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ミラの独り言

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***ミラ

ノア兄ちゃんはアリーさんの事が好きなのだ。しかも独占欲が強い。せっかく綺麗にしたアリーさんの髪を三つ編みに変えさせて現れた時には、笑い出してしまうかと思った。思い出すだけでにやけてしまう。ちょっと遠い存在だったノア兄ちゃんだけど、初めてこんな姿を見て、ちょっと親近感も湧いた。さぁて、応援するべきかどうするべきか。

スープを口に運びながら皆の表情を観察してみる。ん、スープが美味しい、昨日の残りだわ。後ろを振り返って目で鍋を探した。良かった、まだ洗い場にでていないから大丈夫だ。
安心して残りを啜りながら、観察を再開した。
お母さんは・・、昨日の様子だとクレアさん派よね。お父さんは、黙々と食べている。興味なしって感じがする。ジョン兄ちゃんは・・、平静を装ってるけど、内心ほっとしてるわね。昨日は感じたノア兄ちゃんへの敵意が、感じられない。チビ達は・・、見ては悪いと思っているのか、伏せた顔を時々ちらちらと上げるにとどめている。お母さんが気を許して、アリーさんが笑顔を向けでもしたら、いちころに懐いてしまいそう。

水を飲もうと口に含んだ時、アリーさんの声が耳に入ってきた。

「ええと、皆さんのご趣味は?」

しーん、と静まりかえる食卓に、思わず吹き出した。だって、ご趣味って。


***

「アリーさんって、お嬢様だったんだねー。」

片付けるのを手伝いながら、洗い物をするお母さんの背中に話し掛けた。

「たぶんそうだろうって話だよ。あんまり言い触らすんじゃないよ。」

「え?さっきはそんな感じじゃなかったでしょ?どうしたの急に。」

さっきお母さんが言いだした事なのに。

「なんでもないよ。だけど事情があるかもしれないんだから、首を突っ込まないでおくれよ。」

「ふぅ~ん。」

「あっ、あんたっ、いつまで食べてるつもりだいっ!?」

いきなり振り返ったお母さんが、私を見るなり大きな声を出した。

「うるさっ。今、片付けてんでしょ。」

私は、早く洗ってしまえる様にと、残りのスープを片付けている最中だ。

「あきれた。あんたはほんと、どうしようもない娘だね。」

「ふん。ご馳走さまっ。」

鍋を空っぽにして洗い場に押し込んでやった。これ以上怒られる前に、と思って、いそいそと階段をのぼる。

「あぁ、あんた、今日は仕事しなくていいからさ、アリーさんの部屋を綺麗にしてやっておくれ。」

「はあ!?何で?」

「何でってあんた、部屋貸してやらなかったんだからそれくらいいいだろうよ。」

ぐぅ・・、今さらそれを蒸し返すのか。

「で、でもっ、ノア兄ちゃんが片付けるって言ってたもんっ。」

聞いてないけど、きっとそうに決まってる。

「今日はあの子は買い物に行くんだよ。」

うぬぬ・・

「その後にするっていってたもん。」

「その後って、いったい何時になるんだい。」

「ノア兄ちゃんが言ったのっ?私にやらせろって。」

私は聞いてないもん。ふん、と顔をそむけると、お母さんのため息が聞こえた。

「はぁ、あのねぇ。言われてなくてもさぁ、手伝ってあげたっていいだろうよ。あんたは何とも思わないのかい?記憶がない上にこんなところに連れてこられてさ。」

「だから、連れてきたのはノア兄ちゃんでしょ。掃除だって、世話だって、ノア兄ちゃんがすればいいのよ。」
「・・っ馬鹿なことっっ!!」

・・・!?びっくりした。お母さんが怒鳴るだなんて。

「お、母さん・・?ど、どうしたの?急に。」

「なんだっていいから、今日からあんたが身の回りの手伝いをしてやりな。」

「・・なんでよ?」

「ノアは仕事だってあるんだからねっ!」

「・・・分かったわよ。」

口答え出来る空気じゃないから、しぶしぶだ。
お母さん、食事の時は、少しアリーさんに気を許したみたいに見えたし、機嫌もよく見えたんだけど、違ったのかな?

・・・あ、そういえば、さっきノア兄ちゃんと2人で話してた・・、まさか好きだってこと、言っちゃったとか?お母さんをちらりと覗き見ようとしたけど、背中しか見えなかった。
お母さんはクレアさん派だから不機嫌になったのかも。となると、お母さん機嫌の取るには・・・。

自分の身の置き所を、しっかりと見極める必要がありそうね。


**

その後私は、汚れてもいいように、1番ボロの服装で家畜小屋に向かった。どうせ誰も見ないのだし。
ところが、ドアを開けてみるとアリーさんの姿があった。

「あれ?アリーさん、買い物は行かないのですか?」

「ノアが行ったわ。何かご用事?」

なんだろう、なんだかこっちも機嫌が悪い?だけどラッキーだ。2人で掃除をしたら早く終わる。

「あの、私、部屋を掃除するように言われて。」

「ああ。どうせ私には出来ないものね。」

「え?アリーさん、掃除出来ないんですか?」

嘘でしょ?焦る。せっかく早く終わると思ったのに。

「知らないわ。でも、出来ないからあなたが来たんでしょ?」

「いえ、いえっ、そんなことっ、私は全く思っていません。アリーさん、私、教えます。一緒に掃除を頑張りましょう!」


私は別の道具を取りに、急いで一旦家に戻った。ラッキーだ、指示を出して教えてあげればいいだけなんて。本当は手抜きするつもりだったけど、それならノア兄ちゃんにも褒められるくらい徹底的にしなくっちゃ。恩は売れるときに売っておかないとだもんね。

ついでに、その足でクレアさんのところまで駆けて行き、ノア兄ちゃんが1人で町に行ったことを教えてあげた。誰を応援するかはまだ決められないから、当面の間は八方美人で過ごそうと思う。
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