4 / 4
4
しおりを挟む
「あ、アレン…殿下…」
歯をガタガタと震わせ、ビリー様が扉から後退ります。
その様子にアレンちゃんが不敵に笑うと、後ろに控えていた、光り輝く馬の紋章を胸につけた五人の王立騎士も現れました。
「グラハム侯爵家も落ちぶれたな。家に泥を塗るようなバカ息子を放置しておくなんて正気じゃない。ビリー・サン・グラハム。ベルを蔑ろにして、傷をつけてタダで済むと思うなよ…。」
「で、殿下!!何か誤解しておいでです!それにこれは私たち二人の問題ですし、婚約を結んだ男女のこと、多少のいざこざはあって当然です!」
「多少のいざこざか…。ベルの腕と口から流れる血を見てもか??はあ、僕は気が長い方じゃない。お前を殺したくて仕方ないよ…。」
あ、私怪我をしていましたね…。ですが、ほんのかすり傷。
しかし、問題ないと言っても、アレンちゃんのことです。むしろ強がっていると思われるだけでしょう。
昔からアレンちゃんもサンちゃんも私に過保護なところがあって、色々と聞く耳を持ちません。
「殿下、お怒りを収め下さい。」
見かねた一人の騎士が、暴走しかけのアレンちゃんを止めに入ります。
「これが収めずにいられるか?この男はベルに害をなした。生きている理由がない。僕のベルに手を出しておいて、なんでお前は生きているんだ?」
ぼ、僕のベル。ですか…。いつもの事ながら気恥ずかしさが先行し、何もツッコメません。
騎士達はこのままでは、アレンちゃんが何をしでかすかわからないと言ったように目で合図しあっています。
「殿下、ビリー・サン・グラハムを拘束致します。」
そう言って、慌てたようにぞろりと騎士が前に出ますが、アレンちゃんが制止させました。
「しばし待て。連れて行くのは、僕がこいつを一発殴った後でだ。」
「い、一発だけですよ…。それ以上は本当に死にかねませんので…。」
良いのですか!?逆らえないオーラを出すアレンちゃんは完全に目がすわっています…。
この様子ですと、本当に死にかねませんよ。彼の拳は重いと評判ですから一発当たっただけでも致命傷でしょう。
「アレン、私はまだそいつを一発も殴ってないぞ。元凶に制裁を加えないと私の腹の虫が収まらない。」
何故かサンちゃんがそこに参戦します。ややこしくなってきました。
「サンは十分女の方を殴っただろ?ここは譲れ。」
「いやいや、私はベルの騎士だ。主人を傷付けられてそのままでいる訳にはいかないだろう?」
「いやいや、後継長女のくせに何が騎士だ。大体、僕はまだ誰も一発も殴っていない。」
「仮にも第三皇子だろ?その御身に何かあると大変だ。私の華麗な殴りを大人しく見ていて欲しい。」
「君は国の重鎮の一人娘。そちらこそ、身体を故障しては大変だ。」
「私が!」
「僕が!」
一向に譲り合う様子がない二人は、遂に取っ組み合いを始めてしまいました…。
その間にもう騎士さん達が、ビリー様と、気絶しているルリ様を拘束しています。
「殿下、サンマリア殿。あの、連れて行ってもよろしいですか?」
「「だめだ!!」」
「分かった、サン!婚約解消明けに、サンが一番にベルとデート、で譲れ!!いつもみたいに邪魔だってしない!」
「くっ!!とても良い提案だ!!」
どうやら話に決着がついたようです。アレンちゃんが、拘束されたビリー様の前まで行きます。
「本当は死んで欲しかったが、それでは社会的に殺せないからな。」
拳に力を入れる姿が目に入ります。あれは顔面を狙っているのでしょう…思わず目を瞑ります。
ーーゴスッツ!!!
