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おわりの前に始まりを。
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「きゃああああああ。」
聖女と呼ばれているこの学園唯一の平民の少女が、何者かに突き飛ばされ階段を転げ落ちている。そして当然ながらその階段の上に立つ人物が犯人である。その人物とは、
この私、伯爵令嬢アリスティアだ。
全ての始まり、
10年前、アリスティア6歳。
これまでの私はメイド達に暴力を振るい、嫌いな食べ物は地面に投げ捨て、言うことを聞かない使用人はその瞬間全てクビにするなどそれはそれは傍若無人な振る舞いを繰り返していた。
しかしある日高熱を出して生死の淵を彷徨っていた私の脳内に突如、前世の私が現れて走馬灯のように流れる過去の映像と共に語り始めた。
そこでの私は仕事に追われるごくフツーの成人女性だった。気も休まらない日々を送る私に心配した妹が
「これだったらゲーム苦手なお姉ちゃんでも気軽に楽しめるんじゃないかな。」
ってゲーム機と一緒に1つのソフトを貸してくれた。それこそが、私の来世であるあなたが生きる世界と全く同じ世界が舞台の乙女ゲーム『繋げ!愛のマギア』だったの。
正直私は乙女ゲームなんて1ミリも興味がなかったけれど、この作品は主人公の聖女がとっても頑張り屋で純粋なのに、貴族令嬢達や急に担ぎ上げられた聖女を妬む教会のシスター達に嫌な思いをさせられるの。それでも負けない聖女ちゃんを応援したくなって何とか幸せにしようとしていたらつい全ルート攻略してしまったのよね。
特にイライラしたシーンは悪役令嬢アリスティアが婚約者のルイスと距離を縮める聖女を妬んでいじめを繰り返していたところね。あんなことばかりしてたらルイスにもみんなにも見放されるって普通わからなかったのかしら。けど断罪されて国外追放を言い渡された時の彼女の表情のスチルは本当にスッキリしたわ。
……もうわかってると思うけれど、この悪役令嬢アリスティアは未来のあなたよ。
でもここはゲームじゃなくて現実。
だからあなたは、未来の私はきっと変われる。
どうか優しい子になって。
目が覚めると目が真っ赤になっていた。どうやら寝ている間に泣いてしまっていたようだ。第三者の目線から自らの振る舞いを見つめ直すことで私は自分がどれだけ酷い人間だったのか気づくことができた。あのゲームという作品で私は悪役令嬢と呼ばれていたけれど、本当に的確な言葉だわ。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「お食事にしますか?」
「水分補給もいたしましょう。」
「まあ、目が真っ赤ですわ。すぐに目元を冷やしますからね。」
メイド達がテキパキと動き始める。そのなかでも、素早く私の目に濡れタオルを添えてくれたメイドの手は震えていた。今まで沢山いじめてきたのだから当然よね。
「今までいじめてごめんなさい。わたくし、おねつにかかったときに天国の神さまに怒られてしまったの。いい子にならないとばつがくだるのですって。」
メイド達はぴたりと手を止め私を凝視する。
「だから、ごめんなさい。わたくし今からいい子になります。だから、その……。」
許してほしい、とは言えなかった。物を投げつけて殴って嘲笑してきた人間を反省したからって許せるだろうか?いや、無理に決まっている。これからを変えられるとしてもこれまでやってしまったことは変えられない。
「お嬢様!!」「なんてこと……!」「ううこれが成長なのですね。」「早く旦那様達にお伝えしないと。」
けれどメイド達の反応は予想とは全く違った。
彼女達は満面の笑みで私の前に駆け寄る。
「どうして?」
「お嬢様はまだ6歳ですからね。わがまま放題でも全然不思議じゃないんですよ。まあ、お嬢様の場合ちょっと度がすぎましたけれど。」
「そうそう、これから変わっていけば良いのですよ。」
わちゃわちゃと明るく私に接するメイド達を前にして私もつられて笑顔になる。
「お嬢様は嘲笑う顔よりそっちの方が何倍も素敵です!」
