私が浮気をするまで

なによ

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序章

もう一度会いたい

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「着いた?」
彼から連絡が来て、私はすぐに「着いた。」と送った。
ふいに好きなYUIのCHE.R.RYを思い出し、しまった。と思った。
…それから3分後、またスマホが鳴った。
彼からだった。
「よかった。今日は楽しかった。早く寝てね。」
その言葉に胸が熱くなるのがわかった。
しかしすぐに、彼女がいることを思い出し、元の自分に戻る。
好きになんかならない。
…そう決めて、LINEを既読無視した。




あの飲み会から1週間がたった。
あれから彼のLINEが忘れられない。
もしかしたらまたメッセージが来るんじゃないか、そう思って何度もトーク画面を開いてしまう。
こんなに胸がドキドキするのは初めてだった。
ずっと彼のことを思い出していた。彼が話している姿、タバコを吸って、煙をふかす仕草、そして笑っている姿。
私の前の方で教授が黒板にひたすら字を書いては消しを繰り返している。
テスト前だし、私も早く黒板に書かなくてはいけないのにペンが上手く動かなくて、ほぼ白紙みたいになっていた。
「メーイ!」
授業が終わったあと、ミサに話しかけられた。
「最近どうしたの?ずっとうわの空じゃない?」
この前の先輩とは順調のようでミサは嬉しそうだ。
「そんなことないよ。」
私はほぼ白紙のノートを慌てて隠す。
ミサに誘われて行った飲み会で好きな人ができたなんて言えない。
お節介のミサがすることは目に見えていた。
「ふーん。」
ミサはつまらなそうに言った。
その後に、
「そういえば、この前の飲み会、どうだった?楽しかったなら入部してみない?」
たしかに入れば彼と会う機会が増える。入りたい。そう思った。
「入部はいいよ。」でも私はそう言った。
たしかに彼との接点は増えるかもしれないが、歴史研究会を利用するみたいで嫌だった。ミサは私の返事が意外だったらしく、残念そうにしている。
「あ、じゃあ合宿だけ来てくれない?今、同学年の女の子1人しかいないから困ってるのよ。」
おそらく、その合宿にも例の先輩が来るから少しでも距離を縮めたいのだろう。本当に困っているようだった。
合宿に行くメンバーを見せてもらうと彼はいなかった。
「いいよ。」
彼はいないからこそ、そう返事をした。
.
.
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合宿は8月の終わりの2泊3日旅行だった。
集まったメンバーはあの飲み会でいたメンバーばかりだった。
ミサは早速先輩に話しかけにいっている。
先輩とは順調に距離を詰めていたミサだが、夏休みにほとんど会えなかったらしい。ひさびさに先輩に会えて嬉しそうだった。上手くいけばこの合宿で付き合いそうだな。
2人を見ていてそんな感じがした。
…数分後、参加メンバーの20名が揃った。しかし、みんななかなかバスに乗ろうとしなかった。
「どうしたんだろう?」と思っていると、
「遅くなってすみません。」
 聞き覚えのある声がした。
ふいに前をみると、そこには、あの金髪の智昭がいた。
え、なんで?なんで?なんで?私はパニックで、
「…え、なんでいるの?」と心の声が漏れてしまった。
「お金足りなかったんだけど。ばぁちゃんが、合宿代出してくれたんだ。」
彼は嬉しそうに笑って言った。
その顔を見て自分の胸が高鳴るのがわかった。
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