生活介助支援型アンドロイドと暮らす未来

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生活介助支援型アンドロイドと暮らす未来

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朝起きると、執事姿のアンドロイドが共に目を覚ました。

「おはようございます。御主人様」

アンドロイドとは、ギリシャ語で人間のようなものという意味で、いわゆる人造人間を意味する。

安楽死法が提出・可決・成立・施行された日本は、高齢者が次々と尊厳ある死を選ばれ、人口が大幅に減少している。

そんな人手不足を補うべく海外で開発が進んでいるのが、生活介助支援型パートナーロボットだ。

人間そっくりの容姿を持つ、2足歩行型人造人間は、性格プログラムのほか、容姿ですら自由に交換することが可能で、声も自由に選ぶことができる。

インターネットに常時接続された人工知能型の頭脳は、全世界中からデータが集積され、自己学習プログラムによって機能が半永久的にアップデートされていく。

電源は、旧来型のコンセント方式のほか、宇宙太陽光発電によって地球内に注がれる電力を、皮膚に内蔵された無線給電パネルを通じて、自動充電される仕組みで補給する。

日本各地に設けられた公共インフラ基地、アンドロイドメンテナンス工場にて、年1回、定期検査が行われるが、それも自律的にアンドロイドが出向いて整備されて戻って来る。

持ち主にかかる負担はほとんどない。

また、アンドロイドの原料となる鉄鋼資源も、いまや大量の海水を高度に化学分解してあらゆるレアメタルを生成する資源生成技術の誕生によって、枯渇の心配はほぼなくなった。

毎月かかるコストといえば、インターネット通信費、電気代、アンドロイド税、メンテナンス費用、任意保険料、前述の任意のカスタマイズ費用くらいで、人間と暮らす場合と比較して圧倒的に低コストで済む。

他人の時間や人生の幸福度の増減を背負う重い責任もないことから、パートナーとして、この生活介助支援型アンドロイドを選ぶ人間がほとんどという情勢にある。

その結果として、未婚の一般化、超少子化、少産相対的多死という傾向に拍車がかかるようになっている。

「人体光合成のお時間です」

いっぽう、人間の生体技術に関する進展もめまぐるしい。

太陽光から生存活動のためのエネルギーを得られる人体光合成技術が確立されたことにより、食物連鎖における殺生がなくなった。

食品関連業界は消滅したものの、前述の生活介助支援型アンドロイドをパートナーロボットとし、稼業にも就かせることで生活費を得たり、工場や農地、そして労働力としてアンドロイドをレンタル貸し出しすることによって生計を立たせる労働力派遣レンタル業組合を通じて、相互扶助しながら生活するようになった。

今のぼくのお仕事は、イヌやネコなどのほか、人間以外の動物を一時保護して、後天的に生体光合成能力を移植することによって、人間以外の動物界においても食物連鎖による不幸をなくす国際規模の事業計画に加担すること。

「太陽光被照射率を向上させるべく、お洋服を脱がせる必要がございます」

そして、今、ねぼけまなこな状態に世話をしてくれているのはアンドロイドのロイド君だ。

「ご自分でお脱ぎになられますか?」

「ええ、大丈夫。自分でできるよ」

決して名付けるのが面倒だったわけではない。機械に疎いから初期設定のままにしてあるだけ。

「今日は近所を探索すればいいんだね」

「そうです。御主人様。野良猫を中心に、たぬき、ハクビシン、カラス、すずめなどが保護ターゲットです」

労働人口に占めるロボット数(アンドロイドほか産業用ロボットなどロボット全般を含む)割合は50%を超えており、人間の生活全般のほか、経済的、政治的、電力・水道・ガスなど社会インフラの面でもアンドロイドが欠かせない状況になっている。



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