「ありがとう。」
まずは第一歩、私は明るい未来へと足を進めた。
聖女と呼ばれているこの学園唯一の平民の少女が、何者かに突き飛ばされ階段を転げ落ちている。そして当然ながらその階段の上に立つ人物が犯人である。その人物とは、
この私、伯爵令嬢アリスティアだ。
全ての始まり、
10年前、アリスティア6歳。
これまでの私はメイド達に暴力を振るい、嫌いな食べ物は地面に投げ捨て、言うことを聞かない使用人はその瞬間全てクビにするなどそれはそれは傍若無人な振る舞いを繰り返していた。
しかしある日高熱を出して生死の淵を彷徨っていた私の脳内に突如、前世の私が現れて走馬灯のように流れる過去の映像と共に語り始めた。
そこでの私は仕事に追われるごくフツーの成人女性だった。気も休まらない日々を送る私に心配した妹が
「これだったらゲーム苦手なお姉ちゃんでも気軽に楽しめるんじゃないかな。」
ってゲーム機と一緒に1つのソフトを貸してくれた。それこそが、私の来世であるあなたが生きる世界と全く同じ世界が舞台の乙女ゲーム『繋げ!愛のマギア』だったの。
正直私は乙女ゲームなんて1ミリも興味がなかったけれど、この作品は主人公の聖女がとっても頑張り屋で純粋なのに、貴族令嬢達や急に担ぎ上げられた聖女を妬む教会のシスター達に嫌な思いをさせられるの。それでも負けない聖女ちゃんを応援したくなって何とか幸せにしようとしていたらつい全ルート攻略してしまったのよね。
特にイライラしたシーンは悪役令嬢アリスティアが婚約者のルイスと距離を縮める聖女を妬んでいじめを繰り返していたところね。あんなことばかりしてたらルイスにもみんなにも見放されるって普通わからなかったのかしら。けど断罪されて国外追放を言い渡された時の彼女の表情のスチルは本当にスッキリしたわ。
……もうわかってると思うけれど、この悪役令嬢アリスティアは未来のあなたよ。
でもここはゲームじゃなくて現実。
だからあなたは、未来の私はきっと変われる。
どうか優しい子になって。
目が覚めると目が真っ赤になっていた。どうやら寝ている間に泣いてしまっていたようだ。第三者の目線から自らの振る舞いを見つめ直すことで私は自分がどれだけ酷い人間だったのか気づくことができた。あのゲームという作品で私は悪役令嬢と呼ばれていたけれど、本当に的確な言葉だわ。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「お食事にしますか?」
「水分補給もいたしましょう。」
「まあ、目が真っ赤ですわ。すぐに目元を冷やしますからね。」
メイド達がテキパキと動き始める。そのなかでも、素早く私の目に濡れタオルを添えてくれたメイドの手は震えていた。今まで沢山いじめてきたのだから当然よね。
「今までいじめてごめんなさい。わたくし、おねつにかかったときに天国の神さまに怒られてしまったの。いい子にならないとばつがくだるのですって。」
メイド達はぴたりと手を止め私を凝視する。
「だから、ごめんなさい。わたくし今からいい子になります。だから、その……。」
許してほしい、とは言えなかった。物を投げつけて殴って嘲笑してきた人間を反省したからって許せるだろうか?いや、無理に決まっている。これからを変えられるとしてもこれまでやってしまったことは変えられない。
「お嬢様!!」「なんてこと……!」「ううこれが成長なのですね。」「早く旦那様達にお伝えしないと。」
けれどメイド達の反応は予想とは全く違った。
彼女達は満面の笑みで私の前に駆け寄る。
「どうして?」
「お嬢様はまだ6歳ですからね。わがまま放題でも全然不思議じゃないんですよ。まあ、お嬢様の場合ちょっと度がすぎましたけれど。」
「そうそう、これから変わっていけば良いのですよ。」
わちゃわちゃと明るく私に接するメイド達を前にして私もつられて笑顔になる。
「お嬢様は嘲笑う顔よりそっちの方が何倍も素敵です!」
「ありがとう。」
まずは第一歩、私は明るい未来へと足を進めた。
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