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***マイク視点***
日が明けきれる前から歩き始めた俺は、日が暮れる前にアリドゥラムに着くことが出来た。
俺を助けてくれた女の人は最後まで名前を名乗らなかったけど、誰かが ステラ、と呼ぶのを聞いた気がした。きっとそれが彼女の名前だと思う。今朝出掛ける時は、住んでいる場所を知られたくないからと目隠しまでされたので、何か事情があるのだろう。
通り抜けた関所で俺は自分に起きた出来事を全て報告した。少しでも早く陛下のお耳にいれた方がいいと判断したからだ。報告は思いの外 時間が掛かり、終わった頃にはすっかり暗くなっていた。一番近い町まで馬車で送ってもらい、その町で俺は直ぐに、オリバー商会と関係のある店を尋ねた。俺自信、マルクスさんに連れられて何度も来たことがある店だ。
というのも、マルクスさんと狩りに来たときにこの店には活動拠点として世話になっていた。
行きにも立ち寄ったこの町は山が多く数年に一度いたずら狸が大量発生する。その狸の肝は貴重な薬として高値で売れるのだ。処理にかなりの手間がかかるから数匹捕らえた処で意味がないが、大量発生した狸を一気に捕まえるといい儲けになるので、マルクスさんは好んでその仕事を請け負っていた。それに名前の通り、町で悪さをするので駆除をすると報酬も貰えたのだ。
マルクスさんとの思い出のある店だから立ち寄るつもりはなかったのだけど、背に腹は変えられない。
店に入ると直ぐに店主が俺に気付いて駆け寄ってきた。なんでもつい数日前に陛下の使いの者がマルクスさんの首を持って訪ねてきたばかりだったらしい。
つい動揺してしまった。首だけになったマルクスさんがここにいたと聞いて、本当に死んでしまったのだと改めて突き付けられるようだった。
そしてその夜は久しぶりに酒を飲んだ。胸が重苦しくてなかなか寝付けなかったのだ。飲んで、泣いて、眠った。
翌朝、鏡を見た時に顔の酷さに引いたけど、気持ちはすっきりと晴れていた。
さぁ、この後は出来るだけ早く戻って陛下に謁見しなければ。使命感に駆られた。
***ジュリ視点***
メリッサに お嬢様の陛下への気持ちを確かめておかないと、と言われてから、心の中がずっともやもやしていた。
早くお嬢様の本心を調べたいのに、どう確認したらいいのか分からない。
先日、どうやって? と聞いた私にメリッサは自分で考えてみてね、と言っていた。
とりあえず思い付いたのはお嬢様に直接聞くことだったけど、答えを聞いても私にはよく分からなかった。
メリッサに次に会ったらもう一度聞いてみよう、と思っていた。そうしたら、たまたま立ちよった厨房で偶然会うことが出来た。メリッサと会うのは久しぶりだ。だって最近のメリッサはアリア様が戻って来たことで本来の仕事に戻っていたから。
「メリッサ、久しぶり。」
「あぁジュリ、本当に久しぶりね、、。」
「どうかした?」
メリッサはなんだか落ち込んでいるように見える。私の時はたくさん話を聞いて貰ったから、今度は私が力になりたい、と思ったけどメリッサは、
「いいえ、なんでもないの。」
と言っただけだった。拒絶されてしまったのかと少し寂しく思った。
「そっか、、。 あ、ねぇメリッサ、少し相談したいのだけど時間はある?」
「いいわよ。何?」
おそるおそる聞いてみると快く受け入れてくれてほっとした。さっそく聞きたかった事を聞いてみた。
「実はお嬢様の事なんだけどね、この前言っていた、陛下への想いを確認する方法が分からなくって。」
「何か試してはみたの?」
「ええ、さっそく聞いてみたのよ。でもよく分からなかったの。」
「ははっ、そりゃあ直接聞いても教えてくれないでしょ。ええとね、試すのよ。」
「試す?」
メリッサが笑いながら言った。私のやり方はやっぱり駄目だったらしい。それにしても 試す、とは?
