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1話
しおりを挟む↑ 昔アナログで描いてたイラストです。すみません💦
左:山野 紅葉
右:三条 亜月
ゆずれないモノ 1(校正済み:2025/11/08)
「や・・・あっ・・・!もう・・・やめっ・・・」
もうどのくらいこうしているのか。
絶え間なく送り込まれてくる快感に、声は艶を増していく一方だ。
「い・・・・いや・・だ・・・もうっ・・・・ああ・・・・」
ぐちゃぐちゃと、中を掻き回す熱い塊の動きが早くなる。
「あっ、あっ、あっ、あああっ」
「はぁ・・・はぁ・・・いいよ・・・すごくいい・・・」
上から聞こえてくる男の吐息は、気持ち悪いはずなのに、
「男の性感帯」を確実に突き上げてくるそれは、
三条亜月に抗えない程の壮絶な快感もたらす。
「あ・・・・うっ・・・ああっ・・・!!」
腰はじんわりと甘く痺れ、何度目かの射精を強要され、亜月は一際高い声で喘ぐ。
(くそ・・・!ちっくしょう・・・!!)
どんなにやめてと懇願しても、その熱は萎える気配がなく、
容赦なく亜月の中をかき回し続ける。
屈辱と生理的な涙は、目を覆っている布に吸い込まれ、頬を伝ことはない。
どうしてこんなことになったのか。
三条亜月は、自他共に認める容姿の持ち主だ。
180を超える長身に引き締まった身体。
そしてさらに頭身を高く見せる小さな顔。
その形の良い輪郭には、形のよいパーツが完璧に配置されており、
品の良い明るめのブラウンに染められた髪は、
ゆるくカーブを描いて風にふわりと揺れている。
生まれ持った美貌に加え、これまた大企業の社長の御曹司で
5人兄弟の末っ子という、
絵に描いたような恵まれた環境に育った。
だがその恵まれ過ぎた環境と、末弟故に甘やかされてきたせいか、
性格はお世辞にも穏やかとは言えなかった。
「醜いやつに生きる価値は無い」などと言って憚らず、
その口の悪さや、完璧を極めた外見ゆえに許されてきた、
身勝手やワガママのせいで、ごく一部の常識人からは敬遠されがちだ。
それでもやはり、
華やかな亜月の周りには、男女問わず多くの人々が、
各々の下心を携えて集まってくる。
寄ってくる女の多くは、亜月とのセックスがお目当てだし、
そのお零れにあずかろうという男も多い。
女癖の悪い亜月は、一度寝れば飽きるのか、
よほど気に入らない限り同じ女とは寝ない。
一夜限りだ。
その一夜限りの夢に胸を膨らませ、
女たちはこぞって自分を着飾り、亜月に見初められるよう努力を惜しまない。
そうやって見初められて、一度でも抱かれれば、
それは女たちにとってはまるで勲章のように輝き、
彼女たちのステータスとなっている。
あの亜月に抱かれた。
その誇りが、彼女たちの自信へと繋がっている。
亜月とのセックスは、一種のブランドなのだ。
また、亜月の取り巻きもそれなりに洗練された男性が多く、
とりわけ、「友人」として彼の横に立てることは、それなりに名誉なことだった。
そんなカリスマ性を誇る亜月が、どうしても相容れない存在がある。
いつも、アニメやらゲームの気色の悪い話で盛り上がり、ダサくて悪趣味な連中。
いわゆる「オタク」と呼ばれる連中だ。
その中でも特に気に入らないのが、
オタク連中の中でもとりわけ目立つ、不細工な山野紅葉だ。
視力が相当悪いのか、ぶ厚い傷だらけのレンズに、
黒くてダサい大きめのフレームのメガネ。
オシャレのつもりなのか、似合ってもいないくせに、
後ろで結わえられた長い髪が、さらに不気味さを増している。
そして小太りなのか、厚みのある身体に纏っているのは、
茶色の下地に赤とグリーンと黄色のラインの入った、趣味の悪いネルシャツ。
どこで買ったのかが逆に気になる。
そしてそのシャツは決まって、なぜかボトムスにインされている。
奴らは大抵そんな格好をしていて、
オタクはそれを着なくてはいけない決まりがあるのか、とさえ思えてくる。
到底理解し難い、最低最悪の気持ち悪いオタク野郎。
どうせ童貞。
生身の人間も知らず、右手を相手に、二次元の世界に青春を捧げる痛い存在。
そんな痛い童貞野郎の山野が、自分の視界に入るのがどうしても許せなかった。
「よう山野。
そんな不細工童貞でさ、生きてて楽しいの?俺だったら生きていけな~い」
山野を見ると、ついつい存在や人格を否定するような言葉を浴びせてしまう。
だが、こういった罵声に山野が反応することはない。
聞こえているはずなのに、山野は我関せずと無視を決め込む。
「今日も右手が相手なのか?
