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プロローグ
しおりを挟むくすんだ銀灰色の髪に生気のない真紅の瞳。病的に白い肌と痩せこけた頬。
アナスタシオは手鏡に映る自分の頬をひと撫ですると顔を歪めて手鏡を壁に投げつけた。
ガシャンと音を鳴らして床に落ちた手鏡は中央からヒビが入り、辺りに小さなガラスの破片が散らばる。
「甘い期待ばかりして…本当、本当に馬鹿みたい……」
頬を一本の涙が伝った。
死に損ない、生き恥、王家の汚点、たくさんの誹謗中傷を浴びてきたけれど
『まだ生きてたのか…』
冷たい声が脳に反復した。
お父様の口からその言葉だけは聞きたくなかった。
ヴィル様の髪を優しく撫でるその手も、リサ様を抱き上げ朗らかに微笑む眼差しも、何一つとして私に向けてくれることは無かった。
いつか認めてもらえる日が必ず来るのだと、体を崩しながら、血を吐きながら、ペンを握って、ステップを踏んで、でも、それも、
全ては無駄な努力だったのだ。
何一つとして報われる事は無かった。
『もう、長くはないでしょう』
主治医とメイドの会話が少し開いた扉の向こうから聞こえた。
医者の気遣う声と、メイドの淡白な声はだだっ広い私の部屋によく響いた。
「…また、死ぬのね、私」
─── それなら
アナスタシオはベットからゆっくりと体を降ろすと、地面に腕をつきながら投げ割った手鏡の前まで這っていった。
「…お前は本当に馬鹿ね」
ヒビの入った鏡に映る自分に語りかける。
「…もし、、次があるなら、」
ヒビの入った鏡のひとかけらを手に取る。
「何者にも囚われないで───」
アナスタシオは自身の胸に鋭利なガラスの破片を突き立てた。
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