「そう。例えば陛下の悪い噂を聞かせたりして、、とか。あぁでもそれくらいじゃ駄目かしら。ん~と、逃げ出したくなるくらいの陛下の恐ろしさを伝えて怖がらせてみるとか?」
「それが、お嬢様は陛下を恐れてはいないのよ。この間の騒動の時も、恐くはなかったみたい。」
「そうなの? う~ん、、、あ。 そうだ、剥製、、、」
「なんの話?」
「あっ、ええと、、、、。 いいわ、特別に教えてあげる。実はね、私、宝物庫であるものを見たのよ。」
「な、なに?」
メリッサが急に声をひそめた。特別という言葉にどきどきする。
「ジェミューの、剥製よ。」
「え? ど、どういう、、」
背中がぞくりとした。メリッサは口の端をあげて話を続けた。
「つまりね、陛下は捕らえたジェミューを剥製にする趣味をお持ちなのよ。どう? 恐いでしょ? お嬢様も飽きられたら剥製にされるかもしれないわ。」
「え? え? え? 、、、それって、本当の事なの?」
聞くだけで恐い。剥製って、死んだ人間ってこと? だけど、陛下がもしも毎日見にきてくれるのなら私は喜んで剥製になるかもしれない、、、。
「さぁ、私には分からないわ。ただ、本物の人間みたいな人形を見たの。でも、全てが真実でなくてもいい訳でしょ? どうせ実際には見ないのだし。だから例えば、以前恋人だった人、とかでもいいじゃない。恋人だった人を剥製するなんて噂を聞いたら、余程 愛していない限り逃げ出すわ。」
「え、それって、、」
はっと気付いた。それは私が見た人形だ。あれは確かに本物みたいだった。ジェミューの剥製だと言われたら本当にそうかもしれないと思った、なんとなくお嬢様に似ていたから。
「どうしたの?」
「い、いえ、何でもないわ。じゃ、じゃあそう聞いたって、お嬢様に伝えてみるわね。」
「あっ、ま、待って。私から聞いたって言われたら困るのよ。だから、、そうだ。だから噂よ。その噂をジュリがたまたま聞いてお嬢様に伝えるの。ええと、、、噂は、、エレノア様の侍女から聞いたって言って。エレノア様はあちこちの商会を部屋に呼んでいるからいろいろな噂を知っているわ。1つ噂が増えたくらい気付かない。」
「すごい! 分かったわ。ありがとう、メリッサに会えて良かった。ずいぶん引き留めてしまったけど大丈夫?」
「え?、あ、ええ。アリア様は少しお疲れの様子でお休みしているの。問題ないわ。」
メリッサは本当にすごいと思う。話しただけで解決策が見つかったし、私のもやもやは、すっかりきれいに無くなっている。
軽くなった足取りでお嬢様の所へ向かった。
日が明けきれる前から歩き始めた俺は、日が暮れる前にアリドゥラムに着くことが出来た。
俺を助けてくれた女の人は最後まで名前を名乗らなかったけど、誰かが ステラ、と呼ぶのを聞いた気がした。きっとそれが彼女の名前だと思う。今朝出掛ける時は、住んでいる場所を知られたくないからと目隠しまでされたので、何か事情があるのだろう。
通り抜けた関所で俺は自分に起きた出来事を全て報告した。少しでも早く陛下のお耳にいれた方がいいと判断したからだ。報告は思いの外 時間が掛かり、終わった頃にはすっかり暗くなっていた。一番近い町まで馬車で送ってもらい、その町で俺は直ぐに、オリバー商会と関係のある店を尋ねた。俺自信、マルクスさんに連れられて何度も来たことがある店だ。
というのも、マルクスさんと狩りに来たときにこの店には活動拠点として世話になっていた。
行きにも立ち寄ったこの町は山が多く数年に一度いたずら狸が大量発生する。その狸の肝は貴重な薬として高値で売れるのだ。処理にかなりの手間がかかるから数匹捕らえた処で意味がないが、大量発生した狸を一気に捕まえるといい儲けになるので、マルクスさんは好んでその仕事を請け負っていた。それに名前の通り、町で悪さをするので駆除をすると報酬も貰えたのだ。
マルクスさんとの思い出のある店だから立ち寄るつもりはなかったのだけど、背に腹は変えられない。
店に入ると直ぐに店主が俺に気付いて駆け寄ってきた。なんでもつい数日前に陛下の使いの者がマルクスさんの首を持って訪ねてきたばかりだったらしい。
つい動揺してしまった。首だけになったマルクスさんがここにいたと聞いて、本当に死んでしまったのだと改めて突き付けられるようだった。
そしてその夜は久しぶりに酒を飲んだ。胸が重苦しくてなかなか寝付けなかったのだ。飲んで、泣いて、眠った。
翌朝、鏡を見た時に顔の酷さに引いたけど、気持ちはすっきりと晴れていた。
