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7月と顔のない肖像画
7月と顔のない肖像画 6
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アトリエを出たわたし達は再びクルトの別荘へと向かっていた。
先ほど描いてもらった似顔絵を広げながらクルトが呟く。
「どうして彼は肖像画を描くのをやめたんだろうな。実のところ、俺は彼以外の人物がエミール・シュナイトの肖像画を描いたんじゃないかと疑っていた。それを隠すために顔を塗り潰したんじゃないかとも。あの人が事故の影響で絵が描けないという話も聞いた事があるし。でも、実際はこんなに素晴らしい似顔絵を描く事だってできる。それなのになぜ……」
なるほど。クルトがあの場で似顔絵を描いて貰ったのは、ヴェルナーさんが本当に絵を描けるかどうか確かめるためだったのか。
「きれいな絵ですよね。それに、ヴェルナーさん本人も、少し怖そうでしたけど、すごく素敵な方でしたね」
わたしが溜息混じりに呟くと、クルトがぎょっとしたような顔をする。
「なんだお前、ああいうタイプが好みなのか?」
「うーん、なんて言ったらいいのかな。あの人の持っている独特な雰囲気が気になるというか……なんだか繊細で神秘的で、ちょっと神経質そうなところが、いかにも『芸術家!』って感じがしませんか?」
「お前と正反対」
「何か言いました?」
「いや、別に……そういえば彼は女性からの人気が特に高かったそうだが、もしかすると肖像画だけじゃなく、彼自身が目当ての人間も大勢いたのかもしれないな」
「絵を描いている時の真剣な姿もかっこよかったですもんね。わたしもヴェルナーさんの描いた肖像画を見てみたいです。こんな似顔絵を描けるくらいだから、肖像画もきっと素敵なんだろうなあ……あ、それにあの人、なんだか石鹸みたいないい匂いがしました。朝からお風呂に入ったんですかね? 綺麗好きですね」
「お前も見習ったほうがいい」
その言葉にぎくりとする。どういう意味だろう……。
動揺を押し隠しながら反論する。
「な、何を言ってるんですか。わたしだって、できる事なら毎日お風呂に入りたいと思ってますよ? あー、わたしが男の子だったなら学校でもお風呂に入れるんだけどなー。女だから仕方ないですよねー。いやー、ほんと残念です」
「嘘つくなよ。お前、今朝風呂に入るのを嫌がってたそうじゃないか。メイドが言ってたぞ」
「うわあ、そんな事まで把握してるんですか? 乙女の入浴事情に干渉するなんてデリカシーのない事をよく平気でできますね。破廉恥です! 破廉恥の極みです! クルトの破廉恥! 破廉恥貴族!」
「人聞きの悪い言葉を連呼するのはやめろ。メイドが俺に報告してくれたのは、お前の事を完全に男だと思っていたからだ。でなけりゃ乙女の入浴事情なんてデリケートな問題を俺に暴露するわけがないだろ。よかったじゃないか。同性に対して男で通用するって事が証明されたぞ」
「え……」
わたしは思わず考え込んでしまう。
確かに自分が女だとばれていない事は好都合だが、それはそれでなんだか複雑な気分なのだが……。
そんな中、ふと視線を感じて隣を見上げると、クルトが笑いを堪えるように片手で自分の口を覆っていた。
もしかして、悩んでいるわたしの姿を見て面白がっている……?
