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18.幻のモフモフ
しおりを挟むガサガサッ。
お。今日は葉っぱを踏む音が大きいぞ。
大きめなモフモフが来たのかな~。
満面の笑顔で振り返ったあたしの目に飛び込んできたのは淡い青銀色。
え?森に氷山??
・・なんてことがあるわけもなく。
そこにいたのは愛しのモフモフではなく淡い青銀色の髪を持った人でした。
いや、ある意味モフモフだ。
だって耳と尻尾があるもん。
え?人間に耳と尻尾って・・・獣人キターーー!!!
ネリアさんから話を聞いて獣人やエルフが存在してることは知ってたけどまさか会えるなんて!
心の中で大歓喜したのも一瞬。
同時にとある話も思い出してその熱は一気に冷めた。
それは人間が獣人やエルフを虐殺したという遠くない過去の残酷な話。
数代前のどこぞのアホな王様が「人間以外の種族は認めない!」と言い出したのをきっかけに、世界中を巻き込んだ大規模な討伐に発展。
もちろん獣人やエルフのほうが人間より身体能力とか魔法とかはるかに優れてるから有利だったんだけど。
多勢に無勢。人間は数で圧倒したのよ。
獣人もエルフもその他の種族も子供が生まれにくくて元々が少数だったのに、何年も続いた迫害によって今では幻と言われるほどに人数が減ってしまった。
ギルドで20年以上仕事してるギルマスでさえ冒険者をしている獣人さんと1回しか会ったことがないって言ってたわ。
冒険者登録をしてるのも『孤高の青銀』って言われてるSクラス冒険者のその人だけみたい。
人間の前に姿を現さない。
そんなの当たり前だよね。
その時代を生きた人間はもういないけど。
長命種の獣人やエルフたちはその時代の残酷な記憶を鮮明に持ったまま今も生き続けているんだから。
中性的な美貌の中の静かに凪いだ瞳。
透きとおるようなアイスブルーのそれを切ない想いで見つめた。
・・あたしこの場を去ったほうがいいよね。
たぶん人間を視界に入れるのも不愉快だろうし。
うん。そうしよう。
荷物をまとめて早く森から出なくちゃ。
この人の視界に長居しちゃダメだ。
手に持っていたお握りをバスケットに戻そうとしたそのとき。
きゅー。
ん?鳴き声?
いつもお弁当をお裾分けしてる子たちかな?
お握りを置いていこうかとキョロキョロ辺りを見回してみたけど。
何もいない。
気のせいかな。
「・・・・・・・た・・・」
ん?前から?
数メートル先に立っている淡い青銀色の髪の獣人さんに目を向けると。
「・・・・お腹・・減っ・・た・・」
蚊の鳴くようなひそやかな声。
あ!お腹の音!
あの可愛らしい"きゅー"はお腹の鳴る音だったのか!
あたしの地響きみたいな音と全然ちがうからピンとこなかったよ。
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