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2.巨大な門とキラキラ王子様
しおりを挟む私はぽかーんと口を開けて見上げていた。
「うわー・・これ何メートルあるんだろ・・」
目覚めた地点からこの城塞都市みたいなところまで3時間強かかったのも予想外だったが、10階建てマンションくらいの高さの門や城壁はさらに予想外だった。
かなり大きな街だろうとは思っていたけどいわゆる王都なのかもしれない。
「ぷっ・・口の中に虫が入っちゃうよ。」
近くから聞こえた声に驚いて振り向くと・・あれ?なんだこれ?青い壁?
「ふふっ。もっと上。」
目線を上げるとかなり高い位置にキラキラした麗しい笑顔が。
ふんわりウェーブしたやわらかそうな金髪にうすい水色の瞳。
かっちりした服とブーツにマントはスカイブルー。
・・なんだこのキラキラ王子様は。
ほとんど真上を見上げてさらに口をぱかーっと開けた私にさらに吹き出す美形さん。
「ホント危なっかしい子だなぁ。悪い人に攫われちゃうよ?」
え?そんなに治安よくないの!?
慌てて周りをキョロキョロするも怪しげな人影は見当たらない・・と思う。
ってかそーゆーのサッパリわかりません。
なんてったって平和ボケしてる日本人ですから。
「例えばの話。無防備すぎて心配になっちゃうよ。」
キョロキョロしたり首を傾げたりしている私を面白そうに見ていた美形さんが顔を覗き込んできた。
「王都に来たのは初めてみたいだね。もしかしてギルドに登録しに来たの?」
「あ、はい!そうなんです。田舎から出てきたばかりで。」
美形さんの話にうまく合わせる。
この世界のこと知らないから迂闊なことは喋れない。
ド田舎から出てきたばかりの世間知らずな女の子で話を合わせよう。
「そうなんだ。ここは王都だし滅多なことはないと思うけど、何か気になることがあったら巡回してる騎士に頼るんだよ。」
「はい!ありがとうございます!」
16歳らしく元気に答えてにっこり笑ってみる。
笑顔は万国共通にして最強のコミュニケーションツールですもの。
「あ、あぁ。いい返事だ。ギルドは門を入ったらすぐ分かるよ。入って右側に白っぽい大きな建物があるから。」
美形さんはなぜか少し慌てたように早口で説明してくれる。
綺麗なアクアマリンのような目をしっかり見ながらふみふむと頷く。
話すときは相手の目をちゃんと見ないと失礼ですからね。
「え、えーと。あとギルドカードを持っていない人達は、門の入口のところで銀貨5枚の支払と水晶に手を当ててることが義務付けられてるから。」
「犯罪歴とか見るんでしたっけ?」
「そうだよ。身分証を持ってないからね。危険人物じゃないかをそれで判断させてもらってる。」
異世界トリップ小説の知識大活躍!
心の中でドヤ顔しつつ美形さんにぺこりとお辞儀する。
「いろいろとアドバイスありがとうございます。何にも分からなくてちょっぴり不安だったので、とっても助かりました。」
「どういたしまして。僕は青騎士団のヨルン=ハイネス。サラサラの黒髪が素敵な君の名前は?」
ん?なんか急に調子戻った?
最初のキラキラ王子モードが復活したぞ。
「ユミ=シトー(紫藤 夢実)です。よろしくお願いします。」
そしてもう一度深々と頭を下げる。
マナー教室で学んだ美しいこのお辞儀を見よ!
「ははっ。こちらこそよろしくね。」
なぜか楽しそうに笑う美形さん・・もといヨルンさん。
ホントものっすごい美形だな~モテまくってるんだろうな~。
こんな冷静でいられるのは年の功ゆえ。
見た目どおりの16歳だったら大パニック状態でろくに喋れなかったと思う。
40オーバーにもなるとあまり物事に動じなくなるのです。ハイ。
「何か相談したいこととかあったら遠慮なく青騎士団の詰所においで。じゃまたね。」
そう言って私の頭を軽くなでたヨルンさんは颯爽と門の中に入っていく。
いちいち絵になる人だ。
順番待ちしてる女性たちがみんな頬をピンク色にしてヨルンさんを見送ったあと、私のことを睨みつけてきた。
予想通りの行動ありがとう。
突き刺さるような視線を避けるようにそそくさと列の最後尾に並ぶ。
門番してる人が緊張した面持ちでヨルンさんに敬礼してたけどもしかして騎士団のお偉いさん?
しかもあのかくしきれない育ちの良さってお貴族様っぽい。
身分高くて地位があって王子様・・うん近寄っちゃいけない物件だね。
めんどくさそうな匂いがぷんぷんです。(実際はシトラス系のいい香りだったよ!)
まぁ心配する必要もないだろうけど。
お貴族様ならそうそう再会する機会もないでしょ。避けるし。
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