やっぱりこの人、あんまり性格よくないのかな……。
「まあ、素敵ねえ」
似顔絵を手にしたロザリンデさんが感嘆の声を上げる。
「でも、全然似てない」
紅茶のカップを持ち上げながらクルトが口を挟む。
わたしたちは、一旦クルトの別荘へと戻った後で昼食を頂いて、それから今朝と同じようにテーブルを囲んでいる。フェルディオ・ヴェルナー氏のアトリエでの出来事を、ロザリンデさんに報告していたのだ。
結局、黒く塗り潰された肖像画の真相についてはいまだ判明していないが、ロザリンデさんはにこにこと頷きながら聞いてくれた。
「それにしても綺麗ねえ。私も機会があればヴェルナーさんに似顔絵を描いて頂きたいわ」
「わかった。今から俺が頼んでくる」
クルトが立ち上がりかけたので、ロザリンデさんは手にしていた絵をテーブルに置いて、慌てたように両手を顔の前で振る。
「いやだわクルト。冗談よ、冗談」
「本当に?」
「本当よ。だから座って? ね?」
「そうか? それならいいんだが……」
もしかしてロザリンデさんの【お願い】って、クルトが勝手に勘違いしたり拡大解釈してる部分もあるんじゃ……。
わたしはテーブルに置かれた似顔絵を手元に引き寄せる。
さっきはクルトが失礼な事を言うから思わず言い返したけれど、正直なところこの似顔絵は自分に似ていないと思う。髪形や服装は簡単ながらも特徴を捉えているが、肝心の顔が……もはや別人のように整いすぎている。ちょっと大人びてもいるし。クルトの言った通り、ヴェルナーさんが気を遣って美化してくれたんだろうか。
いや、それとも今まで自覚がなかったけれど、実はわたしって、こんなにきれいだったのかな。人体の専門家である肖像画家だからこそ、ヴェルナーさんはわたしの真の美しさに気付いたのかもしれない。なんて……。
でも――
わたしは自分の左目の下の辺りに人差し指で触れる。この絵にはそこにあるはずのほくろも描かれていない。普通なら、こんな判りやすい顔の特徴は、髪型や服装よりも優先して描くと思うんだけれど……。
描く気がなかった? 単に見落としただけ? それとも、他に理由があって敢えて描かなかった……?
色々な可能性について考えていると、メイドが紅茶のおかわりを淹れてくれた。それを見て、クルトが何かに気づいたように口を開く。
「ねえさま、新しいメイドを雇ったのか?」
「あら、わかった? 今週からこの家で働いてもらっているフレデリーケよ。少し前にひとり辞めてしまったから、その代わりに、ね」
フレデリーケと呼ばれたメイドは、軽く腰を落として挨拶する。その様子を見て、ロザリンデさんは首を傾げる。
「そういえばこの子、ユーリくんに少し似ているかもしれないわね」
言われてみれば、髪の色や背格好が近い。もちろん、目の色や顔の造形に違いはあるが、年齢もわたしとそんなに変わらないような気がする。それなのにしっかり働いていて偉いな。
「二人が同じ格好をしていたら、見分けがつかないかも。ふふふ」
「まさか。さすがにそれはないだろう。顔だちでわかる。目の色だって違うし」
二人の会話にはっとしたわたしは勢いよく立ち上がる。その拍子に音を立てて椅子が倒れ、みんながぎょっとするが、構う事なくフレデリーケさんに近づき、その腕をつかむ。
「すみませんが、少し協力してもらえませんか?」
再びあのアトリエの、少し大きいドアの前に立つ。クルトがノックすると、今度は暫くしてドアが開き、住人であるヴェルナーさんが姿を現す。
クルトの姿を見ても、相変わらずその表情に変化はなく、黙ったまま。
「ヴェルナーさん、先ほどは失礼しました」
クルトが笑みを浮かべながら口を開く。
「……きみ達か。まだ何か?」
「実は、あなたに描いて頂いた似顔絵なんですが、少し問題がありまして」
「……問題?」
「ええ、本当に些細な事なんですが、その……ほくろが描かれていないんです」
「……ほくろ?」