それとも、たまにはもどかしい左手?どっちにしても腱鞘炎には気を付けなよ童貞野郎」
亜月は股間を扱くかのようなジェスチャーをしながら更に罵倒し、
周囲の取り巻きたちもどっと嗤う。
それでも山野は亜月の言葉を無視し、決して言い返すことはない。
(ああ?んだよコイツ・・・無視かよ・・・!)
その態度は、どんどん亜月を機嫌を損ね、
山野の人格を無視した罵声はさらに悪辣さを増していく。
「つーかさ、お前、本物の女のアソコ見たことあんの?知らねぇのにどうやってマスかくんだよ」
ひゃはは、と、下品な悪い笑い声を上げる。
「妄想で賄えるの?ねぇ・・・匂いとか知ってる?知ってる分けねぇか~!」
「・・・・っ」
それでも山野は、唇を噛み締めるだけでやはり何も言わなかった。
それでも山野の決めこむ「無視」に対して、亜月はだんだん苛立ちを覚える。
華やかでいつも人の中心にいる亜月は、「無視」をされるというのが死ぬほど嫌いだ。
「おい、なに無視してんだよ、ヲタクのくせに!!」
肩を思い切り掴んで、自分の方に無理やり向き直らせる。
ほぼ暴力だ。
「痛っ・・・な・・・何をするんだ・・・キミ・・・!」
オタクごときに「キミ」扱いされて、瞬時に頭に血が登る。
生意気に歯向かってきた山野の肩を、今度は思い切り突き飛ばした。
「あっ・・・!ぐっ・・・!」
山野は机の端におもいっきり背中をぶつけ、悲鳴をあげたあと、
そのままうずくまってしまった。
それでも、微塵もかわいそうとは思わず、亜月は周囲の仲間と
その様を見て大笑いし、山野に向かって唾を吐きかけた。
「・・・ッ!!!!」
「俺を無視するからだよ」
痛みと侮辱に耐える山野の手が、ぎゅ・・・と拳を握る。
だがその拳は、亜月からは見えなかった。
「ちょ・・・あ、あんまりじゃないですか・・・三条くん・・・!」
山野の友人と見られるオタク仲間が、流石が流石に酷いと抗議したが、
取り巻き陣の射すくめるような視線に怯えてしまい、
それ以上は何も言えず、山野を抱えてその場を去っていった。
「負け犬ども!不細工同士でホモるなよ~~!」
背後から、亜月が止とどめの罵声を浴びせ、そして教室は再び大爆笑が起こった。
キモいだの勘弁しろだの、続けて罵倒する声に押されるように、
去っていく山野の後ろ姿を、亜月は悪びれもなく鼻を鳴らして面白そうに見送った。
その一部始終を見ていた他の学生が、その仕打ちに眉をひそめていたが、
亜月がそんなものを気にするはずもなく、
そして彼らも直接亜月を咎めたりはしない。
亜月に歯向かおうものなら、次のターゲットは自分だ。
みんな亜月が怖いのだ。
そうやって、亜月は見当違いな権力を一層強めていく。
強い反感を、かっているとも知らず。
11月。
ハロウィンが終わり、街の大部分がクリスマスが一色に染まる。
その頃にになると、
亜月とのクリスマスを過ごしたい女たちは、こぞって様々なアプローチをかけてくる。
男たちも、クリスマスだけでも共に過ごす彼女がほしいらしく、
やれ合コンはどうするだの誰を呼ぶのか等と、しつこく亜月につきまとった。
さすがに鬱陶しくて、友人の一人、
西川に連中を押し付けて、自分はさっさと退散してしまう。
西川は、とにかく頭が良く、口も達者で亜月でも口ではかなわない。
厳選された品の良い銀縁の眼鏡が、理知的な瞳とよく似合っていて、
いかにも出来る男といった容貌で、女子にも人気が高い。
「おい、亜月、だいじょうぶか?ほら、飲めよ」
