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全てを消し去る漆黒の力

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 翌日、俺の部屋に学は遊びに来ていた。

 接客用のフカフカの灰色ソファーに腰かけ談話していく俺達。

「……守ここは慣れたか?」
「まあ、なんとかね」

 正直、魔王としての立場とかまだ色々違和感はあるが仕方がない。

「そうか。ところで守は転生した時に『特殊能力が使える事』に気づいているか?」

 守はなにか重要な話をしたいのか、足を組み直す。

「へっ? 空飛べる以外にまだなにか出来るの?」

 実際俺は昨日、シツジイに直接指導を受け、嬉しくって空をガンガン飛びまくったからな。

(へへっ、だからもう鷹とかツバメとかより早く飛べるぜ) 

 なんとといっても機動力は早めに確保した方が色々便利だしな。

 俺のやれることから詰めていった方がいい。

(何事も基本は大事なんでね) 

「言葉で説明するより、実際見せたほうが早いか……外に出よう」
「おう!」 

 俺達は漆黒の翼を広げ、手慣れた動作で窓から飛び出し、近くのただっ広い平地まで飛んでいくことに。

 俺はふと後ろを振り返り、俺達の出ていった城を眺める。

(おー……こうやって見ると壮観だな) 

 城はごつごつとした岩場の高き山をくり抜いて作られた、ゴシック様式の白亜の天然要塞といったところか。

 漆黒の瘴気にうっすらと覆われているところがもうね……。

「なんかこの城ってさ、ドラキュラが住んでそうな雰囲気出てるよな」 
「ははっ、そうだな。それはそうとして、俺達今、魔族だからな?」

「でしたね……」 

 俺は自身の頭から生えているねじくれた固い角に触れ、しみじみとそのことを実感する。

「……よし、ここでいいか」

 俺達はほどなく飛んだいった平地に着陸する。

 周囲は靴くらいの高さに伸びた草と、程よく育った木々がまばらに生え、大きな岩が適度に散在していた場所だった。

(なるほど、周囲には建造物もないし、ここなら動物達も何故かいないしな) 

 よく見を凝らすと、粉々になった岩々が多数見られるため、学がここで色々修行した跡なのが分る。

「よし、じゃ見てろよ守?」
「お、おう!」

 素早く空手の構えをとる学。

「せいいっ!」

 学は掛け声と共に、近くにあった大人程あろう大岩に向かって素早く正拳突きを放つ!

(え? マジ? おまっ、拳壊れちゃうよ?) 

 俺の心配とは裏腹に、鈍い音を上げ大岩は粉々に消し飛ぶ!

「す、スゲー⁉」

 感嘆の声と共に、思わず拍手する俺。

「これは普通にお前も出来る芸当だ。魔族に転移して、身体能力が軒並み向上しているからな。……本当に見せたいのはこれからだ、よく見とけ⁉」
「えっ? おう!」

(え、まだなにかやるつもりか? この感じ、何処かの漫画の主人公みたいに地面を割ったりとかしないよね? ……まさかね?) 

「はあああっ!」

 何と驚いた事に、大声を上げ大きく拳を振りかぶった学の右手に何やらドス黒い球体のエネルギーらしきものが見える。

(な、なんだあれ? スッゲー禍々しいものを感じるんですけど? ……えっと、どんどん大きくなってきてますけど? なんか大気が震えて、ゴゴゴゴゴゴゴって擬音が聞こえそうな感じなんですけどっ!)
 
「うおおおおおおおおおっ!」

 学の凄まじい気合の入った声と共に、その漆黒のエネルギー体は数キロ先まで勢いよく飛んでいく!

 しばらくすると、爆弾が落ちたんじゃないかってくらいの激しい爆音と共に大気が揺れ、砂煙が舞い、草木や岩が粉々に消し飛んで行くのが見えた。

「う、うっっっっそ⁉」

 思わず絶叫し、驚く俺。

 しばらくし、砂塵が晴れ見えたその先は何も無い平らな土地になっていた……。

 そう、数キロ先にあった山々も粉々に消し飛んでしまったのである。

「う、うわあ……」

 地面が割れるレベルじゃなかったわ。

(ん? という事は俺も類似した魔王の能力が使えるんじゃ?)

 ふとそんな考えが俺の脳裏に浮かぶ。

「なあ? 俺もなんか強力な能力持っていたりする?」
「勿論、ちょっといいか?」

「あ、うん?」

 学は俺に近づき、俺の額に軽く手を添える。

「……えっ、何?」
「ふむ、お前は『魔王の漆黒の魔力を溜めて放出する能力』だな。ちなみに俺の能力は『魔王の漆黒の魔力を物理攻撃に上乗せする能力』だ」

「な、成程。ってお前何でそんなこと分かんの?」
「……お前より先に転生して色々知っているんだよ……」

 何故か明後日の方を向き、腕組みする学……。

「ああ、なーる程。ゲームあるあるだよな!」 
「そ、そうそう! ただし、強力な技ってのはそれなりにリスクと何かしろの条件があるから覚えとけよ?」

 学は再びこちらを見つめ、色々説明を続けていく。

「へっ? 例えば?」
「俺の技の場合、魔力を限界まで溜めるとさっきの技は一回しか使えない」 

「あちゃ、そうなんか。ちなみに使った後はどうなるの?」
「魔力が枯渇し、この世界の人間並みの身体スペックになる。先ほど俺が軽々と壊した大岩も当然破壊できなくなる」

「あー、ペナルティとして弱体化するわけだ……。じゃ、使いこなして自分の魔力の限界値を知っとかないとだなあ」

(成程成程、強力な技として使用制限とそれなりのリスクが当然あるわけか……。まるでゲームみたいだよなホント) 

「ふふ、流石に昔、賢者の異名を取っていただけあって賢いな?」
「へへっ、まあな。ところで魔力ってどうやって放出すんの?」

「それはな……」

 そかんなこんなで、しばらく学から手ほどきを受けた俺は、ある程度の魔力放出コントロールが出来るようになっていた。

「おおおおっ!」

 俺の気合と共に具現化された漆黒の魔力が頭上に現れる。

 東京ドームくらいの大きさの赤黒い球体、それはゆっくりと近場の山に飛んでいき全てを闇に葬り去っていく。

 それが通った後は何も残らない……無、ただの無のみ。

 その証拠に山だった場所は、巨大な球体に飲み込まれた凄惨なクレーターが残されていた。

「や、やべーなコレ……」 
「ああ。強力すぎるし、コントロールが難しそうだな」

 その凄惨さに使った自身でドン引きして青ざめる俺。

「何だよこの超巨大ブラッホールみたいな殺人兵器。こんなの使いたくねーよ!」
「そうか……。ちなみに、そんなお前の能力にピッタリな制御マジックアイテムがある。ヒツジイから貰っておけ」

(ああ、良かった! こんな全てを無にする能力なんか使いたくねーしな)

 制御アイテムの存在にほっと胸をなでおろす俺だった。
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