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第12話 講習1日目
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休憩から戻った人たちの流れに、ある人物が混ざっていたので俺は思わず声をかけてしまう。
「おっさん!!」
俺の声に気がついたおっさんが、びっくりした表情をしながら近寄ってくる。
今もエルフ国にいると思っていただろうからな。
つい大声で呼んでしまった為か、周囲の注目を浴びるが、あまり気にしない事にする。
午前中の座学を担当したギルド職員なんかは、信じられないといった表情で俺の事を見ている。
さすがにおっさん呼ばわりは、まずかったか。
まあギルドの職員なら、おっさんの事は知っているだろうしな。
「おまえさん、こんな所で何しとるんじゃ?」
おっさんの声のボリュームが大きかったので、俺は意味有り気に、咳払いをして、小声で話し始める。
「いや、昨日まではエルフ国に厄介になってたんだがな……やりたい事があって帝都に戻って来たんだ」
おっさんも俺の意図を理解してくれたらしく自然と小声になる。
「やりたい事とはなんじゃ? 今日ここでは、初心者講習しかやってないと思ったがのう」
「それそれ、初心者講習を受けに来てるんだ」
「おまえさん、気は確かか? どうして今更中級の初心者講習など受ける必要があるんじゃ?」
「いや、ギルド職員の人から講習を受けなきゃ帝都の中級ダンジョンには入れないって聞いたんだが?」
「レベル15以上なら免除じゃよ。お主なら全く問題ないはずじゃが……そもそも職員が最初にレベルが15以上か否か、確認する決まりになっておるはずなんじゃがな……」
おっさんは首をかしげるが、俺は逆に職員の対応には納得できた。
俺が申し込みを頼んだギルド職員は、直前に女神のダンジョンの資料を借りに行った時対応してくれた職員だったからな。
逆にレベルが15以上だと思う方が不自然だ。
「今からでも免除にするかの? わしが話をしてきてやっても良いが?」
「いや……折角だから受けていくさ、初心忘れるべからずってやつだ」
かっこつけて言ったは良いが、俺のレベルはまだ9だ。普通に受けなきゃ駄目だろう。うん。
「ロイスに聞かせてやりたいわい。お主、口は悪いが、やはりただものではないのう」
「口が悪いは余計だ。まあ耳が痛いんだがな……クセの様なものだから気にするな」
そこでおっさんが俺の耳の近くまで口を寄せ、さらに小さい声で聞いてくる。
「そういえば、エリザの方はどうなったんじゃ?」
不本意ながら、俺もおっさんの耳に口を寄せ返答する。
「婚約という形に落ち着いたな。式はだいぶ先になるだろう」
「なるほどのう。彼女は今エルフ国に……?」
「そうだ」
おっさんは納得したように頷く。
「それにしてもお主がいるのでは、わしはやりづらいのう」
「何の事だ?」
「午後の座学の事じゃ。特別講師として招かれておる。まあ帝都でも数少ない中級攻略者の一人じゃから頼まれると断りづらいんじゃよ」
「なるほどな……勉強させてもらうとしよう」
俺はニヤリと笑う。
「言っておくが、お主の為になる事など言えんぞ。そもそも講師はお主でもいいはずじゃがな……」
「お断りだ」
「そう言うと思ったがのう」
午前中に一緒に座学を受けていた者が午後に講師をやりだしたらあまりに不自然だろう。
そもそも、そんな事を引き受ける気も無いがな。
午後の座学が始まる時間になったので、おっさんと離れる。
俺は自分の席に座り直す。
もう始まるというのにアキームが話しかけてくる。
「今の人は誰なんですか?」
「ん? まあ少し待ってれば分かるさ」
俺が答える気が無いのが分かったのか、それ以上聞かれる事は無かった。
午前の座学を担当した職員が、おっさんの事を紹介し始める。
「このお方は本日の特別講師、リック様です。若い方ですと知らないかもしれませんが、我が国の元騎士団長で、中級ダンジョンの攻略者でもあります。本日は貴重なお話を聞かせて頂く事になります」
元騎士団長というところと中級ダンジョンを攻略済みと言ったところで、受講者からざわめきが起こる。
まあ、実際すごい肩書だよな。
隣に座っているアキームも俺の方を見て口をパクパクしている。
