根暗な侯爵が結婚して幸せな家庭をつくるまでの話

ハシモト

文字の大きさ
1 / 1

1

しおりを挟む

「次ティティアに近づいてみろ殺してやる…」

そう物騒に吐き捨てる少年はクレメル。長い黒髪に黄金の瞳は知的で魅力があるものの、片目は前髪で隠れており、眼鏡をかけているからか野暮ったさは拭えない。

クレメルはチッと舌打ちをすると、ポケットに両手を突っ込み不機嫌そうにパーティホールに戻った。

「メル~~!!どこ行ってたの~!」

 パタパタと駆け寄るのは金髪碧眼の派手目な容姿の少女。

「ものすごいデカイ虫がいたから追い払ってたんだよ…てか、メルってやめてくれる?」

「メルも私の事ティティって言うくせに…」

「な…っ!お、俺は二人でいる時しか言ってないじゃん!」

「え?二人の時ならいいの?なんでここじゃダメなの??」

「~~っもぉ~!ウザっ!君のそういうトコまじムカつく」

頭をガシガシを掻いて苛立ちを見せるクレメルに、しばらく疑問符を浮かべるティティアだったが、そんな諍いはすっかり忘れたかのようにパーティ会場での出来事を話し始めた。

「んね、メル…私って不細工なのかな?」

「はぁ?何でそう思うわけ?」

「分かんない??令息令嬢、誰も近寄ってこないんだよ?わたし一応、伯爵家の娘なのに…考えられる理由なんて私の顔に問題があるとしか…」

(本気で言ってるのかコイツ…)

一般的な目から見てもティティアの容姿はかなり整っている。
まだ、あどけなさは残るがあと何年かすれば傾国と謳われたっておかしくない。

しかしそんな事、口が裂けても言えたってしないだろう。

「……べ、別に見れない顔じゃない。ま、まぁ、俺の顔よりは酷くないでしょ」

「メルはカッコいいよ」

「……は?」

「髪で顔の右半分隠してアレ、見えないようにしてるんだろうけど、垂れ目で優しそうだし、髪の毛サラサラだし…メルが自分の見た目嫌いなの知ってるけど、私は──」

「そこまでっ…!それ以上は、ヤメテくんない…???」

クレメルはティティアの口を自分の手で覆った…と思ったら直ぐに引っ込めた。

その一連の流れに、理解できないと首を傾げるティティアはクレメルの心情など一ミリも分からないのだろう。

クレメルの少し骨張った手にティティアの柔らかな唇が触れたのだ。
たったそれだけの事が彼にとっては刺激的で恥ずかしいことなのである。

元々、気質は根暗で内向的。人との接触自体好まないクレメルである。
真逆と言っていい性質を持つティティアにいろんな面でドキドキしてしまう。

他の異性であれば、こんな気持ちにはならいだろう。
そもそも、こんな広い世界に連れ出してくれやしなかった筈だ。

「メル、ちょっと様子おかしくない?体調悪いの?」

「い、いや、大丈夫」

「でも目の下も真っ黒だし、顔の色も悪いよ」

「それはいつものこと…」

「私水と、食べられそうなもの取ってくるね」

そう言うと、ティティアは返事も聞かずに人混みの中に入って行ってしまった。

(はぁ、情けない)

深いため息をついて、俯きがちだった顔を上げると、げっ!と声が出た。

「こんにちは、モグラさん?相変わらず辛気臭い顔ですね。」

「…」

「無視ですか。つれませんね」

「…」

「好きな子に告白する勇気が持てず、周りを牽制するだけで一杯いっぱいのクレメr」「マジで黙れしゃべんな。本当お前キライ」

ニコニコと嘘くさい笑いを浮かべる少年は、先程までティティアが座っていた席に図々しくもドスリと腰掛けた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

私は本当に望まれているのですか?

まるねこ
恋愛
この日は辺境伯家の令嬢ジネット・ベルジエは、親友である公爵令嬢マリーズの招待を受け、久々に領地を離れてお茶会に参加していた。 穏やかな社交の場―になるはずだったその日、突然、会場のど真ん中でジネットは公開プロポーズをされる。 「君の神秘的な美しさに心を奪われた。どうか、私の伴侶に……」 果たしてこの出会いは、運命の始まりなのか、それとも――? 感想欄…やっぱり開けました! Copyright©︎2025-まるねこ

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

私だけが赤の他人

有沢真尋
恋愛
 私は母の不倫により、愛人との間に生まれた不義の子だ。  この家で、私だけが赤の他人。そんな私に、家族は優しくしてくれるけれど……。 (他サイトにも公開しています)

魔女見習いの義妹が、私の婚約者に魅了の魔法をかけてしまいました。

星空 金平糖
恋愛
「……お姉様、ごめんなさい。間違えて……ジル様に魅了の魔法をかけてしまいました」 涙を流す魔女見習いの義妹─ミラ。 だけど私は知っている。ミラは私の婚約者のことが好きだから、わざと魅了の魔法をかけたのだと。 それからというものジルはミラに夢中になり、私には見向きもしない。 「愛しているよ、ミラ。君だけだ。君だけを永遠に愛すると誓うよ」 「ジル様、本当に?魅了の魔法を掛けられたからそんなことを言っているのではない?」 「違うよ、ミラ。例え魅了の魔法が解けたとしても君を愛することを誓うよ」 毎日、毎日飽きもせずに愛を囁き、むつみ合う2人。それでも私は耐えていた。魅了の魔法は2年すればいずれ解ける。その日まで、絶対に愛する人を諦めたくない。 必死に耐え続けて、2年。 魅了の魔法がついに解けた。やっと苦痛から解放される。そう安堵したのも束の間、涙を流すミラを抱きしめたジルに「すまない。本当にミラのことが好きになってしまったんだ」と告げられる。 「ごめんなさい、お姉様。本当にごめんなさい」 涙を流すミラ。しかしその瞳には隠しきれない愉悦が滲んでいた──……。

処理中です...