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頭に響く謎の声(イルファス)
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私は、広場の噴水から愛しいあの方を見ている。
あの忌々しい水盤を使っての学びの最中だ。
私は、手に取るようにサビィ様の行動が分かる。
例え、こんなに離れていても…
それが、愛というものだと私は知っている。
「ああ…サビィ様…あなたは、私を愛していないと仰ったけど…それは、嘘という事を知っています。あなたは、ブランカから言い寄られたのですよね?お優しいあなたは、無下に断る事ができないから仕方なく一緒にいる…ザキフェル様は、あの女に騙されてるのだわ…クソッ!ブランカめ!許せない…サビィ様…待っていて下さい。あなたを、あの女から救って差し上げます」
私は固く決意し、あの方に決して届く事のない手を伸ばした。
私は部屋に入ると、後ろ手に扉を閉めた。
「やっぱり、この部屋は落ち着く…」
あの方をスケッチした絵を少しずつ描き溜め、壁一面に貼った。
私は絵を描くのが好きだし得意だ。
特に、愛しいあの方を描いている時間は至福のひと時。
「ああ…サビィ様…今日もお美しかった…」
私は紙とクレパスを取り出し一心不乱に描いた。
「子供達に教えている姿も素敵だった…」
水盤を前に、優しい笑顔で教えていらっしゃった。
凛とした佇まい、優雅で品のある物腰…
私の愛しい方は完璧だ。
「できた…」
私は、描き上がった絵を壁に貼った。
「もっともっと、あの方の絵を…」
私が再度クレパスを手にした時、頭の中から声が聞こえてきた。
(それで満足するのか?お前が求めているのは、そんな物ではないだろう?)
頭の中から声…?
いや、まさか…気のせい…
(気のせいなどではない。イルファスよ…)
「誰?なぜ私の名前を知っている?」
(お前の事なら何でも知っている…本当に欲しいものもな…)
「やめろ…やめろ!やめろ!私の頭の中で勝手に話すな!」
私は混乱して頭を抱えた。
(聞け!イルファスよ!自分の心に蓋をするな…心を解放するのだ。本当に欲しいのならば奪え!邪魔するものは消せ!)
「何を言っている…?そ…そんな事…私が望むわけない…」
(隠しても無駄だ…サビィの心が欲しいのだろう?憎いブランカを傷付けたいのだろう?)
「サビィ様…あの方は、私に優しかった…いつも周りから疎まれてる私に声を掛けてくれた…私は、あの時恋に落ちた。そして、あの方も私に好意を持って声をかけてくれた…」
(そうだ。イルファス…サビィはお前を愛しているのだ)
「本当に?」
真っ暗な闇に閉じ込められた私の心に火が灯る。
希望の火だ。
(ああ…本当だ)
やっぱりそうなのだ。
サビィ様は私を愛している。
愛していないと言ったのは嘘だ…
それは何の為に?
あの女…ブランカのせい?
(そうだ、イルファス!サビィはブランカに、たぶらかされているのだ。あの女はサビィだけではなく、ラフィにも色目を使っているのだ!)
サビィ様だけでなくラフィ様にも色目を使っている…
「許せない…色目を使って媚を売って…なぜ、あの女ばかりもてはやされる?」
(そうだ…お前の愛は一途で美しい…しかし、ブランカはどうだ?色目を使いサビィやラフィをたぶらかしている。イルファス、お前は可哀想だ。こんなにも一途にサビィを愛しているのにな。報われない…このままで良いのか?)
「良いわけない…いつも…いつも、いつも、いつも、いつも、いつも!ブランカは誰からも愛されチヤホヤされる!私は1人…誰も見てくれない。そんな私を、あの女は同情の目で見ていた。そして、憐れむように私に言った…イルファス、1人は淋しいわ、仲良くしましょうよ…って。私は悔しくて、差し出された手を払ってやった。見た目が美しく、他の天使達よりも力があるくらいで、私を見下して…」
(そうだ…お前は悪くない!悪いのはブランカだ!)
「私は悪くない…悪いのはブランカ…」
そうか…そうだ…そうなんだ!
私は悪くない。
私は、ただサビィ様を純粋に愛しているだけ。
悪いのは、あの女…ブランカだ!
(フッ…そうだイルファス。お前はブランカをどうしたいのだ?)
私は、ブランカを…傷付けたい…いや、いっそのこと消してしまおうか…
(そうか、お前はブランカを消したいのか。よし、分かった。私が手を貸してやろう)
「手を貸す…?」
(そうだ。お前の力ではブランカを消すなど、到底無理な話しだ。それに、お前の行動はザキフェルが監視している)
そうだ…私はザキフェル様に監視されている。
それなら、この会話もザキフェル様に聞かれているのではないか…
(大丈夫だ。イルファス。私は、お前の頭の中に侵入し話している。さすがのザキフェルも気付かない)
「頭の中に侵入してる…だから、私の考えている事が分かるのか…?」
(そうだ…イルファス、私と会話する時は声に出さなくていい。お前の思考は全て把握できる。その方がザキフェルに気付かれない)
なるほど…
私に手を貸してくれると言っていたが…
(そうだ。お前に手を貸してやろう。その代わり、頼みがある。)
頼み…?
どんな頼みなのか…
(なに…難しい事はない。お前なら容易い。どうだ?私と契約を結ぶか?サビィの愛を得、ブランカを消したいのだろう?)