あまりにも気安くおっさん呼ばわりしてしまったから、そういう反応になるのも頷けるが。
俺は、おっさんの講義を適当に聞き流し、講習1日目を終えた。
講習終了後、おっさんから誘いを受ける。
「宿をとってないならまた城に食べにこんか? ロイスやライカも喜ぶじゃろうて。もちろん部屋も用意させるが……」
俺は少し考える。
頻繁に城を訪れるのもあまり良い事とは思えないな。
必要以上に国との結びつきを強めるのはマズイ気がしてきた。
まあ今更な気も多少はするが。
もちろん2人には会いたいが、そもそも今日は宿をとっている。
今回は断る事にする。
「……悪いが今日はやめておく。すでに宿をとっているんだ。2人にはよろしく伝えておいてくれ」
「そうか、残念じゃが仕方ないのう……」
そこでおっさんが何か思い出したようにニヤニヤと笑い始める。
「そういえば面白い噂話があってのう。何故かお主とライカが……」
おっさんが何か話をしようとしていたが、そこにギルド職員が割り込んでくる。
「リック様、明日とあさっての打ち合わせをしたいのですが、お時間よろしいでしょうか?」
「む、仕方ないのう。まあこの話は明日じゃ。またなカイト」
「ああ、じゃあなおっさん」
ギルド職員の前でおっさん呼ばわりして良いものか一瞬考えたが、最初にみんなの前で一回呼んでしまっている。俺はひらきなおる事にした。
おっさんと別れてから、アキームが話しかけてくる。アーシェもすぐ隣にいる。
「カイトさんはすごい方だったんですね。まさか騎士団長とお知り合いとは……」
「元、だけどな。俺としては騎士団長の方が話しやすい」
しかし、アキームでは無く何故かアーシェが興奮した様子で聞いてくる。
「えっ!! それは現騎士団長ともお知り合いという事でしょうか?」
口が滑ったと思わないでもなかったが、別にいいかと思い普通に答える。
「ああ、ロイスとは友人だ」
ロイスから友人と言いだしたのだから、別に構わないだろうと判断し、俺も友人という事にする。
「いったいどうやって騎士団長と、お知り合いになるのでしょうか?」
「俺のはただの偶然だぞ?」
「是非、詳しくお聞きしたいです!!」
妙に積極的だが、アーシェはロイスに憧れの気持でも抱いているのだろうか?
国の騎士団長だしな、それに若くて、顔も悪くない。よく考えると嫌われる要素が無いな。
まあ俺から言わせれば性格に多少難が有るがな。
「ロイスはこの国の女性に人気あるのか?」
俺は小声でアキームに尋ねる。
「ええ、すごい人気ですよ。うちの妹やその友達も憧れているんだとか」
なるほどな。
なんかこれ以上は教えないとか言い出したら、妹が怒り出しかねないな。
「そうたいした話じゃない。ロイス達は俺が普段から潜っているダンジョンに攻略に来たんだ。そこで奴らが困っているところに、俺が登場して助けてやったってところだな」
「……ひとかけらも信じられないんですが」
アーシェが冷たい視線を向けてくる。
細部までは合ってるとは言い難いが、だいたいは説明の通りなんだがな。
俺が初心者講習を受けにきているから説得力が無いのだろうな。
全く信じてもらえないのも、なんかイラつくな。
俺は意地でもアーシェに信じてもらい、俺を認めさせたくなってきた。
「それだけじゃない、俺のダンジョンでのあまりにすばらしい戦いぶりに、一緒にいたエルフの姫様に結婚を申し込まれたんだ」
「はいはい」
もはやアーシェはまともに聞く気さえ無い様だ。
だが俺も同時に、自分で言っておいてなんて嘘くさいんだ、と思ってしまっていた。
しかし、こうなっては俺も引っ込みがつかない。
「エルフ国の王様と王妃様も、結婚には大賛成でな……1年後には結婚する予定だ」
「よかったですね」
俺は正直、話してはいけない事までベラベラしゃべってしまった気がするが全く相手にされない。
よかったですねと言いつつ俺の方を見る気配すらない。
もはや興味が無い様だ。
しかし、俺の嘘くさい話にも、兄であるアキームは嫌な顔せず付き合ってくれている。
なんていい奴なんだ。
まあ話を信じてくれているかは、分からないが。
アキームが話を聞いてくれた事にとりあえず満足し、アーシェに信じさせる事は諦める。
信じさせても、メリット無いしな。
俺はアキームにのみ挨拶を交わして2人と別れる。
そもそも妹の方は目すら合わせようとしてくれなかった。