さぁ、この後は出来るだけ早く戻って陛下に謁見しなければ。使命感に駆られた。
***ジュリ視点***
メリッサに お嬢様の陛下への気持ちを確かめておかないと、と言われてから、心の中がずっともやもやしていた。
早くお嬢様の本心を調べたいのに、どう確認したらいいのか分からない。
先日、どうやって? と聞いた私にメリッサは自分で考えてみてね、と言っていた。
とりあえず思い付いたのはお嬢様に直接聞くことだったけど、答えを聞いても私にはよく分からなかった。
メリッサに次に会ったらもう一度聞いてみよう、と思っていた。そうしたら、たまたま立ちよった厨房で偶然会うことが出来た。メリッサと会うのは久しぶりだ。だって最近のメリッサはアリア様が戻って来たことで本来の仕事に戻っていたから。
「メリッサ、久しぶり。」
「あぁジュリ、本当に久しぶりね、、。」
「どうかした?」
メリッサはなんだか落ち込んでいるように見える。私の時はたくさん話を聞いて貰ったから、今度は私が力になりたい、と思ったけどメリッサは、
「いいえ、なんでもないの。」
と言っただけだった。拒絶されてしまったのかと少し寂しく思った。
「そっか、、。 あ、ねぇメリッサ、少し相談したいのだけど時間はある?」
「いいわよ。何?」
おそるおそる聞いてみると快く受け入れてくれてほっとした。さっそく聞きたかった事を聞いてみた。
「実はお嬢様の事なんだけどね、この前言っていた、陛下への想いを確認する方法が分からなくって。」
「何か試してはみたの?」
「ええ、さっそく聞いてみたのよ。でもよく分からなかったの。」
「ははっ、そりゃあ直接聞いても教えてくれないでしょ。ええとね、試すのよ。」
「試す?」
メリッサが笑いながら言った。私のやり方はやっぱり駄目だったらしい。それにしても 試す、とは?
「そう。例えば陛下の悪い噂を聞かせたりして、、とか。あぁでもそれくらいじゃ駄目かしら。ん~と、逃げ出したくなるくらいの陛下の恐ろしさを伝えて怖がらせてみるとか?」
「それが、お嬢様は陛下を恐れてはいないのよ。この間の騒動の時も、恐くはなかったみたい。」
「そうなの? う~ん、、、あ。 そうだ、剥製、、、」
「なんの話?」
「あっ、ええと、、、、。 いいわ、特別に教えてあげる。実はね、私、宝物庫であるものを見たのよ。」
「な、なに?」
メリッサが急に声をひそめた。特別という言葉にどきどきする。
「ジェミューの、剥製よ。」
「え? ど、どういう、、」
背中がぞくりとした。メリッサは口の端をあげて話を続けた。
「つまりね、陛下は捕らえたジェミューを剥製にする趣味をお持ちなのよ。どう? 恐いでしょ? お嬢様も飽きられたら剥製にされるかもしれないわ。」
「え? え? え? 、、、それって、本当の事なの?」
聞くだけで恐い。剥製って、死んだ人間ってこと? だけど、陛下がもしも毎日見にきてくれるのなら私は喜んで剥製になるかもしれない、、、。
「さぁ、私には分からないわ。ただ、本物の人間みたいな人形を見たの。でも、全てが真実でなくてもいい訳でしょ? どうせ実際には見ないのだし。だから例えば、以前恋人だった人、とかでもいいじゃない。恋人だった人を剥製するなんて噂を聞いたら、余程 愛していない限り逃げ出すわ。」
「え、それって、、」
はっと気付いた。それは私が見た人形だ。あれは確かに本物みたいだった。ジェミューの剥製だと言われたら本当にそうかもしれないと思った、なんとなくお嬢様に似ていたから。
「どうしたの?」
「い、いえ、何でもないわ。じゃ、じゃあそう聞いたって、お嬢様に伝えてみるわね。」
「あっ、ま、待って。私から聞いたって言われたら困るのよ。だから、、そうだ。だから噂よ。その噂をジュリがたまたま聞いてお嬢様に伝えるの。ええと、、、噂は、、エレノア様の侍女から聞いたって言って。エレノア様はあちこちの商会を部屋に呼んでいるからいろいろな噂を知っているわ。1つ噂が増えたくらい気付かない。」
「すごい! 分かったわ。ありがとう、メリッサに会えて良かった。ずいぶん引き留めてしまったけど大丈夫?」
「え?、あ、ええ。アリア様は少しお疲れの様子でお休みしているの。問題ないわ。」
メリッサは本当にすごいと思う。話しただけで解決策が見つかったし、私のもやもやは、すっかりきれいに無くなっている。
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