そしてもう一人の友人、坂下は缶コーヒーを亜月に差し出した。
「モテるのも大変だな」
そういう坂下もまた、亜月が友人として側に置くだけあってかなりの美丈夫だ。
カッコいい、というより「美人」と表現したほうがしっくりくるが、
声は意外に低くて渋く、いい意味で見た目を裏切るいい声だ。
その綺麗なアーモンド形の瞳に、今は同情を色をにじませている。
この二人はほかの連中に比べて、余裕と余裕と自信があるのか、
女だ何だとがっついてもいないし、亜月に対して見返りも求めていないので、
亜月も心を許している。
「今日はもう帰ったら?」
少しだけ疲れの滲んでいる顔を心配してか、
今日の飲み会はやめたほうがいいと坂下が促してきた。
「そうそう、あとは俺らに任せて」
連中をうまく説得したらしい西川が、亜月のもとへ帰ってきて、
安心させるように、ぽんと肩を叩く。
亜月の機嫌の悪いときは、西川が周囲を適当にあしらい、
坂下が亜月のご機嫌をとる。
それも彼らの役目だ。
「そうだな・・・」
連日の合コンや女たちのアプローチに疲れていた亜月は、今日は帰宅すること選んだ。
送ろうか、と申し出る坂下の親切を亜月は断った。
心配されるのは悪い気はしないが、今は一人になりたかった。
心配する西川と坂下と別れ、久しぶりに一人帰路に就く。
息苦しさから解放され、その開放感に気も緩み、亜月は大きく伸びをした。
(ま、あの二人がいりゃ、今日の合コンはなんとかなんだろ)
今日は一人で行きつけのダイニングバーに寄ろうかとも思ったが、
たまにはビールでも買って、一人でのんびりするのも悪くない。
そう思い、コンビニに寄ろうとルートを変え、
少しでも近道になるようにと、
いつもは通らない人気のない小道へと入ったのが間違いだった。
少し、気を緩めすぎたのか、
「!?・・・何・・・!!」
気配に気づいた時にはすでに遅く、
突然背後から羽交い絞めにされ、口に何かを押し込まれる。
その力は、亜月の腕力をもってしても振りほどくことができず、
強制的に嚥下させられた。
(しまった・・・!なんだ・・・!?なにを飲まされ・・・・)
抵抗しようともがくが、だんだん亜月の意識は遠のいていった。
それから、どのくらいの時間が流れたのかはわかならい。
「・・・ん・・・?・・・っ・・・・んっ・・・」
じわりと、身体の奥底が引き連れるような、違和感に目を覚ます。
(いや・・・だ・・・なに・・・?熱・・・・っ!)
「っ・・・うっ・・・うぅっ」
その違和感が、何者かの熱に貫かれ、犯されているのだと気き
パニックを起こす。
叫ぼうにも、口元を何かで塞がれていて声が出ない。
この状況を打破しようと試みるが、両手首が縛られ、自由にならないことを知る。
「んっ・・・!うんっ!!ん~~~!!!」
「おや、起きたみたいだね」
どこかで聞いたことがある声が降りてきた。
でも、思い出せない。
不自然なしゃべり方。まるで何かを演じているかのような。
「いい眺めだよ、三条くん」
(誰だ・・・・?俺を知っているヤツか・・・?)
男は息も荒く、さらに亜月の脚を高く上げ、繋がりを深めてくる。
「うむんっ!」
猿轡のせいで呻くことしかできなくて。
「まったく・・・色気のない声だよねぇ・・・」
「んっ・・・!んっ・・・んうっ・・・!」
見えない。動けない。喋れない。
でも次々に送り込まれてくるのは得も言われぬ快感。
(なに・・・これ・・・!くそっ・・・気持ちいい・・・!)
