ボディジャック

ドライフラワー

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第1章 乗っ取られた分身を取り戻せ!

9.仲裁失敗

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西の空を見つめるライカの姿を見て、マリクは胸が痛む。
誰を思っているのだろうか?

「その重要な人物は、ライカさんにとって、大切な人なんですか?」

マリクが意を決して聞くと、ライカがゆっくりこちらを向いて、

「ええ、とっても大事な人たちよ」

微笑んで答えた。

「だから、何とか力になってあげたいと思って、ここにいるの」

ライカは強い決意を込めて、リードに答えを求めた。
マリクもリードに視線を送る。
リードは頭を掻いて、ため息を吐いた。

「なんか、謎だらけで、何もわかんないけど、まあ、いいよ」

ライカの顔が明るくなった。

「ありがとう!!」

ライカは警戒心を解いて、リードに駆け寄って手を握って感謝の気持ちを表した。

「リードさん、ありがとうございます!!」

マリクもリードの手を握って感謝する。

「や、やめろよ、気持ち悪い!」

リードは喜ぶ2人に気圧されて、慌てて手を引っ込める。

「条件付きだからな!私の目の届く範囲で行動しろよ!私の分身なんだから!」
「ええ、わかったわ」
「良かったですね、ライカさん!『僕たちもお手伝い』しますよ!」

マリクはこの機に乗じた。

「ありがとう!マリク!!」
「え、ちょっと待て、私も手伝うのか!?」
「いいじゃないですか、どうせ一緒に行動するんですから、手伝いましょうよ。そしたら、すぐ人探しも終わりますし、リードさんの分身も戻ってくるじゃないですか」