「それくらい自分で描き足したらいいじゃないかと思ったんですが、こいつがどうしてもあなたに直して欲しいって聞かないもので。ほら、こいつの目の下のここ」
そう言うと、クルトは横に手を伸ばし、左目の下のあたりにひとさし指を押し付ける。
「ここなんですが、判ります? 見えますか? このほくろ」
クルトが確認するように尋ねると、暫くの間を置いて
「……ああ」
ヴェルナーさんが頷く。
「あ、あの、そんなに強く押されたら痛いです……」
「あ、すまない」
クルトは慌てたように指を離すと、ヴェルナーさんに向き直る。
「それで、大変申し訳ないのですが、先ほどの似顔絵に描き足して頂けませんか? そうすればこいつも満足すると思いますので」
ヴェルナーさんは少しの間考えているようだったが、やがて口を開くと静かな声で答える。
「……わかった。絵を貸してくれ」
似顔絵を受け取ったヴェルナーさんは、ポケットから小さな鉛筆を取り出すと、紙に素早く何か描き込み、すぐにクルトのほうへつき返す。
「……これでいいだろうか?」
絵を確認したクルトは、ゆっくりとヴェルナーさんの顔を見上げる。
「本当に、描いたんですね」
「……見ればわかるだろう?」
「その人に、ほくろはありませんよ」
わたしの声に、全員の目がこちらを向いた。クルトに、ヴェルナーさん。そしてフレデリーケさん。
わたしは今まで隠れていた建物の陰から離れて、ドアの前の三人に近づく。
「ヴェルナーさん、もうわたしの顔を忘れてしまいましたか? さっき似顔絵を描いてもらったばかりなのに」
わたしは、クルトの隣に立っていたフレデリーケさんを手で示す。
「この人はフレデリーケさん。れっきとした女性です。今はわたしの服を着て、長い髪の毛も部分的にマフラーで隠してわたしに似せてもらっています。ここに来てからずっと、クルトの隣に立っていたのはわたしじゃなくて彼女だったんですが、気がつきませんでしたか? わたし達、そんなに似てます? 目の色も違うのに?」
言いながらフレデリーケさんの隣に並んで立つ。わたしの服はフレデリーケさんに貸したので、今は朝に着ていた自分の服を身につけている。
「確かに、似たような背格好で、服や髪型まで同じなら、一度しか会っていないヴェルナーさんは、フレデリーケさんの事をわたしだと勘違いしてしまうかもしれません」
わたしはヴェルナーさんの顔を覗き込むように見つめる。
「でも、それでも不思議ですよね。どうしてフレデリーケさんの顔を見て、ありもしないほくろを似顔絵に描き足したんですか?」
ヴェルナーさんが何も答えないので、わたしは言葉を続ける。
「あなたには、ないはずのものが見えたんですか? それとも、あるはずのものが見えなかったんですか?」
先ほど描いてもらった似顔絵を広げながらクルトが呟く。
「どうして彼は肖像画を描くのをやめたんだろうな。実のところ、俺は彼以外の人物がエミール・シュナイトの肖像画を描いたんじゃないかと疑っていた。それを隠すために顔を塗り潰したんじゃないかとも。あの人が事故の影響で絵が描けないという話も聞いた事があるし。でも、実際はこんなに素晴らしい似顔絵を描く事だってできる。それなのになぜ……」
なるほど。クルトがあの場で似顔絵を描いて貰ったのは、ヴェルナーさんが本当に絵を描けるかどうか確かめるためだったのか。
「きれいな絵ですよね。それに、ヴェルナーさん本人も、少し怖そうでしたけど、すごく素敵な方でしたね」
わたしが溜息混じりに呟くと、クルトがぎょっとしたような顔をする。
「なんだお前、ああいうタイプが好みなのか?」
「うーん、なんて言ったらいいのかな。あの人の持っている独特な雰囲気が気になるというか……なんだか繊細で神秘的で、ちょっと神経質そうなところが、いかにも『芸術家!』って感じがしませんか?」
「お前と正反対」
「何か言いました?」
「いや、別に……そういえば彼は女性からの人気が特に高かったそうだが、もしかすると肖像画だけじゃなく、彼自身が目当ての人間も大勢いたのかもしれないな」