「ま、こんなものが口を塞いでたら、可愛い声、出せないよね」
男は腰の動きを止める気配はなく、じゅぷじゅぷという音が亜月の耳をも犯す。
「男でも、かわいい声が出せるかな?」
その言葉と同時に、口にハメられていた異物が引き抜かれた。
罵声を浴びせてやろうと、空気をたくさん吸い込んだその途端、深く抉られる。
「あっ・・・あぁん・・・・!」
自分が出した声とは思えない程、甘い声が漏れた。
「お・・・!いいね・・・可愛い♡・・うん・・・ありだね・・・!」
「や・・・あん・・・!て、てめぇ!・・・あっ!あっ!あぁん」
てめぇ、と言った途端、それを咎めるようにその硬い熱が、
亜月の一番敏感な部分を容赦なく突き上げきた。
「あっ、あっ、あっ!」
何度も、何度も。
しつこくしつこく、そこばかりを的確に打ち付けられる。
「も・・・や・・・・んあああっ・・・・・!」
執拗な突き上げに、亜月は耐えきれずに達してしまい、男の陰茎をぎゅうっと締め上げる。
「くうっ・・・三条くん・・・出るっ・・・」
搾り取るかのような動きに、男の熱が亜月の中に注がれる。
中を満たすその熱に、亜月は思わず身震いした。
そして・・・引き抜かれるかと思いきや、中のモノはだんだんと質量と硬度を増し、
そうして今に至るまで、亜月はこの男にずっと犯され続けているのだ。
(・・・くそ・・・!いい加減、終われよっ・・・・)
「あっ・・・あぁっ・・・もう・・・あっ・・・ああ!」
何度か射精させられているのに、それでも性感帯への突き上げはまだ終わりそうにない。
堪え性のない亜月は、すさまじい快楽に逆らえず、声を我慢するなんてこともできない。
「はぁ・・・はぁ・・・もう・・・やめろ・・・っ・・・ああっ」
「はは・・・・あははは・・・」
男は急に笑い出した。
「いい様だよね、三条くん・・・こんな僕なんかに犯されて・・・こんなに乱れちゃって」
呟く男の声に、聞き覚えがあるが、誰ものか全く見当がつかない。
こんな声で、恐ろしいくらい巧みな腰使いをしそうな男が亜月の周りにいただろうか。
「だ・・・れだ・・・お前っ・・・あっ」
本当に巧みだ。その動きに翻弄される。
くちゅくちゅ・・・と水音が再び耳を犯す。
完全に溶け切った亜月の中を、その熱が摩擦する度に表現しがたい悦楽が亜月を支配していく。
「・・・僕の正体・・・知りたい・・・?」
男はふいに、腰の動きを止めた。
「・・・っ」
快楽の波が突然途絶え、不覚にも亜月は不満を覚えてしまう。
「誰・・・なんだよ、お前・・・」
みっちりと男を加え込んだ粘膜が、
動かないそれに焦れ、ひくひくと収縮し、男を締め付ける。
自分の意思とは無関係に蠢くそれに、亜月は動揺した。
「へぇ、もう男を誘う動きを覚えたの?イケない処女だねぇ」
処女という言葉を使って女に貶める。
「もう・・・処女じゃ、ないけど、ね」
そしてその言葉で、なにか大事なものを喪失したのを実感させられて。
「僕が・・・・」
男は強調して続けた。
「三条くんの処女・・・もらっちゃった・・・・」
ひくん・・・とそこがさらに収縮する。
「きっと君は、僕の正体を知ったら、死にたくなるかもね」
そう言って、おもむろに亜月の視界を奪ってた布を取り払った。
突然眩しくなり、思わず亜月は目をぎゅ・・・と瞑る。
恐る恐る目をあける。
ぼやけた視界はだんだんクリアになり、そして捉えたその男の正体に、
亜月は愕然とする。
「お・・・まえっ・・・・・」
全身が総毛立つ。
自分を犯していたのは、
自分が最も忌み嫌う男。
「あ・・・山野っ・・・・!」
あまりのショックに、絞り出すようにそれだけ言うのがやっとだった。
心臓がどくどくと嫌な音をたてた。
気色悪い衝撃が全身を突き抜ける。
汚らわしいものに穢されてしまった、絶望にも近い怒り。
こんな奴に自分が犯されていたのかと思うと吐き気がこみ上げてくる。
「い・・いやだ・・・!!」
弾かれたように必死にもがくが、ガシャンと金属の擦れる音が響くだけで、
手の拘束は1ミリも緩まない。
「て・・・てめぇっ・・・・離せっ・・・あっ!ぁんっ・・・あっ」
山野は再び亜月の中を突き上げる。
「キミは学習しないんだね・・・
もっと頭がいいかと思っていたのにね。口のきき方に気をつけたまえ」
「あっ、あっ、あっ」