どうやら出会って初日に嫌われたらしい。
まあ気にしてもしょうがないので、宿に帰る事にする。
次の日、午後の座学でまたも俺は、思いがけない出会いを果たす事になった――
「おっさん!!」
俺の声に気がついたおっさんが、びっくりした表情をしながら近寄ってくる。
今もエルフ国にいると思っていただろうからな。
つい大声で呼んでしまった為か、周囲の注目を浴びるが、あまり気にしない事にする。
午前中の座学を担当したギルド職員なんかは、信じられないといった表情で俺の事を見ている。
さすがにおっさん呼ばわりは、まずかったか。
まあギルドの職員なら、おっさんの事は知っているだろうしな。
「おまえさん、こんな所で何しとるんじゃ?」
おっさんの声のボリュームが大きかったので、俺は意味有り気に、咳払いをして、小声で話し始める。
「いや、昨日まではエルフ国に厄介になってたんだがな……やりたい事があって帝都に戻って来たんだ」
おっさんも俺の意図を理解してくれたらしく自然と小声になる。
「やりたい事とはなんじゃ? 今日ここでは、初心者講習しかやってないと思ったがのう」
「それそれ、初心者講習を受けに来てるんだ」
「おまえさん、気は確かか? どうして今更中級の初心者講習など受ける必要があるんじゃ?」
「いや、ギルド職員の人から講習を受けなきゃ帝都の中級ダンジョンには入れないって聞いたんだが?」
「レベル15以上なら免除じゃよ。お主なら全く問題ないはずじゃが……そもそも職員が最初にレベルが15以上か否か、確認する決まりになっておるはずなんじゃがな……」
おっさんは首をかしげるが、俺は逆に職員の対応には納得できた。
俺が申し込みを頼んだギルド職員は、直前に女神のダンジョンの資料を借りに行った時対応してくれた職員だったからな。
逆にレベルが15以上だと思う方が不自然だ。
「今からでも免除にするかの? わしが話をしてきてやっても良いが?」
「いや……折角だから受けていくさ、初心忘れるべからずってやつだ」
かっこつけて言ったは良いが、俺のレベルはまだ9だ。普通に受けなきゃ駄目だろう。うん。
「ロイスに聞かせてやりたいわい。お主、口は悪いが、やはりただものではないのう」
「口が悪いは余計だ。まあ耳が痛いんだがな……クセの様なものだから気にするな」
そこでおっさんが俺の耳の近くまで口を寄せ、さらに小さい声で聞いてくる。
「そういえば、エリザの方はどうなったんじゃ?」
不本意ながら、俺もおっさんの耳に口を寄せ返答する。
「婚約という形に落ち着いたな。式はだいぶ先になるだろう」
「なるほどのう。彼女は今エルフ国に……?」
「そうだ」
おっさんは納得したように頷く。
「それにしてもお主がいるのでは、わしはやりづらいのう」
「何の事だ?」
「午後の座学の事じゃ。特別講師として招かれておる。まあ帝都でも数少ない中級攻略者の一人じゃから頼まれると断りづらいんじゃよ」
「なるほどな……勉強させてもらうとしよう」
俺はニヤリと笑う。
「言っておくが、お主の為になる事など言えんぞ。そもそも講師はお主でもいいはずじゃがな……」
「お断りだ」
「そう言うと思ったがのう」
午前中に一緒に座学を受けていた者が午後に講師をやりだしたらあまりに不自然だろう。
そもそも、そんな事を引き受ける気も無いがな。
午後の座学が始まる時間になったので、おっさんと離れる。
俺は自分の席に座り直す。
もう始まるというのにアキームが話しかけてくる。
「今の人は誰なんですか?」
「ん? まあ少し待ってれば分かるさ」
俺が答える気が無いのが分かったのか、それ以上聞かれる事は無かった。
午前の座学を担当した職員が、おっさんの事を紹介し始める。
「このお方は本日の特別講師、リック様です。若い方ですと知らないかもしれませんが、我が国の元騎士団長で、中級ダンジョンの攻略者でもあります。本日は貴重なお話を聞かせて頂く事になります」
元騎士団長というところと中級ダンジョンを攻略済みと言ったところで、受講者からざわめきが起こる。
まあ、実際すごい肩書だよな。
隣に座っているアキームも俺の方を見て口をパクパクしている。
あまりにも気安くおっさん呼ばわりしてしまったから、そういう反応になるのも頷けるが。
俺は、おっさんの講義を適当に聞き流し、講習1日目を終えた。
