社交界で地味な存在だった私が、せっかく結婚できたのに

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第三章

第一話

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フローレンスは、ジョセフ王太子にディナーを招待され、再び服選びに迷った。エミリーも洋服屋についてきてくれたが、いまいち自信がなかった。

「派手すぎず、地味すぎず、難しいわよね。」

いつもはグイグイ引っ張るエミリーも、今日は調子が違うといった感じだ。

とりあえず店員に聞いてみたが、さすがに王太子を相手にディナーと言うとそれは難しいといった様子で、店長が自ら選ぶこととなった。

「最初のパーティーの時に濃紺のドレスであったのでしたら、今回も同じ系統の色にしましょうか。」

そう言って紺色と白のジャンパースカートを持ってきた。そしてフローレンスの身体に合わせてみて、

「そうねえ、これがいいと思うわ。」

と言って満足げな表情を浮かべた。

エミリーもフローレンス自身も、なんとなく似合っているような感じがしていた。

そして迎えた当日、フローレンスは自宅の馬車に乗り王宮に着いた。フローレンスの両親は光栄なことだとは思いつつ、不安も抱えながら娘を送り出した。

王宮の外壁の門をくぐり、中の宮殿の門もくぐると、衛兵がやってきた。そのまま案内されるのかと思っていたら、奥から王太子が直々にあらわれた。彼は

「やあ、フローレンス。」

今日も気さくに話しかけてきた。フローレンスはかしこまりながら、

「王太子様、本日はお招きくださりありがとうございます。」

と言ってお辞儀をした。王太子は、

「さあさ、中に入って。」

と言ってフローレンスをエスコートした。

フローレンスは、王宮の中に入ったことはあったが、あくまで外壁の中に数回入ったことがあるだけで、それぞれの建物の中に入るのはこれが初めてであった。もちろん、王太子の私的な空間であるこの建物の中も初めてだったので、思わず周りをキョロキョロしてしまった。

王太子はそれを見て

「はは、意外と質素だろ?」

と笑った。フローレンスは

「はい、あ、いえ、そんなことは・・・」

と答えた。どう答えてよいか分からなかった。

「はは、いつも通り正直に答えてくれていいよ。」

王太子はなおも笑顔を絶やさなかった。あれ?私ってそんなに正直だったっけ?

王太子宮、といっても小さな建物だったが、その中の庭園を見ながら廊下を歩いていき、2人は大広間にやってきた。

「では、ようこそ、王太子宮へ。お座りください。」

フローレンスは、王太子に促されるまま、彼が引いた椅子に腰かけた。王太子はテーブルの反対側の椅子に座ると、

「どうだい?食事の前に何か飲むかい?」

と聞いてきた。フローレンスはやや緊張しながら、

「ありがとうございます。では、ワインをいただけますでしょうか?」

と尋ねた。王太子は「もちろん。」と答え、彼女にワインリストを見せた。2人で10年ものの赤ワインを飲むことになった。
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