高速で打ち付けられた接合部は泡立ち、
先程ピストンを催促するようにひくついていた粘膜は、嬉しそうに山野に絡みつく。
「いい様だねぇ・・・馬鹿にしている僕から、こんなに突かれてこんなになって・・・すごく・・・吸い付いて気持ちいいよ・・・キミの中・・・」
「あっ・・・山野っ・・・・山野っ・・・てめっ・・・」
「あっ、そうだ・・・」
何かを思い出したように、山野が不敵に笑った。
「・・・そういえばね、ネットで面白いことやってた・・・」
「あうっ!」
亜月は起立の根元をぐっと掴まれる。
そのまま、山野は亜月の前立腺ををガンガンに突き上げてきた。
「ひあっ・・・あっ・・・ああっ!やめっ・・・!」
強い射精感に焦れ、自ら腰を淫らに振ってしまう。
「こうすれば、出したくても出せないんだって・・・どう?苦しい?」
「いっ・・あっあっ・・・・ひっ・・・!」
「あははは・・・無様だねぇ・・・
僕みたいなのに強姦されて・・・!さぞ屈辱だろうねぇ」
癪に障る笑い声に腸が煮えたぎる。
「いあっ・・・ああっ・・・山野・・・てめっ・・・ぶっ殺してやる・・・!」
涙に歪む視界で山野を睨みつけようとするが、
アイシャドウで彩られたように赤く潤みきった瞳では、山野の嗜虐心を煽るだけのようで、
苛みは一層酷くなる。
出したくても出せない苦しさにもがき、嬌声を上げる。
その様を山野は面白そうに見下ろし、妖艶に腰をくねらせる亜月を視線でも犯してくる。
「・・・どう?ありきたりだけどさ・・・僕に、懇願してみる気・・・ないかい?」
こいつは、こんなに低く、静かな声だっただろうか。
そんなことに意識を取られ、山野の言っている言葉を理解するのに時間がかかった。
「イカせてください、ご主人様・・・って、言ってごらんよ・・・」
「な・・・に・・・・!?」
こんな気色悪い男に懇願するなんて冗談じゃない。
「・・・誰が・・・!あっあっ・・・そこ・・・だめっ・・ああ!」
だが、山野の巧みな腰使いと、達することのできないもどかしさは、
亜月のプライドを打ち砕くのに十分すぎて、亜月の肉体を翻弄していく。
涙と唾液が肌を伝う。
「ほら・・言いなよ・・・ね・・・?いい子だから」
言うまい、と誓っても、送り込まれる快楽と、
意外に心地よい山野の声音に、堪え性のない身体は早くも亜月を裏切った。
「・・・・せて・・・・」
「・・・・は?・・・なに・・・」
「や・・・まのぉ・・・」
「・・・ご主人様、でしょ?」
「くそっ・・・ああっ、あっ、ご・・・主人・・・さまっ・・・!」
普段の亜月なら、オタクの妄想ごっこなんて死んでも御免だが、
もうイキたい一心で必死に叫ぶ。
「イカせてください、は・・・?」
「いか・・・せて・・・ください・・・・ご主人・・・さまぁ!!」
そう、言ったのに。ちゃんと言ったのに。
山野の突き上げは止まらない。
戒めも、解かれない。
「いやっ・・・嘘・・・つきっ・・・」
「・・・だって君の中・・・気持いいよ・・・知ってる?どんなふうに僕に絡みつくか・・・」
「ああっ、いやっ・・・!イキたいっ・・・!」
「嘘つきは君だ・・・ああ、ほら、キュンキュン絡んでくるよ・・・
ホントはやめてほしくないんでしょ?」
狂ってしまいそうな獰猛な快感に、イヤイヤをするように頭を振る。
焦点が合わず、涙で綺麗な顔はぐちゃぐちゃになり、紙一重の恐怖が、何度も亜月を叫ばせていた。
「いやぁ!や・・まの・・・せて・・・いかせて・・・ねがっ・・ああっ」
「ふふ・・・どうしようか・・・」
「いや!いやぁ!!いか・・・・イカせて・・・くだ・・・さ・・・」
「じゃ・・・ごめんなさいは・・・?」
「・・・さいっ・・・!ごめんなさいっ・・・!あっ・・・ああっ!」
正気なら絶対に謝ったりなんかしないのに。
謝罪を強制させると、やっと戒めが解かれた。
「あっああああっ!」
びゅるっと、勢いよく亜月は射精した。
塞き止められていたそれは、次々に溢れ出て、
山野の手と自分の腹をぐっしょりと汚していく。
そして山野もまた、亜月の中へと熱を放つ。
「・・・あ・・・」
息が切れ、空いた口を閉じることもできない。
もう、何度イカされ、何度あられもない声をあげただろう。
未だに身体はビクビクと痙攣し、その余韻がまだ続いている。
・・・こんなセックスは経験したことがない。
