魔物になろうズ！

ゴブリンの吉田さん

　嘘ではない事はあった。



　たしかにワンクリックでOKだったのだ。





　検索をかけてボタンをクリックしたとたんに。

　俺は異世界に転生だか転移だかしていた。



　転生だか転移が微妙なのは、いまの俺の姿がよくわからないからだ。

　しかし肌の色がメッチャ白い。

　というか異常だ。



　これが俺の今の地肌の色なのだが。もちろん元は日本人的な肌だった。

　そして見える範囲で自分の服装をチェックすると。

　PCの前にいた時の俺の服装とは違う、なんだか大昔の中世貴族だかが着ていそうなちょっと恥ずかしいデザインの衣装だった。



「……マジかよ」


　スレ主すげーーーーーー！


　とは俺は思わなかった。

　たしかに凄い。



　そして出来る事ならば異世界で俺ＴＵＥＥＥ！　したい人も沢山いるだろう。

　俺もそんな事を日々夢見てしまう哀れな人なのかも知れない。


　しかし。

　マジで、いきなり異界に放り出されて喜ぶべきなのか！？



「……本当にＴＵＥＥＥ出来るのだろうか……」



　そう不安を口走った俺の視界には。

　気がつくと、いかにもゴブリンというような感じの生き物がいて。

　そしてそのゴブリンさんはこちらをじっと見つめているのだった……。



　ＴＵＥＥＥ設定とか確定なら、俺は高笑いしながらゴブリンを蹴散らす選択があったかもしれないが。

　そんな保証は無く。


　俺はつい

「こ、こんにちは」

　と気弱に挨拶するくらいしかできなかった。



「こんにちは」

　丁寧にあいさつを返してくるゴブリンさん。そしてゴブリンさんは俺に言う。

「あんたのソレ。ヴァンパイアって奴か……勝ち組だな」

「え？」

「そうだよ。俺もあの異世界スレから飛ばされてきたクチさ」

「……」

　転生モノのファーストコンタクトって、女神様とか希望だった俺はショックを受けていた。



「吉田だ、よろしくな」

　ゴブリンの吉田さんが名乗る。



「……えっと。佐嶋です。」

　俺もついリアネームで名乗ってしまった。