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2人を包む甘い空気
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「サビィ、サビィ?ねぇ…大丈夫?」
ブランカの声に私は我に返った。
「あ…ああ…大丈夫だ」
慌てて手の甲で涙を拭う。
「次は私の番だな…」
水盤に伸ばした私の手を制するように、ブランカの手が重なる。
「今、休憩中なのよ。サビィのように涙が止まらなくなった子が何人かいたの。落ち着くまで休憩にしたから」
「ああ…そうか…」
私は、いささかホッとして伸ばした手を下げた。
「サビィ…かなり感情を抑え込んでいたんじゃない?」
「いや…自分では良く分からないのだ…」
「サビィ…あなたは、素晴らしい天使よ。皆、サビィは完璧だと思っているし、あなたも完璧であろうと努力も怠らない。自分にも厳しいし…気付かないうちに心が疲れてしまっているんじゃないかしら?」
「心が疲れる…?」
私は疲れている自覚はなかった。
完璧な天使を目指すならば、努力を怠らないのは当たり前だ。
「サビィ、もちろん努力は必要だよ。でも…過度な努力は良くないよ。それに、君は決して弱音を吐かないしね」
気付けばラフィが心配そうに、私の顔を覗き込んでいた。
「そうよ、サビィ。時には何もしないで、心と体を休める事も必要よ。それから、もっと私達を頼って欲しいわ」
「皆は…完璧であろうとは考えないのか?弱い自分を律する事はないのか?」
私が疑問をぶつけると、ラフィとブランカが顔を見合わせる。
「そうだな…努力は重ねるよ。でも、完璧であろうとは考えないかな…僕はこんな性格だから、自分を律する事もないな。もちろん落ち込む事はあるけど…割と立ち直るのは早い。サビィみたいに自分を追い込まないからね」
「うん…私も完璧であろうとは思わないわ。完璧でい続けるなんて無理だもの。落ち込んだり苦しい時は…思いっ切り美味しいものや甘いものを食べるわ。弱音も吐く事もあるわ」
「そうなのか…私は自分に厳し過ぎたのか…」
「サビィは完璧だし、その努力は素晴らしいよ。ただ…疲れたら休む事も大切だよ」
「サビィは自分を追い込み過ぎるのよね。もっと、
肩の力を抜いても良いのよ。気付いていないだけで、心は疲れていたのね。だから涙が流れたんだと思う。心の声をもっと聞いた方が良いわ」
心の声を聞く…私は今まで全く意識した事がなかった。
自分の胸にソッと手を当ててみる。
すると、心がじんわりと温かくなった。
「心が温かい…」
思わず私は呟いた。
すると、ブランカが笑顔で頷き私を見た。
「それは、心が喜んでいるのよ。サビィが心に意識を向けたから」
「心は喜ぶものなのか…?」
「ええ、そうよ。心に話しかけてみるのも良いわ。」
「そうか…分かった。これからは、自分の心にも意識を向けてみるようにする」
「そうね。少しずつで大丈夫よ。急に変わるのは無理でしょうし」
私が頷くとブランカはラフィを見た。
「そう言えば…ラフィ、あなたも泣いていたわよね?」
「なんだと?君も泣いていたのか?」
ブランカの言葉に驚き私はラフィを見た。
「え!泣いてなんかいないよ」
ラフィは少し焦りを見せながら答える。
「嘘、私見たのよ。ラフィが目を手で拭うのを」
「いや、あれは…ちょっと目が痒くなってさ…」
ラフィはブランカの視線から逃れるように横を向いた。
彼の頬はほんのりと赤くなって見える。
「ねぇ、ラフィ…目を逸らさずに私を見て…」
ブランカの言葉にラフィの肩が微かに跳ねた。
そして、ゆっくりとブランカと視線を合わせる。
「ラフィ…あなたも心が疲れているんじゃない?」
「疲れてる自覚はないんだけどな…」
「そうかしら?また、本音を隠してるとか…ない?」
ラフィは驚いたように目を見開き、ブランカを見つめた。
「え…?もしかして…本当に何か隠してる事があるの?」
ラフィは目を見開いたまま動かない。
「ラフィ?どうしたの?」
ブランカが心配そうに、ラフィの頬に手を伸ばす。
頬に手が触れた瞬間、ラフィはハッとしその手を取った。
突然流れる甘やかな空気。
見つめ合うラフィとブランカ…
その光景に耐えられず、思わず私は目を伏せた。
「ブランカせんせ~い!もう休憩時間終わりますよ~!」
その時、ブランカを呼ぶ声が響いた。
ラフィは慌ててブランカの手を離す。
「あ…ブランカ…ごめん…」
「え!あ…うん…平気…」
2人共、顔が赤い。
「ねぇ…先生ってば~あれ?ブランカ先生とラフィ先生…顔赤くない?」
待ちきれなくなり、駆け寄って来た子が不思議そうに首を傾げ2人を見た。
「え!そんな事ないわよ。気のせいじゃない?ね、ラフィ?」
「ああ…そうだよ。気のせいだよ。あはは…」
「フーン…何か変なの~ まぁ、いっか~ 先生、次の学びは何?」
目を輝かせ私達を見る子に私は答える。
「次は私が学びを担当する」
「サビィ先生が教えてくれるんだ!楽しみ~ 先生達、早くこっちに来て。みんな楽しみに待ってるよ」
その子は、私の手を掴みグイグイと引っ張った。
「分かった。今、行くから落ち着きなさい」