もの凄く鈍く低い音がしました。
恐る恐る目を開くと、白眼をむいて鼻から血を出すビリー様が目に入ります。
私が受けた何倍もの痛みでしょう…。
首がすわっていない赤子のように、ガクリと意識を失っています。
アレンちゃんが連れてって良いよと声を掛けると、騎士の方は、殴られ血だらけになった顔を見て、おろおろとしながらも意識のないお二人を担いで出て行きました。
その場には私とサンちゃんとアレンちゃんが残されます。
「ベル…。助けるのが遅くなってすまなかった。僕はゴミだ、クズだ、ゴミクズだ…。そう、罵ってくれベル。いっそ一思いに殴ってくれても構わん。」
頬を差し出し、ぎゅっと目を閉じるアレンちゃんですが、何故殴るなんてことになるのでしょうか?寧ろ私如きの為に、助けに入ってくれたことが嬉しくて仕方ありませんのに…。
「私だってそうだ。もっと早くに助けに入れば、傷付かないで済んだはずだ…。ベル、私も殴れ。」
サンちゃんもおかしなことを言います。二人揃って私の前まで来ると正座をつきました。
王子と騎士に膝をつかせ、かなり異様な光景です。
早く殴れとばかりに頬を突き出されますが、いくら待っても殴りませんよ…。
「お二人ともお立ちください。私お二人に言いたい事があるのです。」
二人は首を傾げながらも、私の指示通り、ゆっくりと立ち上がりました。
私は私より幾分、身長の高い二人を見上げ、少し微笑んで思いっきり抱きつきました。
「私なんかの為に、体を張って助けてくれてありがとう。サンちゃん、アレンちゃん。大好きです。」
大好きが伝わるように、ぎゅっと二人を抱き締めます。
しかし、本当に私は恵まれた幸せ者です。こんなにも大切で、何者にも代え難いと思える人がいるのですから。
なんでしょうか…今になって、あの時死ななくてよかったなんて思ってしまいます。
「っ!ベル!!私も大好きだ。」
「っ、僕も大好きだ!」
三人でひっしりと抱擁し合うと、伝わってくる熱で胸の辺りがじんわりと暖かくなるのが分かります。
私の居場所はここ…。
私は、安心からなのか、疲れたからなのか、そこで意識を手放してしまいました。
歯をガタガタと震わせ、ビリー様が扉から後退ります。
その様子にアレンちゃんが不敵に笑うと、後ろに控えていた、光り輝く馬の紋章を胸につけた五人の王立騎士も現れました。
「グラハム侯爵家も落ちぶれたな。家に泥を塗るようなバカ息子を放置しておくなんて正気じゃない。ビリー・サン・グラハム。ベルを蔑ろにして、傷をつけてタダで済むと思うなよ…。」
「で、殿下!!何か誤解しておいでです!それにこれは私たち二人の問題ですし、婚約を結んだ男女のこと、多少のいざこざはあって当然です!」
「多少のいざこざか…。ベルの腕と口から流れる血を見てもか??はあ、僕は気が長い方じゃない。お前を殺したくて仕方ないよ…。」
あ、私怪我をしていましたね…。ですが、ほんのかすり傷。
しかし、問題ないと言っても、アレンちゃんのことです。むしろ強がっていると思われるだけでしょう。
昔からアレンちゃんもサンちゃんも私に過保護なところがあって、色々と聞く耳を持ちません。
「殿下、お怒りを収め下さい。」
見かねた一人の騎士が、暴走しかけのアレンちゃんを止めに入ります。
「これが収めずにいられるか?この男はベルに害をなした。生きている理由がない。僕のベルに手を出しておいて、なんでお前は生きているんだ?」
ぼ、僕のベル。ですか…。いつもの事ながら気恥ずかしさが先行し、何もツッコメません。
騎士達はこのままでは、アレンちゃんが何をしでかすかわからないと言ったように目で合図しあっています。
「殿下、ビリー・サン・グラハムを拘束致します。」
そう言って、慌てたようにぞろりと騎士が前に出ますが、アレンちゃんが制止させました。
「しばし待て。連れて行くのは、僕がこいつを一発殴った後でだ。」
「い、一発だけですよ…。それ以上は本当に死にかねませんので…。」
良いのですか!?逆らえないオーラを出すアレンちゃんは完全に目がすわっています…。
この様子ですと、本当に死にかねませんよ。彼の拳は重いと評判ですから一発当たっただけでも致命傷でしょう。
「アレン、私はまだそいつを一発も殴ってないぞ。元凶に制裁を加えないと私の腹の虫が収まらない。」
何故かサンちゃんがそこに参戦します。ややこしくなってきました。
「サンは十分女の方を殴っただろ?ここは譲れ。」
「いやいや、私はベルの騎士だ。主人を傷付けられてそのままでいる訳にはいかないだろう?」
「いやいや、後継長女のくせに何が騎士だ。大体、僕はまだ誰も一発も殴っていない。」
「仮にも第三皇子だろ?その御身に何かあると大変だ。私の華麗な殴りを大人しく見ていて欲しい。」
「君は国の重鎮の一人娘。そちらこそ、身体を故障しては大変だ。」
「私が!」
「僕が!」
一向に譲り合う様子がない二人は、遂に取っ組み合いを始めてしまいました…。
その間にもう騎士さん達が、ビリー様と、気絶しているルリ様を拘束しています。
「殿下、サンマリア殿。あの、連れて行ってもよろしいですか?」
「「だめだ!!」」
「分かった、サン!婚約解消明けに、サンが一番にベルとデート、で譲れ!!いつもみたいに邪魔だってしない!」
「くっ!!とても良い提案だ!!」
どうやら話に決着がついたようです。アレンちゃんが、拘束されたビリー様の前まで行きます。
「本当は死んで欲しかったが、それでは社会的に殺せないからな。」
拳に力を入れる姿が目に入ります。あれは顔面を狙っているのでしょう…思わず目を瞑ります。
ーーゴスッツ!!!
