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**レイラ
「なんだ、起きているのか?」
陛下に声を掛けられたけれど、どうしていいか分からず、目を閉じたまま体を固くした。冷や汗が吹き出る。
「おい、起きてるな。」
どうしよう、どうしよう、、心臓がドクンドクンと音を立てていて静かな部屋の中ではこの心臓の音だって陛下に聞かれている気がする。
「触れるぞ。」
驚いてビクッと体を動かしてしまい、とうとう目も開けてしまった。
「ひゃっ!」
真っ先に視界に飛び込んできたのは陛下の目で、思った以上に近過ぎて、掠れた悲鳴が出た。
「ふん、狸寝入りか。」
屈んでいた身体を起こして、私を見下ろしながら呆れた顔をして言われた。
「ちちち違いますっ! 本当に、ちゃんと寝ていました!」
「ほう、、、」
今夜も陛下は夜中に部屋に入って来た。
その時まで、私は本当に眠っていたのだ。ただ、陛下がドアを開けた時に気づいた。それからいつもの様に動かず、じっと目を瞑っていたのだけれど、つい、我慢出来ずに唾を飲み込んでしまった。それだけの事で、陛下は私が起きていると確信したのだ。いったいどの様に私を観察していたのか、恐くて想像も出来ない。
「眠っていましたが、途中で目が覚めました。」
「ふん、やはり狸寝入りだな。」
「いえっ、そんなつもりは、、はは恥ずかしくて。」
本当は、恐くて、と言いたいところを少し誤魔化した。言いながら起き上がろうとしたら、肩に手を置かれて制止され、そのまま私の、お腹の横辺りに座った。
沈んだソファーと、少しだけ感じる圧迫感が陛下の実体感を示す。
「恥ずかしい、、か。」
陛下は上半身を少し捻って私を見下ろした。ソファーに流れる私の髪を掬い、顔に近付けて、すん、と匂いを吸い込んだ。
「や、止めて下さい。」
思わず髪を引っ張り戻した。恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
陛下は口をへの字に曲げ、再び髪を掬おうとするので、両方の手それぞれで、左右の髪を押さえた。
「これも恥ずかしい、か?」
にやり、と口角をあげた。私は湯気が出そうになりながら押さえる手に力を込めた。
髪を掬うことを諦めた陛下は、自分の手を、私の手に重ね、顔を近付けて来た。わっ、と思ってぎゅっと目を閉じると、頭を、すん、とされ、額に口付けを落とした。
「ひっ。」
身を縮めると、満足そうな顔で、頬を撫でられた。
「、、俺の物だ。」
呟く様な小さな声が聞こえた。
それから陛下は立ち上がって、部屋を出ていった。去った後もしばらくの間、心臓がドクドクと言っていた。
***ディラン殿下視点***
「マルロ、あれはいつ頃到着予定だ?」
側近のマルロに尋ねた。
少し前に、再び生きたジェミューを捕まえた、との報告をもらい、二つ返事で買い取る事にしたのだ。それがそろそろ到着する頃だ。
「、、、明日には到着する予定です。」
「分かった。部屋は適当に準備してやれ。」
「、、、はい。分かりました。」
「マルロ、言いたい事があるならはっきり言ってくれないか?」
先程から、ちらちらとこちらを見てくるのが鬱陶しい。
「はい。恐れながら申し上げますが、陛下は一体どうなさるおつもりですか?」
「何をだ?」
「明日到着予定の、それです。」
「ああ、そのことか。言われなくとも分かっている。妻にしようとは思っていない。ただ、置いておけば何かの役に立つだろう。」
「分かりました、ではそのように。」
狩人の質が悪かったのだ。ついていない。
それに、2番目というのは少し熱が冷めもする。ウィレム陛下に取られたジェミューは、どんな風姿だったのだろう。
「ところで、陛下にはお伝えしていますか?」
「ん? 散々言われたばかりだからな、何も伝えていない。だが問題ないよ、ただ買い取っただけだ。もしも気になるならお前から耳に入れておいてくれ。」
「かしこまりました。」
明日か。まぁ、少しは楽しみだ。
「殿下っ、陛下がお呼びです。」
立ち去ったはずのマルロがすぐに戻ってきた。
「なんだ? 何か変な事を言ったのか?」
「違います。先程、アリア様から手紙が届いたそうで、その件で話したい事がある、と。」