やっと満足したのか、山野は亜月から自身を引き抜いた。
山野が少し亜月の体から身を離した瞬間を狙い、隙ありとばかりに山野を蹴りあげようとしたが、
全然力が入らず、脚が動かない。
「く・・・・くそっ・・・・!」
この状態で逆らうような態度を向けて、また貫かれてしまってはもう身がもたない。
やってしまった後で亜月は怯えた。
だが、想像したような蹂躙はなく、
山野を見ると自分のものティッシュにくるんで始末していた。
屈辱。
屈辱に胸が押しつぶされ、息苦しくなっていく。
自分の出した精液で腹は汚れ、さっきまで山野に陵辱の限りをつくされたそこからは
山野の放ったものがドロリと零れ落ちていく。
「・・・っ」
そんな醜態を、煌々とした明りの中で山野に晒しているのだ。
自分が見下す男相手に。
山野は着衣のまま、前をくつろげただけの状態、
自分だけが裸体なのもさらに羞恥と屈辱感を煽る。
「山野・・・てめぇ、こんなことしてただで済むと思うな・・・」
この状況で減らず口が叩けるなど、また学習しないと言われてしまいそうだったが、
負けず嫌いが高じて、どうしても言わずにいられなかった。
今度こそ普段の仕返しとばかりに、激しい暴力が加えられるとも思ったが、
そんなことはせずに、山野は自分の身なりを整え、床に足をつけると、
脚に力の入らない自分と違い、しっかりとした足取りでパソコンへと向かう。
肘置き付きの椅子に腰をおろせば、きぃ・・・っと音がなった。
山野は無言のまま、カチカチとパソコンを操作し始めた。
その画面を目で追っていくうちに、亜月の顔はだんだん青ざめていく。
モニターに映し出されていたのは、まさに今、
山野の方を向いて呆然としている自分の顔。
「や・・・山野・・・・おま・・・」
す・・・と、冷や汗が流れた。
カチカチとマウスの無機質な音が響く。
そして次に映し出されたのは。
『あっ、あっ、あっ』
大股を広げて、男のものを咥えこみ、あられもなく喘ぐ自分。
『いか・・・せて・・・ください・・・・ご主人・・・さまぁ』
どくどくと心臓が破裂しそうなほど脈打つ。
聞こえてくる音声も、どこか遠い。
「うそ・・・だろ・・・・?」
山野のメガネにパソコンの画面が反射して、レンズに自分の痴態が写りこんでいる。
怖い。
撮られていた。
亜月の痴態をすべて。
脅迫されるのだろうか。
山野はこの映像を大学中に撒き散らす気でいるのだろうか。
冷や汗が次から次へと流れていく。
自分が、もっとも毛嫌いする男に犯されて散々喘いで、
ご主人さまなどと呼び、懇願を口にして、何度もイカされたことがバレたら。
もしこの映像が、ネットで世界中に流れたら・・・。
目の前が暗くなる。
口の中が異様に乾く。極度の緊張状態に陥いる。
「・・・僕はね、学校にはそんなに友達はいないけど、
ネットの世界なら同士がたくさんいるんだよ。」
反射するレンズのせいで、山野の表情が見えない。
「データはね、自動でクラウドに保存されるからね。
たとえここでキミがパソコンを壊したとしても無駄だよ。」
口の端がにやりと上がる。
「そのうちキミが僕を殺したとしても、僕の同士がこれを引き継いで、
君の痴態を全世界にばらまくこともできる。」
「だ・・・誰にも・・・言わないでくれ・・・」
懇願は、自然に口をついて出ていた。
「頼む・・・なんでも言うこと・・・聞く・・・から・・・」
プライドも糞もない。
こんなものをばらまかれるくらいなら、
死んだ方がマシだ、なんて思えるほど意志も根性もない。
ばらまかれるよりも、死ぬよりも、
薄気味悪いオタク野郎の言いなりになることを選んだ。
「言うこと聞くから・・・・」
怖くて悔しくて涙がこぼれ、震えがとまらず、歯がカチカチ音をたてた。
顔の角度が変わり、反射して見えなかったレンズから、山野の目が見えた。
なぜかそれにホッとした瞬間、亜月の目の前は真っ暗になり、意識を手放した。
目を覚ました時、亜月は自分のマンションにいた。
時計を見ると、日付が変わっている。
一瞬、山野とのことは夢だったのではと期待したが、あらぬ部分に鈍痛が走り、
顔をしかめた。
夢ではなかった。
気持ち悪くなり、口元を抑える。
嘔吐感があり、えづいてみるものの、なにも出てこなかった。
家に連れてきたのは山野だろうか。
ドアポストから、中の方に鍵と学生証が落とされている。