「絵を描いている時の真剣な姿もかっこよかったですもんね。わたしもヴェルナーさんの描いた肖像画を見てみたいです。こんな似顔絵を描けるくらいだから、肖像画もきっと素敵なんだろうなあ……あ、それにあの人、なんだか石鹸みたいないい匂いがしました。朝からお風呂に入ったんですかね? 綺麗好きですね」
「お前も見習ったほうがいい」
その言葉にぎくりとする。どういう意味だろう……。
動揺を押し隠しながら反論する。
「な、何を言ってるんですか。わたしだって、できる事なら毎日お風呂に入りたいと思ってますよ? あー、わたしが男の子だったなら学校でもお風呂に入れるんだけどなー。女だから仕方ないですよねー。いやー、ほんと残念です」
「嘘つくなよ。お前、今朝風呂に入るのを嫌がってたそうじゃないか。メイドが言ってたぞ」
「うわあ、そんな事まで把握してるんですか? 乙女の入浴事情に干渉するなんてデリカシーのない事をよく平気でできますね。破廉恥です! 破廉恥の極みです! クルトの破廉恥! 破廉恥貴族!」
「人聞きの悪い言葉を連呼するのはやめろ。メイドが俺に報告してくれたのは、お前の事を完全に男だと思っていたからだ。でなけりゃ乙女の入浴事情なんてデリケートな問題を俺に暴露するわけがないだろ。よかったじゃないか。同性に対して男で通用するって事が証明されたぞ」
「え……」
わたしは思わず考え込んでしまう。
確かに自分が女だとばれていない事は好都合だが、それはそれでなんだか複雑な気分なのだが……。
そんな中、ふと視線を感じて隣を見上げると、クルトが笑いを堪えるように片手で自分の口を覆っていた。
もしかして、悩んでいるわたしの姿を見て面白がっている……?
やっぱりこの人、あんまり性格よくないのかな……。
「まあ、素敵ねえ」
似顔絵を手にしたロザリンデさんが感嘆の声を上げる。
「でも、全然似てない」
紅茶のカップを持ち上げながらクルトが口を挟む。
わたしたちは、一旦クルトの別荘へと戻った後で昼食を頂いて、それから今朝と同じようにテーブルを囲んでいる。フェルディオ・ヴェルナー氏のアトリエでの出来事を、ロザリンデさんに報告していたのだ。
結局、黒く塗り潰された肖像画の真相についてはいまだ判明していないが、ロザリンデさんはにこにこと頷きながら聞いてくれた。
「それにしても綺麗ねえ。私も機会があればヴェルナーさんに似顔絵を描いて頂きたいわ」
「わかった。今から俺が頼んでくる」
クルトが立ち上がりかけたので、ロザリンデさんは手にしていた絵をテーブルに置いて、慌てたように両手を顔の前で振る。
「いやだわクルト。冗談よ、冗談」
「本当に?」
「本当よ。だから座って? ね?」
「そうか? それならいいんだが……」
もしかしてロザリンデさんの【お願い】って、クルトが勝手に勘違いしたり拡大解釈してる部分もあるんじゃ……。
わたしはテーブルに置かれた似顔絵を手元に引き寄せる。
さっきはクルトが失礼な事を言うから思わず言い返したけれど、正直なところこの似顔絵は自分に似ていないと思う。髪形や服装は簡単ながらも特徴を捉えているが、肝心の顔が……もはや別人のように整いすぎている。ちょっと大人びてもいるし。クルトの言った通り、ヴェルナーさんが気を遣って美化してくれたんだろうか。
いや、それとも今まで自覚がなかったけれど、実はわたしって、こんなにきれいだったのかな。人体の専門家である肖像画家だからこそ、ヴェルナーさんはわたしの真の美しさに気付いたのかもしれない。なんて……。
でも――
わたしは自分の左目の下の辺りに人差し指で触れる。この絵にはそこにあるはずのほくろも描かれていない。普通なら、こんな判りやすい顔の特徴は、髪型や服装よりも優先して描くと思うんだけれど……。
描く気がなかった? 単に見落としただけ? それとも、他に理由があって敢えて描かなかった……?
