にあなたの葉を頂いても良いかしら?」
セレンツリーは、ブランカの問い掛けに答えるように、枝をザワザワと揺らした。
すると、たくさんの葉が風に舞いヒラヒラと落ちていく。
「セレンツリー、ありがとう」
ブランカはニッコリと笑い、セレンツリーを抱き締めた。
「これだけあれば、材木には困らないな…」
「うん。サビィ、ではこの葉を材木に変化させよう。ブランカ、始めるよ!」
ラフィの呼び掛けにブランカが戻り、私達はたくさんの葉を材木に変えていく。
葉を1枚ずつ丁寧に並べ、手をかざし光を送る。
すると、葉は材木へと変化する。
3人で手分けして、沢山の材木を用意した。
「ひぇ~あっという間にこれだけの材木を用意するとは…皆さんのパワーは素晴らしいですね。私には、こんな事とてもできません」
ファンクは目を丸くして、感心しながら材木を眺めている。
「ファンク、これくらいで驚くのはまだ早いよ」
ラフィがイタズラっぽい笑顔でウィンクをする。
「では、いよいよ食堂を建設するとしよう」
私が声を掛けると、ラフィとブランカが頷く。
3人で手をかざすと、材木は宙に浮き上がった。
「それじゃ、一気に造るわよ~」
ブランカの言葉を合図に、材木はどんどん積み上がる。
私達は息を合わせて組み上げながら、強度確認もしていく。
「うん。とりあえずは、こんな感じかな…次は窓と入り口の扉の取り付けだね」
「ラフィ、窓は私が取り付けよう。まずは、ガラスを作るか…」
私は、材木作りで余ったセレンツリーの葉を数枚手に取ると息を吹き掛けた。
すると、葉は大きな1枚のガラス板となった。
それを窓に合わせると、ガラスは自ずとカットされ窓枠にはまる。
その作業を繰り返し、窓の取り付けは終了した。
「凄いわ~さすがサビィね。でも、私も負けていられないわ!扉は私が取り付けるわね」
張り切るブランカが可愛らしく、思わず笑みが溢れる。
「あはは。ブランカ、あんなに張り切って可愛いね~」
ブランカを優しい目で見つめるラフィ…
その目は慈しみが溢れている。
やはり…君もブランカを…
私は胸に痛みを感じた。
しかし、私の思いは少し変化をしていた。
ブランカを愛おしいと思っている。
この事には何ら変わりはない。
だが…ラフィも大切な友人だ…
複雑な思いに私はソッと溜め息をつく。
そんな時、ブランカの声が響いた。
「ねぇ見て!扉を取り付けたわ。我ながら良くできたと思うの」
私は自分の思いに蓋をすると、ラフィと共にブランカの元に向かった。
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