「アリアから? 何だろうな。」
「いいから、早く行って下さい。」
「分かったよ。」
**
「父上、話とは何でしょう?」
「ああ、来たか。お前は、これを見てどう思う?」
かなり苛立っている様子で、手紙を投げて寄越した。
手紙はアリアからの物で、几帳面な字で書かれてあった。挨拶文から始まり、父上の体調を気遣う言葉があり、その後に、どうか助けて下さい、と続いていた。そして、心を痛めている原因を書き記してあったのだ。
それは、今までの3年間で陛下と顔を合わせたのは数回程度であること。
それも、お茶を飲む時間もない程の、短い時間であること。
次に、同じく王妃候補である、他国の娘達から嫌がらせを受けながら毎日耐えていること。
最後に、陛下が最近手に入れたジェミューの女に入れ込み、言われもない事でエミリに処罰を下した事が書かれてあった。
悲しみに明け暮れるアリアの姿が思い浮かんだ。
「これは、、、」
確かに以前、アリアは陛下にお会いすることは滅多にない、と嘆いていた。
だけどこの内容は、、さすがに我が国を軽んじているようにしか思えない。悔しくて拳に力を込めた。
「お前ならどう動く?」
「アリアを助たいです。」
「具体的にだ。」
「、、、ウィレム陛下に事実を確かめて、それから、、」
「遅すぎる。すぐにでも直訴する。アリアが可哀想だ。」
「しかし、、、相手にするでしょうか?」
悔しいが、ウィレム陛下のあの態度を思い浮かべると難しい様に思えた。
「弱腰でどうする。やり様はいろいろあるのだ。お前はもっと学ぶべきだな。ジェミューの事はしばらく忘れなさい。」
「、、、 はい。勉強します。」
普段はいつも低姿勢で対応していたから、てっきり俺は、こちらの方が格下だと思っていたのだ。強く出られるのなら、あの時のジェミューだって、取り返せたのではないかと、不謹慎にも父を疑った。
「それから、近いうちにお前の婚姻を決める。」
「え? 婚姻については好きにしていいと、、」
「アリアを助けたいんだろう。手っ取り早く済ませたい。いいな。」
くそ、心の中で悪態をついた。
「なんだ、起きているのか?」
陛下に声を掛けられたけれど、どうしていいか分からず、目を閉じたまま体を固くした。冷や汗が吹き出る。
「おい、起きてるな。」
どうしよう、どうしよう、、心臓がドクンドクンと音を立てていて静かな部屋の中ではこの心臓の音だって陛下に聞かれている気がする。
「触れるぞ。」
驚いてビクッと体を動かしてしまい、とうとう目も開けてしまった。
「ひゃっ!」
真っ先に視界に飛び込んできたのは陛下の目で、思った以上に近過ぎて、掠れた悲鳴が出た。
「ふん、狸寝入りか。」
屈んでいた身体を起こして、私を見下ろしながら呆れた顔をして言われた。
「ちちち違いますっ! 本当に、ちゃんと寝ていました!」
「ほう、、、」
今夜も陛下は夜中に部屋に入って来た。
その時まで、私は本当に眠っていたのだ。ただ、陛下がドアを開けた時に気づいた。それからいつもの様に動かず、じっと目を瞑っていたのだけれど、つい、我慢出来ずに唾を飲み込んでしまった。それだけの事で、陛下は私が起きていると確信したのだ。いったいどの様に私を観察していたのか、恐くて想像も出来ない。
「眠っていましたが、途中で目が覚めました。」
「ふん、やはり狸寝入りだな。」
「いえっ、そんなつもりは、、はは恥ずかしくて。」
本当は、恐くて、と言いたいところを少し誤魔化した。言いながら起き上がろうとしたら、肩に手を置かれて制止され、そのまま私の、お腹の横辺りに座った。
沈んだソファーと、少しだけ感じる圧迫感が陛下の実体感を示す。
「恥ずかしい、、か。」
陛下は上半身を少し捻って私を見下ろした。ソファーに流れる私の髪を掬い、顔に近付けて、すん、と匂いを吸い込んだ。
「や、止めて下さい。」
思わず髪を引っ張り戻した。恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
陛下は口をへの字に曲げ、再び髪を掬おうとするので、両方の手それぞれで、左右の髪を押さえた。
「これも恥ずかしい、か?」
にやり、と口角をあげた。私は湯気が出そうになりながら押さえる手に力を込めた。
