黒騎士と白騎士

完龍卞

文字の大きさ
4 / 6

第三・五話『守る者と守られる者』

しおりを挟む
“水の村”
『う……うーん……』
シェリムが目を開くとそれは見覚えがない天井だった。
『お父ちゃん、起きたよ!』
子供の声が聞こえた。シェリムはゆっくり体を起こすとそこには五十代の男と五歳ぐらいの女の子がいた。
『あんた、大丈夫か?』
男が聞いてきた。
『すまない、私はどれぐらい寝ていた?』
シェリムはその男に聞いた。
すると隣にいた女の子が
『おじちゃん、三日間ずっと寝てたよ!』
シェリムはベッドから立つとある物を探し始めた。
『すまない。私と一緒に剣も流れてこなかったか?』
シェリムは男に聞いた。
『すみません。私があなたを見つけたときは、剣はありませんでした』
男がそう言うと頭を深々と下げた。
『いや、いいんだ。なければなくて』
ドゴッーン! 大きな音が鳴り響いた。
『なんだ、なんだ!』
男が慌て始めた。
『お父ちゃん、怖いよ!』
女の子が男にしがみつく。
『おい、てめぇら金目の物探してこい!』
外で男たち怒鳴っていた。
『すみません、木の棒や剣などありますか?』
シェリムが男に聞くと男が錆びた剣を持ってきた。
『先祖代々と引き継がれる剣です。しかし、この村ではこのような剣は使わないので貴方様にあげます』
男がシェリムに剣を渡した。
『わかりました。この剣、しっかりと使わせてもらいます。それでは』
シェリムは階段を降り、外に出た。
外には男が五人ぐらい居た。
『貴様ら!ここまでだ!』
シェリムは男たちに剣を向けた。
『なんだ、てめぇは!』
男たちはシェリムに集まってきた。
『やっちまえ!』
男たちは持ってる刀で斬ろうとするが、シェリムが素早く刀を叩き落とした。
『貴様らにこの白騎士が倒せると思ったか!』
シェリムはその男の脇腹を斬った。
しかし、錆び付いていたのかうまく切れなかった。
『ぐわっ!』バタン! 男たちが倒れた。
シェリムはすぐに距離をおいた。
『お……覚えてろよ!』
男たちは逃げようとした。
その時、誰かが飛び降りてきた。
『甘いぞ、白騎士。こんなヤツ、生かしてならない!』
カチャ ズバァ! ヒュッ ドスッ!
男はすぐに刀を抜き、一人を斬った。
そして、刀を回し後ろに向け、もう一人を刺した。
他の男たちが逃げようとしたとき、男は懐からリボルバーを出し、撃った。
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
男たちは倒れていった。
『貴様、何故ヤツらを殺した!』
シェリムが怒鳴る。男はこう答えた。
『今、こいつらを残しておいてどうする?もしこいつらが無実の人々を襲い出したらどうする?どれが守るんだ、あぁん!』
男はリボルバーに弾丸を装填し、シェリムに向けた。
『この世はな、生きるか死ぬかなんだよ!』
男がそう言うとシェリムが語り始めた。
『こいつらにだって家族がいるかも知れない。帰りを待っているヤツもいるかも知れない。貴様はそう、こいつらの人生を奪ったんだよ!』
シェリムは剣を構え、男に向けた。
そして、静かな時間が流れた。
バンッ! 男がリボルバーを撃った。
キン! シェリムは弾丸を弾き、男の首もとに当てた。
『何故、首を取らない?』
男がシェリムに聞いた。
シェリムはこう答えた。
『私は貴様のような男の首は取らない』
シェリムは剣を下げた。
『馬鹿め、そのような考えが命取りになるんだよ』
男はこう言い、リボルバーを懐にしまった。
『俺の名前は、八雲剛だ』
男はそう名乗るとその場を離れていった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...