私は力強く頷いた。
頭の中の声が誰なのか、そんな事はどうでも良かった。
願いを叶えてくれるのならば、どんな契約でも結ぶ。
私は頭の中声の主に全てを委ねた。
あの忌々しい水盤を使っての学びの最中だ。
私は、手に取るようにサビィ様の行動が分かる。
例え、こんなに離れていても…
それが、愛というものだと私は知っている。
「ああ…サビィ様…あなたは、私を愛していないと仰ったけど…それは、嘘という事を知っています。あなたは、ブランカから言い寄られたのですよね?お優しいあなたは、無下に断る事ができないから仕方なく一緒にいる…ザキフェル様は、あの女に騙されてるのだわ…クソッ!ブランカめ!許せない…サビィ様…待っていて下さい。あなたを、あの女から救って差し上げます」
私は固く決意し、あの方に決して届く事のない手を伸ばした。
私は部屋に入ると、後ろ手に扉を閉めた。
「やっぱり、この部屋は落ち着く…」
あの方をスケッチした絵を少しずつ描き溜め、壁一面に貼った。
私は絵を描くのが好きだし得意だ。
特に、愛しいあの方を描いている時間は至福のひと時。
「ああ…サビィ様…今日もお美しかった…」
私は紙とクレパスを取り出し一心不乱に描いた。
「子供達に教えている姿も素敵だった…」
水盤を前に、優しい笑顔で教えていらっしゃった。
凛とした佇まい、優雅で品のある物腰…
私の愛しい方は完璧だ。
「できた…」
私は、描き上がった絵を壁に貼った。
「もっともっと、あの方の絵を…」
私が再度クレパスを手にした時、頭の中から声が聞こえてきた。
(それで満足するのか?お前が求めているのは、そんな物ではないだろう?)
頭の中から声…?
いや、まさか…気のせい…
(気のせいなどではない。イルファスよ…)
「誰?なぜ私の名前を知っている?」
(お前の事なら何でも知っている…本当に欲しいものもな…)
「やめろ…やめろ!やめろ!私の頭の中で勝手に話すな!」
私は混乱して頭を抱えた。
(聞け!イルファスよ!自分の心に蓋をするな…心を解放するのだ。本当に欲しいのならば奪え!邪魔するものは消せ!)
「何を言っている…?そ…そんな事…私が望むわけない…」
(隠しても無駄だ…サビィの心が欲しいのだろう?憎いブランカを傷付けたいのだろう?)
「サビィ様…あの方は、私に優しかった…いつも周りから疎まれてる私に声を掛けてくれた…私は、あの時恋に落ちた。そして、あの方も私に好意を持って声をかけてくれた…」
(そうだ。イルファス…サビィはお前を愛しているのだ)
「本当に?」
真っ暗な闇に閉じ込められた私の心に火が灯る。
希望の火だ。
(ああ…本当だ)
やっぱりそうなのだ。
サビィ様は私を愛している。
愛していないと言ったのは嘘だ…
それは何の為に?
あの女…ブランカのせい?
(そうだ、イルファス!サビィはブランカに、たぶらかされているのだ。あの女はサビィだけではなく、ラフィにも色目を使っているのだ!)
サビィ様だけでなくラフィ様にも色目を使っている…
「許せない…色目を使って媚を売って…なぜ、あの女ばかりもてはやされる?」
(そうだ…お前の愛は一途で美しい…しかし、ブランカはどうだ?色目を使いサビィやラフィをたぶらかしている。イルファス、お前は可哀想だ。こんなにも一途にサビィを愛しているのにな。報われない…このままで良いのか?)
「良いわけない…いつも…いつも、いつも、いつも、いつも、いつも!ブランカは誰からも愛されチヤホヤされる!私は1人…誰も見てくれない。そんな私を、あの女は同情の目で見ていた。そして、憐れむように私に言った…イルファス、1人は淋しいわ、仲良くしましょうよ…って。私は悔しくて、差し出された手を払ってやった。見た目が美しく、他の天使達よりも力があるくらいで、私を見下して…」
(そうだ…お前は悪くない!悪いのはブランカだ!)
「私は悪くない…悪いのはブランカ…」
そうか…そうだ…そうなんだ!
私は悪くない。
私は、ただサビィ様を純粋に愛しているだけ。
悪いのは、あの女…ブランカだ!
(フッ…そうだイルファス。お前はブランカをどうしたいのだ?)
私は、ブランカを…傷付けたい…いや、いっそのこと消してしまおうか…
(そうか、お前はブランカを消したいのか。よし、分かった。私が手を貸してやろう)
「手を貸す…?」
(そうだ。お前の力ではブランカを消すなど、到底無理な話しだ。それに、お前の行動はザキフェルが監視している)
そうだ…私はザキフェル様に監視されている。
それなら、この会話もザキフェル様に聞かれているのではないか…
(大丈夫だ。イルファス。私は、お前の頭の中に侵入し話している。さすがのザキフェルも気付かない)
「頭の中に侵入してる…だから、私の考えている事が分かるのか…?」
(そうだ…イルファス、私と会話する時は声に出さなくていい。お前の思考は全て把握できる。その方がザキフェルに気付かれない)
なるほど…
私に手を貸してくれると言っていたが…
(そうだ。お前に手を貸してやろう。その代わり、頼みがある。)
頼み…?
どんな頼みなのか…
(なに…難しい事はない。お前なら容易い。どうだ?私と契約を結ぶか?サビィの愛を得、ブランカを消したいのだろう?)
私は力強く頷いた。
頭の中の声が誰なのか、そんな事はどうでも良かった。
願いを叶えてくれるのならば、どんな契約でも結ぶ。
私は頭の中声の主に全てを委ねた。
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