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第二十七話 知ってたよ

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「はぁ、んっ、若者の回復力すごいな……」

 ほんのひととき体を貫く楔から解放された佳樹は、ごろんと半身を返して凌介のほうに長い腕を伸ばした。射精後、すぐまた鎌首をもたげた凌介自身を指してニヤリと笑ったその顔が相変わらずかっこよくてずるい。どうせまた赤ちゃんみたいに泣くくせに。

「うるさい。でも佳樹好きでしょ、これ。そっちは出してないですよね。擦りましょうか?」

「別にいい。なんか普通にイってる感じするし……よくわかんないけど……」

「その代わり次はこっち」と、佳樹は今度は体ごと向き直った。体勢を変えるのは凌介も賛成だ。動物みたいに後ろから腰を振るのもよかったけど、やっぱり顔を見ながらひとつになってるって感じあいたい。

「ねぇ、好きです。今さらですけど」

「私は……セックスはそんなに……」

「いや、あんたセックスも十分好きでしょ。そうじゃなくって……まぁいいか。あのね、休みの日は一緒に寝坊してさ、ゆっくり朝ご飯食べて、昼間っからビール飲んで、そんで気が向いたらエッチなことしてもいいし、しなくてもいいし、そんな風になれたらいいなぁって僕は思ってます」

「そんな怠け者、うちのゼミにいたら張り倒すけど」

 そう言って眉間にしわを寄せ視線を逸らすのは、もうお決まりの照れ隠しの合図だった。結局、おヘソの裏をちょっと意地悪に責めるまで佳樹はたしかな愛の言葉をくれなかった。 
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