41 / 43
クロヴィスの胸の内
しおりを挟む
***アルロ
クロヴィス陛下は、冷酷なお方ではない。
ただ、国王であるだけなのだ。
―――とにかく真実が知りたい。アリアが儂を裏切るなど・・
隣国からの手紙に激昂されたクロヴィス陛下は、そう言ってお倒れになられた。
「裏切るなど・・」その言葉には、続きがあった。
**
「陛下、気が付かれましたか、具合はいかがでしょうか?」
ベッドへと運ばれた陛下は、しばらくして目を覚ました。
「・・・ああ、もう大丈夫だ。それよりアルロ、アリアの件だが、出来るだけ早く出発してくれ。」
真剣な眼差しに、姫様を危惧する様子が見てとれる。
「分かりました。必ず真実を見付け、姫様を連れ戻してまいります。」
「頼んだぞ。アリアが儂を裏切るはずがない。裏切るなど・・・あぁ、考えただけでも恐ろしい。」
クロヴィス陛下は顔を歪め、布団を握りしめた。それでも、聞いておかないといけない事がある。
「・・・念のため確認致します。陛下は、姫様が万が一、本当に裏切っていた場合どうなさいますか?」
「アルロ、儂は鬼に見えるか?」
「・・・」
鬼でない事は知っているが、鬼のように振る舞わないといけない事も知っていた。だから、聞いておくのだ。
「ディランの事は・・・ あれは、他にやりようがなかったのだ。儂は父である前に王である。たとえ我が子であろうとも、国と天秤にかける様な愚かな真似は出来んのだ。」
言いながら、とても悲しい顔をしておられた。隠しておられた本音を、言葉で聞くのは初めてだった。国王として、家族に情をかけ、国を揺るがしてはならない。陛下は、人知れず涙を流すことすら、いつも堪えておられた。
「では、今回もまた・・」
今回もまた、堪える道をお選びに。そう思っていたが、陛下の答えは違うものだった。
「アルロ、儂は、国とは天秤に掛けられないと言った。だから、今回の事について、お前に全てを任せたいと思う。お前が何を言おうと、何を言わずとも、信じよう。」
「それは、つまり・・?」
「何度も言わせるな。お前に任せる。」
「裏切られていた としてもですか?」
念のため、もう一度確認する。俺は間違いなく、姫様を庇うだろうから。
「・・・儂がそれの何を恐ろしがっているか、お前に分かるか?」
「・・・・いいえ。」
「儂のしてきた全てがアリアの為ではなかったと示される事が、一番の恐怖なのだよ。」
確認しようと聞いた事を、後悔した。こんなお姿を晒させたかった訳ではない。
「必ず、使命を果たしてまいります。」
クロヴィス陛下は、冷酷なお方ではない。
ただ、国王であるだけなのだ。
―――とにかく真実が知りたい。アリアが儂を裏切るなど・・
隣国からの手紙に激昂されたクロヴィス陛下は、そう言ってお倒れになられた。
「裏切るなど・・」その言葉には、続きがあった。
**
「陛下、気が付かれましたか、具合はいかがでしょうか?」
ベッドへと運ばれた陛下は、しばらくして目を覚ました。
「・・・ああ、もう大丈夫だ。それよりアルロ、アリアの件だが、出来るだけ早く出発してくれ。」
真剣な眼差しに、姫様を危惧する様子が見てとれる。
「分かりました。必ず真実を見付け、姫様を連れ戻してまいります。」
「頼んだぞ。アリアが儂を裏切るはずがない。裏切るなど・・・あぁ、考えただけでも恐ろしい。」
クロヴィス陛下は顔を歪め、布団を握りしめた。それでも、聞いておかないといけない事がある。
「・・・念のため確認致します。陛下は、姫様が万が一、本当に裏切っていた場合どうなさいますか?」
「アルロ、儂は鬼に見えるか?」
「・・・」
鬼でない事は知っているが、鬼のように振る舞わないといけない事も知っていた。だから、聞いておくのだ。
「ディランの事は・・・ あれは、他にやりようがなかったのだ。儂は父である前に王である。たとえ我が子であろうとも、国と天秤にかける様な愚かな真似は出来んのだ。」
言いながら、とても悲しい顔をしておられた。隠しておられた本音を、言葉で聞くのは初めてだった。国王として、家族に情をかけ、国を揺るがしてはならない。陛下は、人知れず涙を流すことすら、いつも堪えておられた。
「では、今回もまた・・」
今回もまた、堪える道をお選びに。そう思っていたが、陛下の答えは違うものだった。
「アルロ、儂は、国とは天秤に掛けられないと言った。だから、今回の事について、お前に全てを任せたいと思う。お前が何を言おうと、何を言わずとも、信じよう。」
「それは、つまり・・?」
「何度も言わせるな。お前に任せる。」
「裏切られていた としてもですか?」
念のため、もう一度確認する。俺は間違いなく、姫様を庇うだろうから。
「・・・儂がそれの何を恐ろしがっているか、お前に分かるか?」
「・・・・いいえ。」
「儂のしてきた全てがアリアの為ではなかったと示される事が、一番の恐怖なのだよ。」
確認しようと聞いた事を、後悔した。こんなお姿を晒させたかった訳ではない。
「必ず、使命を果たしてまいります。」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
33
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる