愛しく苦い僕らの青春

ミヒロ

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とうとうこの日がやってきた。

僕、松永悠真、10歳の誕生日。

昔ながらの日本家屋の一室で、母さんが盛大な手料理を作り、父さん、妹、家族全員が祝ってくれた。

丸くて白い、苺が乗り、ろうそくの立てられたホールケーキは村からかなり離れた街まで父さんが車で買ってきてくれたらしい。

「おめでとう、悠真」

「おめでとう、お兄ちゃん」

僕は少し複雑な笑顔を浮かべた。

「ありがとう」

この僕の住む村には昔ながらの風習がある。

僕たちが知る由もない昔、男の子が産まれず、村の存続が危ぶまれた時期があったのらしい。

男の子が産まれず、女の子ばかり産まれては子孫繁栄にならない。

小さな村に崇められた神の言い伝えで、妊婦のいる男性が男の子を抱いたところ、お腹の子供は男の子になり、男の子が産まれた。

村の見聞に残されているらしい。

今もその風習は残されていて、10歳を迎えた男の子は言わば強制的に妊娠した奥さんの代わりに抱かれないとならない。

とは言っても、男の子、みんながみんなではなく、10歳の誕生日より前に村長に合わせ、村長が決める。

僕も誕生日前に父さんに連れられ、村長の元へと手を繋ぎ、手土産を持ち出向いた。

僕は男性に抱かれる奉公を始めるために明日から実家を3週間離れる。

奉公になった子供のいる家庭は優遇され、毎月、村からお金が入り、それ以外にも僕だけでなく、妹の授業料も免除される。

大人はみんな、この制度のために躍起になり子作りをする、という噂がある。

そして、実は妊婦と性行為しお腹の子供を流産させないために男の子を抱く、という噂や女性と浮気させないための予防という噂もある。

男子なら妊娠しないから。

実際、既婚者ながら、10代や20代の女性と不倫し、相手を妊娠させ、泥沼になった話しはある。

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