幸せの翼

悠月かな(ゆづきかな)

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ツリーハウス

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ーー1週間後ーー

今日は、子供達と一緒にツリーハウスを建築する日だ。
私達はセレンツリーの林で、子供達がやって来るのを待っていた。

「いよいよ、ツリーハウスを造る日が来たわね」

ブランカは嬉しそうにニコニコしている。

「きっと、子供達は楽しんでくれるだろう」
「うん。ツリーハウスを造るなんて、今までない試みだからね。きっと、喜んでくれるはずだよ」

私達は、期待と不安に胸が高鳴っている。

すると、遠くから賑やかな声が聞こえてきた。
その声が徐々に大きくなり、やがて子供達の姿が見えて来る。
子供達の前にエイミーの姿が見える。

「やぁ!エイミー」

ラフィがエイミーに歩み寄る。

「ラフィ、お待たせ。子供達を連れて来たわ。私もツリーハウスを造る手伝いをしても良い?」
「勿論だよ。人手は多い方が助かる。サビィ、ブランカ、エイミーも手伝ってくれるって」

ラフィが嬉しそうな笑顔で、ブランカと私を振り返る。

「そう。それは助かるわ」
「エイミー、助かる。ありがとう」

ブランカは笑顔だったが、表情が曇っている。
私は心配になり小声で尋ねた。

「大丈夫か?」
「大丈夫よ。心配してくれてありがとう。子供達の為にも頑張らなきゃね」

私は頷くと、エイミーと談笑しているラフィに声を掛ける。

「ラフィ。子供達が待っている。そろそろ始めよう」
「そうだね。それじゃ、始めようか」

エイミーが、子供達を集めて皆に話し掛ける。

「それじゃ、今からお待ちかねのツリーハウス作りよ。みんな、説明を良く聞いて頑張って造ってね」
「は~い!」

子供達は、目を輝かせながら返事をした。

ブランカは、そんな子供達を笑顔で見ていたが、フワリと舞い上がると、セレンツリーに話しかける。

「セレンツリー、今日はツリーハウスを造るの。子供達の為に、またあなたの葉を頂いても良い?」

セレンツリーが枝をザワザワと揺らすと、たくさんの葉が舞い落ちた。

「セレンツリー、ありがとう」

ブランカはニッコリと笑い、セレンツリーに礼を述べた。

「わ~!葉っぱがたくさん落ちて来た!」

子供達は、嬉しそうに舞い落ちる葉に手を伸ばす。

「みんな、これがツリーハウスの材料になるのよ。見ててね」

ブランカは葉を並べ手をかざし、材木へと変えていった。

「うわ~!」
「ブランカ先生、凄い!」

子供達が感嘆の声を上げた。

「え…先生?」

ブランカは子供達から掛けられた言葉に驚き、思わず手を止めた。
すると、エイミーがクスクス笑いながら言った。

「私が子供達に言ったのよ。みんなに学びを教えてくれる天使は、サビィ先生とラフィ先生とブランカ先生だって」
「まぁ…そうだったのね」

ブランカは目を丸くしていたが、すぐさまニッコリと笑う。

「ちょっと照れるけど…嬉しいわ。私達は先生なのね」

すると、ブランカは子供達を集めて、小さな声で何か話している。

「ブランカは、一体何をしているのだ?」
「う~ん…材木に変化させるコツでも話しているのかな?」

ラフィと私が首を傾げ見ていると、ブランカが顔を上げて私達を見た。

「みんな、良い?せ~の!」
「サビィせんせ~い!ラフィせんせ~い!」

ブランカの合図で、子供達が一斉に声を上げる。

「は?先生?」
「え!ちょっと、先生なんてやめてよ」

私達は、突然先生と呼ばれ狼狽えた。
ブランカはクスクス笑いながら私達を見た。

「先生と呼ばれてどう?」
「ブランカ…驚いたではないか」
「そうだよ。先生なんて…ビックリしたよ」
「あら?2人とも先生に向いてると思うわよ。まさか、あんなに驚くとは思わなかったわ」

ブランカは、楽しそうに笑い続けている。
私はその表情を見てホッとした。
私の心配は杞憂だったようだ。

「それでは…ラフィ先生、ブランカ先生。ツリーハウスの建築を進めるとしよう」

私は、努めて冷静で真剣な表情で告げてみる。

「え…サビィ?」
「サビィ…」

ブランカもラフィもキョトンとしている。
私は、2人を見つめるとニヤリと笑った。

「え~!サビィ…今の冗談だったの?」
「え!サビィが冗談?僕は幻を見たのかな…」

呆気に取られている2人の姿に、思わず笑いが溢れた。

「クックックッ…その2人の表情…」

私は耐えられず、肩を揺らして笑う。

「いや、驚いたよ…まさか、サビィが冗談なんてさ…」
「ええ…私も驚いたわ…」

私は、息を整えて2人を見た。

「私だって、ユーモアの一欠片くらい持ち合わせている。さぁ、ツリーハウスを造ろう。子供達も待っている」

私の言葉に2人はハッとする。

「そうよね。子供達が待ってるわ。ね、ラフィ?」
「ああ…うん。そうだね。ツリーハウスに取り掛かろう」

動揺を隠せない2人の会話を耳にし、私は口元を隠しコッソリと微笑んだのだった。


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