講習終了後、おっさんから誘いを受ける。
「宿をとってないならまた城に食べにこんか? ロイスやライカも喜ぶじゃろうて。もちろん部屋も用意させるが……」
俺は少し考える。
頻繁に城を訪れるのもあまり良い事とは思えないな。
必要以上に国との結びつきを強めるのはマズイ気がしてきた。
まあ今更な気も多少はするが。
もちろん2人には会いたいが、そもそも今日は宿をとっている。
今回は断る事にする。
「……悪いが今日はやめておく。すでに宿をとっているんだ。2人にはよろしく伝えておいてくれ」
「そうか、残念じゃが仕方ないのう……」
そこでおっさんが何か思い出したようにニヤニヤと笑い始める。
「そういえば面白い噂話があってのう。何故かお主とライカが……」
おっさんが何か話をしようとしていたが、そこにギルド職員が割り込んでくる。
「リック様、明日とあさっての打ち合わせをしたいのですが、お時間よろしいでしょうか?」
「む、仕方ないのう。まあこの話は明日じゃ。またなカイト」
「ああ、じゃあなおっさん」
ギルド職員の前でおっさん呼ばわりして良いものか一瞬考えたが、最初にみんなの前で一回呼んでしまっている。俺はひらきなおる事にした。
おっさんと別れてから、アキームが話しかけてくる。アーシェもすぐ隣にいる。
「カイトさんはすごい方だったんですね。まさか騎士団長とお知り合いとは……」
「元、だけどな。俺としては騎士団長の方が話しやすい」
しかし、アキームでは無く何故かアーシェが興奮した様子で聞いてくる。
「えっ!! それは現騎士団長ともお知り合いという事でしょうか?」
口が滑ったと思わないでもなかったが、別にいいかと思い普通に答える。
「ああ、ロイスとは友人だ」
ロイスから友人と言いだしたのだから、別に構わないだろうと判断し、俺も友人という事にする。
「いったいどうやって騎士団長と、お知り合いになるのでしょうか?」
「俺のはただの偶然だぞ?」
「是非、詳しくお聞きしたいです!!」
妙に積極的だが、アーシェはロイスに憧れの気持でも抱いているのだろうか?
国の騎士団長だしな、それに若くて、顔も悪くない。よく考えると嫌われる要素が無いな。
まあ俺から言わせれば性格に多少難が有るがな。
「ロイスはこの国の女性に人気あるのか?」
俺は小声でアキームに尋ねる。
「ええ、すごい人気ですよ。うちの妹やその友達も憧れているんだとか」
なるほどな。
なんかこれ以上は教えないとか言い出したら、妹が怒り出しかねないな。
「そうたいした話じゃない。ロイス達は俺が普段から潜っているダンジョンに攻略に来たんだ。そこで奴らが困っているところに、俺が登場して助けてやったってところだな」
「……ひとかけらも信じられないんですが」
アーシェが冷たい視線を向けてくる。
細部までは合ってるとは言い難いが、だいたいは説明の通りなんだがな。
俺が初心者講習を受けにきているから説得力が無いのだろうな。
全く信じてもらえないのも、なんかイラつくな。
俺は意地でもアーシェに信じてもらい、俺を認めさせたくなってきた。
「それだけじゃない、俺のダンジョンでのあまりにすばらしい戦いぶりに、一緒にいたエルフの姫様に結婚を申し込まれたんだ」
「はいはい」
もはやアーシェはまともに聞く気さえ無い様だ。
だが俺も同時に、自分で言っておいてなんて嘘くさいんだ、と思ってしまっていた。
しかし、こうなっては俺も引っ込みがつかない。
「エルフ国の王様と王妃様も、結婚には大賛成でな……1年後には結婚する予定だ」
「よかったですね」
俺は正直、話してはいけない事までベラベラしゃべってしまった気がするが全く相手にされない。
よかったですねと言いつつ俺の方を見る気配すらない。
もはや興味が無い様だ。
しかし、俺の嘘くさい話にも、兄であるアキームは嫌な顔せず付き合ってくれている。
なんていい奴なんだ。
まあ話を信じてくれているかは、分からないが。
アキームが話を聞いてくれた事にとりあえず満足し、アーシェに信じさせる事は諦める。
信じさせても、メリット無いしな。
俺はアキームにのみ挨拶を交わして2人と別れる。
そもそも妹の方は目すら合わせようとしてくれなかった。
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