もの凄く鈍く低い音がしました。
恐る恐る目を開くと、白眼をむいて鼻から血を出すビリー様が目に入ります。
私が受けた何倍もの痛みでしょう…。
首がすわっていない赤子のように、ガクリと意識を失っています。
アレンちゃんが連れてって良いよと声を掛けると、騎士の方は、殴られ血だらけになった顔を見て、おろおろとしながらも意識のないお二人を担いで出て行きました。
その場には私とサンちゃんとアレンちゃんが残されます。
「ベル…。助けるのが遅くなってすまなかった。僕はゴミだ、クズだ、ゴミクズだ…。そう、罵ってくれベル。いっそ一思いに殴ってくれても構わん。」
頬を差し出し、ぎゅっと目を閉じるアレンちゃんですが、何故殴るなんてことになるのでしょうか?寧ろ私如きの為に、助けに入ってくれたことが嬉しくて仕方ありませんのに…。
「私だってそうだ。もっと早くに助けに入れば、傷付かないで済んだはずだ…。ベル、私も殴れ。」
サンちゃんもおかしなことを言います。二人揃って私の前まで来ると正座をつきました。
王子と騎士に膝をつかせ、かなり異様な光景です。
早く殴れとばかりに頬を突き出されますが、いくら待っても殴りませんよ…。
「お二人ともお立ちください。私お二人に言いたい事があるのです。」
二人は首を傾げながらも、私の指示通り、ゆっくりと立ち上がりました。
私は私より幾分、身長の高い二人を見上げ、少し微笑んで思いっきり抱きつきました。
「私なんかの為に、体を張って助けてくれてありがとう。サンちゃん、アレンちゃん。大好きです。」
大好きが伝わるように、ぎゅっと二人を抱き締めます。
しかし、本当に私は恵まれた幸せ者です。こんなにも大切で、何者にも代え難いと思える人がいるのですから。
なんでしょうか…今になって、あの時死ななくてよかったなんて思ってしまいます。
「っ!ベル!!私も大好きだ。」
「っ、僕も大好きだ!」
三人でひっしりと抱擁し合うと、伝わってくる熱で胸の辺りがじんわりと暖かくなるのが分かります。
私の居場所はここ…。
私は、安心からなのか、疲れたからなのか、そこで意識を手放してしまいました。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(7件)
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
⬜︎小説家になろう様にも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
えー なんですと❓
あの時って 何をしてくれたのかな? グズさん達❗️
じっくり聞かせていただきたいものです!
それが 出会い 馴れ初めでしょうか?
タイミング合わず 宝珠ベル嬢に傷 それは! 反省ですね。
ザマ〜足りないかと それにしても 親は おやおや? 何か狙いがあったのか 屑の親は馬鹿なのか?
ワクワクですね〜
ご感想ありがとうございます。
ザマ〜はまだ少し続いたりしますので、乞うご期待を!
お馬鹿さんの両親も近頃登場予定です。
ビリー終わったな……
ご感想ありがとうございます。
ビリー君、やらかしました。
新しいヒーロー(本物?)登場!しかも、ちゃん付け!
幼馴染みとか?
ご感想ありがとうございます。
新キャラ追加でアレン君です!彼にも沢山活躍してもらう予定です!