ボディジャック

ドライフラワー

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第1章 乗っ取られた分身を取り戻せ!

2.乗っ取られた分身

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突き出した両手の先に。鏡から抜け出したようなもう一人の自分の姿あった。
恐る恐る手を放してみる。
消えない。
少女は自分そっくりな自分に近づき足の先から頭のてっぺんまで隅々に観察して、

「私って、こんな顔してるんだ‥‥」

最後に顔を確認して、笑った。
少女の初めての分身の術は一応の成功を収めた。
しかし、完璧にはまだ遠い。
少女の分身は姿こそ完璧だが、人形のように動かない。
本来の分身の術は動いている分身の中に本体を紛れ込ませてわからなくする技だ。
これでは戦闘中に使えない。

「まあ、いいか。また練習すれば‥‥」

少女は満足そうに笑って、しばらく自分の分身を眺めた。
一人旅を続けているせいか、人恋しさを感じることがあった。
他の旅人と一緒になって、別れた後、その寂しさに襲われる。
そんな時、どこにもいかず、ずっと一緒にいてくれる人がいてくれたらと、秘かに思う。

『そんな人間いないよな…人はみんな、旅人だから‥‥』

目的地が同じで、一緒に旅をしても、目的地にたどり着いたら別れがやってくる。
また別の目的地に向かうからだ。
ずっと同じ目的地なんて、ありえない。
強い絆で結ばれた者たち以外は。
例えば、家族とか。
天涯孤独な少女にはそんな温かな関係は望めない。
少女にも育ての親がいたが、亡くなってしまった。
年老いた尼僧だった。
尼僧は最期に、

『誰かいい人を見つけて幸せになるんだよ』

と言い残した。
しかし、現実はそう甘くない。
赤の他人が家族になるというのはかなりハードルが高い。
特に、少女には女らしさがかけていた。
嫁にいくとかもちろん考えたこともない。
それどころか、本気で人を好きになるということがよくわからなかった。
人恋しさはあるが、人形のような自分の分身に目を細める。
今は、これだけで満足だった。
満足するまで自分の分身を眺めた後、術を解こうと分身に近づいた。


『あら、勿体ない!!』


突然、謎の声が響いた。

「誰だ!?」

少女は周囲を警戒する。
しかし、辺りには人の気配はない。
空がいつの間にか曇っていた。


『誰?そうね、『ライカ』と名乗っておきましょうか』

「‥‥妖の類か‥‥」

少女は腰に下げていた黒い数珠を手に取る。
これも尼僧の形見だ。
これを使えば、ちょっとした妖なら、少女でも追い払うことができた。
黒い雲から陽光のような光が差し、分身の中に入っていく。

「!!…させるか‥‥!!」

少女はすぐさま、分身の術を解いた。
しかし、分身は消えない。

「残念、気付くのがちょっと、遅かったわね‥‥」

人形のように動かなかった分身が意思を持って、喋った。
その直後、分身は神々しい光を放ち、その姿を変化させた。
光が消えると、長い金髪に青い瞳、抜けるように白い肌の美少女に変身していた。

「コーディネートはこんな感じかしら?」

ピンクのヒラヒラのワンピースを着て、長い髪はピンクのリボンで一つにまとまっている。
一回転して、満足そうに微笑む姿は、見るものを魅了する美しさを放っていた。
そんな美少女に待っていたのは旅の少女の拳。

「きゃあ!!ちょっと、危ないじゃないの!!」
「何が『きゃあ!!』だ!!この妖め!!私の分身を返せ!!」

少女は2発目を放つもひらりとかわされた。

「いいじゃない、ちょっとだけ貸してよ。お・ね・が・い」

チワワのような瞳で訴えてきたが、

「自分の分身貸す奴がいるか!!とっとと出ていけ!!」

少女は容赦しなかった。
謎の美少女は一瞬で姿を消した。

「どこへ行った!?」

始め同様、どこからともなく声が響く。

『交渉決裂ね。悪いけど、この体ちょっと借りるわね』
「だから、貸さないって、言ってるだろう!!出てこい!引っ張り出してやる!!」
『いやよ!それに、もう借りちゃってるし、あなたには絶対私は捕まえられないわ』

鼻息荒くまくしたてる少女を謎の美少女は鼻で笑う。

「なんだと!!」
『まあ、そう怒らないで、魔法は生まれ持っての才能だから…』

少女は奥歯を噛みしめて、宙を睨む。

『あ、そうだ、あなたの名前まだ聞いてなかったわ』
「私の名前はリードだ!」
『リードね。用が済んだらすぐ返すから…じゃ!』

ライカと名乗った謎の美少女の声が消えると同時に空を覆っていたっ雲もなくなっていた。
分身を乗っ取られた旅の少女リードは怒りに震えていた。

「おのれ、魔女め‥‥絶対とっ捕まえて懲らしめてやる!!」

リードは急いで荷物をかき集めると、彼女の分身をのっとったライカの追跡を開始した。








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