ただライカを監視するつもりだったリードも巻き込んだ。

「まあ、そうだな…」

リードは引きつった顔で人探しを手伝うことを了承した。

「ありがとう、マリク、リード!!」
「うわあ、抱き着くな!!」

マリクとリードの2人にライカは笑顔で抱き着いてきた。
リードは困惑していたが、マリクは意中の人の抱擁に天にも昇る心地だった。

『ああ、天国…』

これがのちに災いの種になるとは、マリクは露ほどにも思わなかった。


かくして、3人での旅が始まることとなる。
追手が仲間になったことで、ライカはルンルン気分になっている。
そんなライカを見て、マリクはとても嬉しい気分になる。

「ところで、ライカさんが探してる人て、どんな特徴があるんですか?」

山を下りる道中、マリクはやる気満々で質問した。
探し人の特徴がわからなければ、手伝いようがない。
すると、突然、ライカの気分が急降下して、俯く。

「‥‥・ごめんさない‥‥実は、わからないの‥‥」
「「え!?」」

マリクとリードは思わず声を上げた。

「特徴がわからないんじゃ、人探しなんて出来ないだろう!?」

リードが声を荒げる。
ライカはすっかり委縮してしまう。

「リードさん、落ち着いて。どうやって探すつもりだったんですか?」

マリクが聞くと、ライカは言いずらそうに口を開いた。

「‥‥‥フィーリング‥‥会ってみないと、わからないの‥‥」

マリクとリードは固まった。

「は、それじゃ、何も手伝えないじゃないか!やってられるか!」
「ちょっと、待ってください、リードさん!本当に何の手がかりもないんですか?」

どこかへ行こうとするリードを制止しながら、マリクが慌てて尋ねる。

「‥‥・ないこともないわ。私の名前の刺繡がされたケープをその人は持ってる、って神託を受けたわ」
「‥‥あるじゃないか」

行きかけたリードが戻ってきて、先を歩き始める。
その歩き方はぶっきらぼうだったが、どこか優しさを滲ませていた。

「ありがとう」

ライカが言うと、リードが勢いよく振り返る。

「別にお前の為じゃない!私のためだ!お前の人探しをさっさと終わらせて、私の分身から出てってもらわないとな!」
「はい、できるだけ、急ぎます」

ライカが笑顔で言うので、リードはふんと鼻を鳴らして、先をドカドカと歩いていく。

『ああ、奇麗だ‥‥』

マリクはライカの笑顔に見惚れる。

「とりあえず、近くの町に行くぞ。人探しなら人が多いところだろうからな、マリク?」
「そ、そうですね。いいと思います!」

機嫌の悪そうなリードの声にマリクはビックとする。
しかし、横を見ると天使の笑顔にマリクの頬が緩む。

「行きましょう」
「は、はい・・・」

マリクは天使に遅れないように横を歩く。
しばらく会話がなくなる。
何か話したいが、何を話したいのかわからない。
隣にライカ、前を歩くリードを見て不意に言葉が出た。

「道ずれって、いいもんですね」
「え?」

ライカが聞き返す。

「ずっと、1人旅してたので…」
「そうね、話し相手がいるのはいいわよね。1人だと、奇麗な景色を見ておいしいものを食べても、その感動を分かち合える人がいなくて寂しかったわ」
「そう、そうなんですよ!」

マリクはライカと意気投合した。

「リードさんもずっと、1人旅されてるんですか?」
「ああ、ばあちゃんがなくなってからはずっと1人だ」

リードは振り返らずに答えた。

「寂しかったでしょう?」

同じ1旅人をしてきた者同士だから、きっとリードも同じ気持ちだろうとマリクは思った。

「別に、1人の方が気が楽だね」

リードの予測に反した答えに、マリクとライカは気まずくなった。

「まあ、そういう人もいるわよね…」
「突然やってきて、うるさいし、人探し手伝わされたり、振り回されていい迷惑だね!」
「リードさん!!」

マリクが制止するも、火の粉は飛んでいく。

「あら、迷惑だった?別に手伝って、て、あなたに頼んだ覚えはないわよ。マリクが手伝ってくれるから」

怒気を含んだ声で言葉を吐いて、ライカはマリクの腕を掴んだ。
雲行きが怪しくなってきた。

「は!その顔で男たらしこんで、いつも手伝ってもらってるんだな。美人はいいね!」
「たらしこむですって!マリクは自分から手伝ってくれるって言ったのよ!容姿は関係ないわ!ねぇ、マリク!?」
「え、はい・・・・」

マリクは小さな声で答える。

「男は美人に弱いんだよ。下心がない男なんていないね!」

マリクの代わりにライカが反論する。

「すべての男がそうだとは言えないわ!美人は得みたいな言い方してるあなたの心が醜いのよ!!だから、僻んでるんだわ!!」
「別に、僻んでない!ただ、お前らの話し声がうるさいかったんだよ!」
「あら、ごめんなさい。仲間外れにされて、ぐれちゃったのね」
「別に仲間に入りたかったわけじゃないぞ!」

リードは怒りを落ち着かせてから、

「協力するとは言ったが、お前慣れ慣れしすぎるんだよ」

リードはライカに心を許してなかった。
マリクに忠告する。

「お前、絶対騙されてるぞ。こいつの話本当かどうかもわからないのに」
「本当よ!嘘ついてどうするのよ!」
「信じられるか!その姿だって所詮作り物だ。美人は何かと便利だから、その姿を取ったんじゃないのか?」

リードの指摘にライカは口を噤んだ。

「ほら、図星だ」
「…否定はしないわ…でも、この姿を侮辱したことは許さないわ!!」

ライカは持っていた杖をリードに向けて構えた。

「ライカさん!」

マリクは慌ててライカを制止しようとしたが、

「本性を現したな!」

リードは拳を鳴らして、不敵な笑みを零す。

「リードさんまで!」

リードまで戦闘モードになっていた。

「あなたを倒して、私は自分の使命を全うする!」
「は!知ったことか!返り討ちにしてやるよ!とっとと自分の体に帰りな!」

ライカとリードは互いに宣戦布告し、戦いの火ぶたが切って落とされた。
かくして、マリクの仲裁は失敗に終わった。










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