きっとバラされる。
馬鹿にしていた亜月を、山野は恨んでいるはずだ。
不安に押しつぶされそうになり、思わずシーツの中に潜り込む。
この事実を知った周りの人たちが、今までやりたい放題だった亜月を、
今後どういう目で見るのかを考えただけでも恐ろしかった。
大学を休んだその日の昼に、坂下から電話があった。
休んだことを心配していたが、
亜月に関して何か変な噂が流れていないかを確認すると、
どんな?と、逆に聞き返されて返答に困った。
無理はするなと念を押す坂下は、ちょっと自分を甘やかしすぎだと、
亜月は今更ながら思う。
いつもちやほやされて、何を言っても許されて。
自分に対して良くは思っていない連中であっても、亜月がにっこり微笑めば、
何も言ってくることはない。
そんな大人な対応や社交辞令を、
自分が強いからだと勘違いしていた亜月からしてみれば、
山野から受けた強烈は仕打ちは、自尊心をズタズタにするには十分で。
ただの仕返しではなく、男としてのプライドすら踏みにじられ、
挙句、痴態を撮られてしまうという失態すら演じてしまった。
ただ、坂下の話では、どうやら山野はまだ、ほかの連中にはバラしてはいないらしい。
そのことに安堵した途端、喉の渇きを覚えた。
キッチンに向かおうと脚を床につけば、がくりと崩れ落ちる。
四つん這いんになりながらキッチンまでたどり着き、
冷えたミナラルウォーターで、一気に喉を潤し、
一息ついた途端に涙がこぼれてきた。
無様だった。
今までのセックスでも、脚に力が入らずに歩けなくなる女性がいたが、
その様を「俺が足腰立てなくしてやったと」と
勝ち誇ったかのように見下していたのを思い出す。
それと重なる自分。
あいつも同じように、自分を見下していたのかと思うと、
情けなくて悔しくて、感情を抑えることができず、嗚咽を漏らした。
それから、まともに歩けるようになるまでに2日かかった。
脚に力が入らない云々以前に、やはり尻が痛くてなかなか歩くことができなかった。
久々に出てきた亜月の周囲には、待ってましたとばかりに人が集まり、
山野がやはり例のことを、まだバラしていないのだと確信し、ほっとする。
その山野の姿を、思わず探してしまう。
「どうかしたか?」
やたらキョロキョロする亜月を不審に思い、西川が尋ねた。
「いや・・・」
山野を探しているとも言えず、再び話題に加わる。
その時、教室に山野が入ってくるのが見えた。
亜月の心臓はドキリとはね、嫌な汗が吹き出す。
一瞬、山野も亜月に気づいたようだが、その目は瞬時に反らされてしまった。
心地の悪い気分を味わいながらも、ちらちらと目で追っていたが、
話しかけてくる他の人に気を取られてしまう。
でも、その後も。
どうしても。
なぜか亜月は、目で山野を追ってしまっていた。
西川と坂下をうまく言いくるめて、いつものように取り巻きから逃れて一人になると、亜月は山野を探した。
タイミングよく、
一人で中庭のベンチに座って雑誌を読んでいる山野を見つけることができた。
この校舎に囲まれた中庭は、開閉可能なガラス張りの天井があり、
すきま風もないので温室効果でとても暖かい。
夏には冷房を入れることも可能だが、ここ最近の省エネ傾向のためか、
ビニールハウス並に熱いので、夏場は誰も近づかないけれど。
さくさくと芝生を踏みしめる足音に気づいたのか、名を呼ぶ前に、山野が先に振り返った。
「・・・三条くん・・・」
無表情なのか、驚いているのか。
山野の表情は亜月には読めない。
表情が少ない人間はとても苦手だ。
山野は立ち上がり、一歩後ずさる。
今日の山野の格好は、黒地に緑の線画で何かのロボットアニメのキャラが描かれていて、
その上から、例のネルシャツを羽織っている。
さすがにボトムにイン・・・ってことはないが。
うわぁ・・・・とドン引きするものの、そんなケチをつけにきたわけではないので、
亜月はさっさと本題に移る。
「あれ・・・バラしてないんだな・・・・」
尋ねても少し目を反らし、黙ったままの山野に不安になり、思わず顔を凝視する。
ここまでじっくりと山野の顔を見たのは初めてだ。
これまでは眼鏡の主張が強すぎて、あまり気付かなかったが、
山野の眼は、意外に切れ長で、鋭い印象を与える。
「ば、バラさない・・・よな?