私は手を引かれながら、この場から救ってくれた事に心の中で感謝したのだった。
ブランカの声に私は我に返った。
「あ…ああ…大丈夫だ」
慌てて手の甲で涙を拭う。
「次は私の番だな…」
水盤に伸ばした私の手を制するように、ブランカの手が重なる。
「今、休憩中なのよ。サビィのように涙が止まらなくなった子が何人かいたの。落ち着くまで休憩にしたから」
「ああ…そうか…」
私は、いささかホッとして伸ばした手を下げた。
「サビィ…かなり感情を抑え込んでいたんじゃない?」
「いや…自分では良く分からないのだ…」
「サビィ…あなたは、素晴らしい天使よ。皆、サビィは完璧だと思っているし、あなたも完璧であろうと努力も怠らない。自分にも厳しいし…気付かないうちに心が疲れてしまっているんじゃないかしら?」
「心が疲れる…?」
私は疲れている自覚はなかった。
完璧な天使を目指すならば、努力を怠らないのは当たり前だ。
「サビィ、もちろん努力は必要だよ。でも…過度な努力は良くないよ。それに、君は決して弱音を吐かないしね」
気付けばラフィが心配そうに、私の顔を覗き込んでいた。
「そうよ、サビィ。時には何もしないで、心と体を休める事も必要よ。それから、もっと私達を頼って欲しいわ」
「皆は…完璧であろうとは考えないのか?弱い自分を律する事はないのか?」
私が疑問をぶつけると、ラフィとブランカが顔を見合わせる。
「そうだな…努力は重ねるよ。でも、完璧であろうとは考えないかな…僕はこんな性格だから、自分を律する事もないな。もちろん落ち込む事はあるけど…割と立ち直るのは早い。サビィみたいに自分を追い込まないからね」
「うん…私も完璧であろうとは思わないわ。完璧でい続けるなんて無理だもの。落ち込んだり苦しい時は…思いっ切り美味しいものや甘いものを食べるわ。弱音も吐く事もあるわ」
「そうなのか…私は自分に厳し過ぎたのか…」
「サビィは完璧だし、その努力は素晴らしいよ。ただ…疲れたら休む事も大切だよ」
「サビィは自分を追い込み過ぎるのよね。もっと、
肩の力を抜いても良いのよ。気付いていないだけで、心は疲れていたのね。だから涙が流れたんだと思う。心の声をもっと聞いた方が良いわ」
心の声を聞く…私は今まで全く意識した事がなかった。
自分の胸にソッと手を当ててみる。
すると、心がじんわりと温かくなった。
「心が温かい…」
思わず私は呟いた。
すると、ブランカが笑顔で頷き私を見た。
「それは、心が喜んでいるのよ。サビィが心に意識を向けたから」
「心は喜ぶものなのか…?」
「ええ、そうよ。心に話しかけてみるのも良いわ。」
「そうか…分かった。これからは、自分の心にも意識を向けてみるようにする」
「そうね。少しずつで大丈夫よ。急に変わるのは無理でしょうし」
私が頷くとブランカはラフィを見た。
「そう言えば…ラフィ、あなたも泣いていたわよね?」
「なんだと?君も泣いていたのか?」
ブランカの言葉に驚き私はラフィを見た。
「え!泣いてなんかいないよ」
ラフィは少し焦りを見せながら答える。
「嘘、私見たのよ。ラフィが目を手で拭うのを」
「いや、あれは…ちょっと目が痒くなってさ…」
ラフィはブランカの視線から逃れるように横を向いた。
彼の頬はほんのりと赤くなって見える。
「ねぇ、ラフィ…目を逸らさずに私を見て…」
ブランカの言葉にラフィの肩が微かに跳ねた。
そして、ゆっくりとブランカと視線を合わせる。
「ラフィ…あなたも心が疲れているんじゃない?」
「疲れてる自覚はないんだけどな…」
「そうかしら?また、本音を隠してるとか…ない?」
ラフィは驚いたように目を見開き、ブランカを見つめた。
「え…?もしかして…本当に何か隠してる事があるの?」
ラフィは目を見開いたまま動かない。
「ラフィ?どうしたの?」
ブランカが心配そうに、ラフィの頬に手を伸ばす。
頬に手が触れた瞬間、ラフィはハッとしその手を取った。
突然流れる甘やかな空気。
見つめ合うラフィとブランカ…
その光景に耐えられず、思わず私は目を伏せた。
「ブランカせんせ~い!もう休憩時間終わりますよ~!」
その時、ブランカを呼ぶ声が響いた。
ラフィは慌ててブランカの手を離す。
「あ…ブランカ…ごめん…」
「え!あ…うん…平気…」
2人共、顔が赤い。
「ねぇ…先生ってば~あれ?ブランカ先生とラフィ先生…顔赤くない?」
待ちきれなくなり、駆け寄って来た子が不思議そうに首を傾げ2人を見た。
「え!そんな事ないわよ。気のせいじゃない?ね、ラフィ?」
「ああ…そうだよ。気のせいだよ。あはは…」
「フーン…何か変なの~ まぁ、いっか~ 先生、次の学びは何?」
目を輝かせ私達を見る子に私は答える。
「次は私が学びを担当する」
「サビィ先生が教えてくれるんだ!楽しみ~ 先生達、早くこっちに来て。みんな楽しみに待ってるよ」
その子は、私の手を掴みグイグイと引っ張った。
「分かった。今、行くから落ち着きなさい」
私は手を引かれながら、この場から救ってくれた事に心の中で感謝したのだった。
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