髪を掬うことを諦めた陛下は、自分の手を、私の手に重ね、顔を近付けて来た。わっ、と思ってぎゅっと目を閉じると、頭を、すん、とされ、額に口付けを落とした。
「ひっ。」
身を縮めると、満足そうな顔で、頬を撫でられた。
「、、俺の物だ。」
呟く様な小さな声が聞こえた。
それから陛下は立ち上がって、部屋を出ていった。去った後もしばらくの間、心臓がドクドクと言っていた。
***ディラン殿下視点***
「マルロ、あれはいつ頃到着予定だ?」
側近のマルロに尋ねた。
少し前に、再び生きたジェミューを捕まえた、との報告をもらい、二つ返事で買い取る事にしたのだ。それがそろそろ到着する頃だ。
「、、、明日には到着する予定です。」
「分かった。部屋は適当に準備してやれ。」
「、、、はい。分かりました。」
「マルロ、言いたい事があるならはっきり言ってくれないか?」
先程から、ちらちらとこちらを見てくるのが鬱陶しい。
「はい。恐れながら申し上げますが、陛下は一体どうなさるおつもりですか?」
「何をだ?」
「明日到着予定の、それです。」
「ああ、そのことか。言われなくとも分かっている。妻にしようとは思っていない。ただ、置いておけば何かの役に立つだろう。」
「分かりました、ではそのように。」
狩人の質が悪かったのだ。ついていない。
それに、2番目というのは少し熱が冷めもする。ウィレム陛下に取られたジェミューは、どんな風姿だったのだろう。
「ところで、陛下にはお伝えしていますか?」
「ん? 散々言われたばかりだからな、何も伝えていない。だが問題ないよ、ただ買い取っただけだ。もしも気になるならお前から耳に入れておいてくれ。」
「かしこまりました。」
明日か。まぁ、少しは楽しみだ。
「殿下っ、陛下がお呼びです。」
立ち去ったはずのマルロがすぐに戻ってきた。
「なんだ? 何か変な事を言ったのか?」
「違います。先程、アリア様から手紙が届いたそうで、その件で話したい事がある、と。」
「アリアから? 何だろうな。」
「いいから、早く行って下さい。」
「分かったよ。」
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「父上、話とは何でしょう?」
「ああ、来たか。お前は、これを見てどう思う?」
かなり苛立っている様子で、手紙を投げて寄越した。
手紙はアリアからの物で、几帳面な字で書かれてあった。挨拶文から始まり、父上の体調を気遣う言葉があり、その後に、どうか助けて下さい、と続いていた。そして、心を痛めている原因を書き記してあったのだ。
それは、今までの3年間で陛下と顔を合わせたのは数回程度であること。
それも、お茶を飲む時間もない程の、短い時間であること。
次に、同じく王妃候補である、他国の娘達から嫌がらせを受けながら毎日耐えていること。
最後に、陛下が最近手に入れたジェミューの女に入れ込み、言われもない事でエミリに処罰を下した事が書かれてあった。
悲しみに明け暮れるアリアの姿が思い浮かんだ。
「これは、、、」
確かに以前、アリアは陛下にお会いすることは滅多にない、と嘆いていた。
だけどこの内容は、、さすがに我が国を軽んじているようにしか思えない。悔しくて拳に力を込めた。
「お前ならどう動く?」
「アリアを助たいです。」
「具体的にだ。」
「、、、ウィレム陛下に事実を確かめて、それから、、」
「遅すぎる。すぐにでも直訴する。アリアが可哀想だ。」
「しかし、、、相手にするでしょうか?」
悔しいが、ウィレム陛下のあの態度を思い浮かべると難しい様に思えた。
「弱腰でどうする。やり様はいろいろあるのだ。お前はもっと学ぶべきだな。ジェミューの事はしばらく忘れなさい。」
「、、、 はい。勉強します。」
普段はいつも低姿勢で対応していたから、てっきり俺は、こちらの方が格下だと思っていたのだ。強く出られるのなら、あの時のジェミューだって、取り返せたのではないかと、不謹慎にも父を疑った。
「それから、近いうちにお前の婚姻を決める。」
「え? 婚姻については好きにしていいと、、」
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