こないだも言ったけど、俺、なんでもお前の言うこと、聞くし・・・」
取り巻き連中が聞いたら卒倒しそうな言葉が、するりと口をついて出た。
それでも黙っている山野に焦れる。
「なぁ、俺、どうしらいい?何をすればいい?」
苛立ちは不安にすり変わる。
「お、女が抱きたいなら、俺が紹介・・・」
「今後、僕に関わらないでくれ」
亜月が言い終わる前に、山野は早口でかぶせてきた。
「・・・・え?」
一瞬、何を言われたか分からなくて。
「バラされたくなかったら、今後一切、僕に関わらないで」
亜月の目を見てはっきり告げる。
「君が、僕たちの趣味をどう感じようと自由だけど、
表立っていちいち否定するのはやめてくれ。話しかけないでくれ」
口調も落ち着いていて、山野の表情はあまり変わらない。
「僕たちが何を趣味にしようが僕たちの自由だよね?
キミの身勝手な行動に比べたら、僕は誰も傷付けてないよ。」
「・・・・・・・そ・・・だけど・・・」
「君にだって自分の聖域があるだろ?
僕は自分の聖域を君なんかに踏みにじられたくはない。
仲間内で馬鹿にするのはかまわないけど、
それをいちいち、あんな風に絡むのはやめてくれ。
もう、二度と僕らに構わないでくれ!」
最後に少しだけ声を荒げた山野は、
「大丈夫、バラさないよ」と小さな声で呟いて、足早に去っていった。
そんな山野の後ろ姿を見送る。
バラさないと言われたものの、手放しでも喜べない。
だいたい、ほんとうにバラさないというのも信じ難い。
亜月の頭の中は、山野のことでいっぱいになっていく。
嫌いな相手のことがずっと、頭から離れないのが嫌で嫌でたまらない。
だが、山野のことを考える度に、嫌悪感とは裏腹に、じん・・・と自分の奥がしびれる。
それを打ち消すかのように、
憂さ晴らしにように、その日、亜月は女を抱いた。
だが、女が悦べば悦ぶ程、その喘ぐ様が先日の自分と重なった。
ハッとして、頭を振り、行為に集中する。
女とのセックスは気持ちいい。
でも、
あの時のような、我を失う程の、溺れそうなほどの快楽は味わえない。
あの壮絶な快感を、女は与えてはくれない。
奥の性感帯を暴かれて、この女みたいにあられもなく喘いで。
亜月を一番苦しめる方法として、
忘れることのできない屈辱を、身体と記憶に刻みつけられたのに。
与えるセックスではなくて、与えられるセックス。
気が狂いそうな、脳みそがドロドロにとけてしまいそうな壮絶な快感。
一度味わうと、もう普通のセックスではもの足りなくて。
屈辱であった反面・・・。
(・・・ヤバかったよな・・・あれ・・・・)
中を犯されて、中に出されて征服される。
思い出すと、ぞくりとしたものが背中を突き抜けた。
気色悪い男に、凌辱の限りを尽くされる自分を想像した途端、
ひときわ自分のものが膨らみ、放った精子をコンドームが受け止める。
(もしかして・・・マゾっ気あんのかな・・・俺・・・)
嫌悪が、願望にすり替わった瞬間だった。
意外な自分の一面を垣間見る。
あれから何人かとセックスしたが、
行為の最中は山野ばかり浮かんでくる。
認めたくない。
認めたくはないが、身体があの快感を欲している。
「・・・はぁ・・・」
普段、溜息なんてつかないのに。
滑らかな頬はほんのり赤みを帯び、瞳には欲情の色が灯り、
亜月の今までにない異常な色気に、周囲がざわめきたつ。
そしてその意味深な視線は、今日も山野を追い続けた。
【1話 おわり】
誤字脱字のご指摘大歓迎です(*´▽`*)
【追記2025/11/08】
校正しました。
まだまだ語彙力もないし、表現も乏しいですが、最初の文よりはマシかと思います。
0
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