色々な可能性について考えていると、メイドが紅茶のおかわりを淹れてくれた。それを見て、クルトが何かに気づいたように口を開く。
「ねえさま、新しいメイドを雇ったのか?」
「あら、わかった? 今週からこの家で働いてもらっているフレデリーケよ。少し前にひとり辞めてしまったから、その代わりに、ね」
フレデリーケと呼ばれたメイドは、軽く腰を落として挨拶する。その様子を見て、ロザリンデさんは首を傾げる。
「そういえばこの子、ユーリくんに少し似ているかもしれないわね」
言われてみれば、髪の色や背格好が近い。もちろん、目の色や顔の造形に違いはあるが、年齢もわたしとそんなに変わらないような気がする。それなのにしっかり働いていて偉いな。
「二人が同じ格好をしていたら、見分けがつかないかも。ふふふ」
「まさか。さすがにそれはないだろう。顔だちでわかる。目の色だって違うし」
二人の会話にはっとしたわたしは勢いよく立ち上がる。その拍子に音を立てて椅子が倒れ、みんながぎょっとするが、構う事なくフレデリーケさんに近づき、その腕をつかむ。
「すみませんが、少し協力してもらえませんか?」
再びあのアトリエの、少し大きいドアの前に立つ。クルトがノックすると、今度は暫くしてドアが開き、住人であるヴェルナーさんが姿を現す。
クルトの姿を見ても、相変わらずその表情に変化はなく、黙ったまま。
「ヴェルナーさん、先ほどは失礼しました」
クルトが笑みを浮かべながら口を開く。
「……きみ達か。まだ何か?」
「実は、あなたに描いて頂いた似顔絵なんですが、少し問題がありまして」
「……問題?」
「ええ、本当に些細な事なんですが、その……ほくろが描かれていないんです」
「……ほくろ?」
「それくらい自分で描き足したらいいじゃないかと思ったんですが、こいつがどうしてもあなたに直して欲しいって聞かないもので。ほら、こいつの目の下のここ」
そう言うと、クルトは横に手を伸ばし、左目の下のあたりにひとさし指を押し付ける。
「ここなんですが、判ります? 見えますか? このほくろ」
クルトが確認するように尋ねると、暫くの間を置いて
「……ああ」
ヴェルナーさんが頷く。
「あ、あの、そんなに強く押されたら痛いです……」
「あ、すまない」
クルトは慌てたように指を離すと、ヴェルナーさんに向き直る。
「それで、大変申し訳ないのですが、先ほどの似顔絵に描き足して頂けませんか? そうすればこいつも満足すると思いますので」
ヴェルナーさんは少しの間考えているようだったが、やがて口を開くと静かな声で答える。
「……わかった。絵を貸してくれ」
似顔絵を受け取ったヴェルナーさんは、ポケットから小さな鉛筆を取り出すと、紙に素早く何か描き込み、すぐにクルトのほうへつき返す。
「……これでいいだろうか?」
絵を確認したクルトは、ゆっくりとヴェルナーさんの顔を見上げる。
「本当に、描いたんですね」
「……見ればわかるだろう?」
「その人に、ほくろはありませんよ」
わたしの声に、全員の目がこちらを向いた。クルトに、ヴェルナーさん。そしてフレデリーケさん。
わたしは今まで隠れていた建物の陰から離れて、ドアの前の三人に近づく。
「ヴェルナーさん、もうわたしの顔を忘れてしまいましたか? さっき似顔絵を描いてもらったばかりなのに」
わたしは、クルトの隣に立っていたフレデリーケさんを手で示す。
「この人はフレデリーケさん。れっきとした女性です。今はわたしの服を着て、長い髪の毛も部分的にマフラーで隠してわたしに似せてもらっています。ここに来てからずっと、クルトの隣に立っていたのはわたしじゃなくて彼女だったんですが、気がつきませんでしたか? わたし達、そんなに似てます? 目の色も違うのに?」
言いながらフレデリーケさんの隣に並んで立つ。わたしの服はフレデリーケさんに貸したので、今は朝に着ていた自分の服を身につけている。
「確かに、似たような背格好で、服や髪型まで同じなら、一度しか会っていないヴェルナーさんは、フレデリーケさんの事をわたしだと勘違いしてしまうかもしれません」
わたしはヴェルナーさんの顔を覗き込むように見つめる。
「でも、それでも不思議ですよね。どうしてフレデリーケさんの顔を見て、ありもしないほくろを似顔絵に描き足したんですか?」
ヴェルナーさんが何も答えないので、わたしは言葉を続ける。
「あなたには、ないはずのものが見えたんですか? それとも、あるはずのものが見えなかったんですか?」
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