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第三章 ふたりのインターンシップ
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デスクの左側の定位置で出勤してきたばかりの麗奈が鏡を食い入るように覗き込んで、マスカラの具合を確かめている。
舞香はデスクの右側で、スタンバイ業務の一つである「明日のオーダーシート作り」に集中していた。
裏の扉がガチャと開いて、支配人の西村の靴音が聞こえてきた。
振り向くと、舞香の視界には一枚の紙をひらひらと手に持った西村がいた。
「インターンシップ、来週から来るから。よろしくね」
西村は一方的に言うと、二人の間にその紙を置き追い立てられるように、また扉のほうに歩いて行ってしまった。
「ここに、貼っときます?」
舞香は紙を指先でつかみホワイトボードを指さすと、麗奈は「お願い」と言ったまま、まだ鏡を見ている。
舞香は紙を見つめていた。「インターンシップ受け入れのお願い」という文字の下には、二人の名前があった。
篠田 みな子
高嶺 葵
(下のほうの名前、なんて言うんだろう?……たか……たか、ね? ……とは言わないか……)
「文泉学園短大から来るんだったら、みずほちゃん、二人のこと知ってますかね?」
舞香は、土日と平日の夕方以降だけシフトに入っている同じ文泉短大の学生アルバイトの、みずほの顔を思い浮かべた。
インターンシップに来るのは一年生で、みずほは二年生だ。
麗奈は「どうかなあ」と曖昧な返事をしながら、ようやく鏡から目を離した。メイク道具を大きなバッグに入れ、私物ロッカーにしまう。
「あ、そうだ。今回は『新人セット』は、まいに準備してもらおうかな。サロンにあるから、笹川さんに言えばもらえるから。もらったら、クロークのマニュアル入れといて……そうだな、預かりとアテンドだけでいいから」
クロークに新人が入るときにいつも麗奈が準備している様子を、舞香は見たことがあった。
ただそれが、サロンに用意してあるものだと気付くことはなかったが、よく考えれば納得できる。サロンは宴会やブライダルの打ち合わせをする場所だから、当然館内見取り図や契約駐車場などホテルの案内が一式、紙製の二つ折りのファイルに揃っている。
舞香は早速、コーヒーを下げてきて一息ついている笹川さんに声をかけた。
「笹川さん、今度インターンシップの子が二人来るので、サロンにある、ホテル案内のセットを二部ください」
「ああ、インターンシップの子たちの? 今持ってきますねー」
コーヒーカップを片付け終わると笹川さんは慣れた様子で、サロンから紙製の二つ折りのファイルを二組持ってくると舞香に差し出した。
それぞれのファイルにコピーしてきたクロークマニュアルを入れて完成。後ろの棚にどさっと置いた。すると小さな風が起こり、ムスクの香りが舞香の鼻の奥まで流れてきた。
舞香の記憶の中で、ムスクの香りが警告のように不穏にざわめいた。
舞香はデスクの右側で、スタンバイ業務の一つである「明日のオーダーシート作り」に集中していた。
裏の扉がガチャと開いて、支配人の西村の靴音が聞こえてきた。
振り向くと、舞香の視界には一枚の紙をひらひらと手に持った西村がいた。
「インターンシップ、来週から来るから。よろしくね」
西村は一方的に言うと、二人の間にその紙を置き追い立てられるように、また扉のほうに歩いて行ってしまった。
「ここに、貼っときます?」
舞香は紙を指先でつかみホワイトボードを指さすと、麗奈は「お願い」と言ったまま、まだ鏡を見ている。
舞香は紙を見つめていた。「インターンシップ受け入れのお願い」という文字の下には、二人の名前があった。
篠田 みな子
高嶺 葵
(下のほうの名前、なんて言うんだろう?……たか……たか、ね? ……とは言わないか……)
「文泉学園短大から来るんだったら、みずほちゃん、二人のこと知ってますかね?」
舞香は、土日と平日の夕方以降だけシフトに入っている同じ文泉短大の学生アルバイトの、みずほの顔を思い浮かべた。
インターンシップに来るのは一年生で、みずほは二年生だ。
麗奈は「どうかなあ」と曖昧な返事をしながら、ようやく鏡から目を離した。メイク道具を大きなバッグに入れ、私物ロッカーにしまう。
「あ、そうだ。今回は『新人セット』は、まいに準備してもらおうかな。サロンにあるから、笹川さんに言えばもらえるから。もらったら、クロークのマニュアル入れといて……そうだな、預かりとアテンドだけでいいから」
クロークに新人が入るときにいつも麗奈が準備している様子を、舞香は見たことがあった。
ただそれが、サロンに用意してあるものだと気付くことはなかったが、よく考えれば納得できる。サロンは宴会やブライダルの打ち合わせをする場所だから、当然館内見取り図や契約駐車場などホテルの案内が一式、紙製の二つ折りのファイルに揃っている。
舞香は早速、コーヒーを下げてきて一息ついている笹川さんに声をかけた。
「笹川さん、今度インターンシップの子が二人来るので、サロンにある、ホテル案内のセットを二部ください」
「ああ、インターンシップの子たちの? 今持ってきますねー」
コーヒーカップを片付け終わると笹川さんは慣れた様子で、サロンから紙製の二つ折りのファイルを二組持ってくると舞香に差し出した。
それぞれのファイルにコピーしてきたクロークマニュアルを入れて完成。後ろの棚にどさっと置いた。すると小さな風が起こり、ムスクの香りが舞香の鼻の奥まで流れてきた。
舞香の記憶の中で、ムスクの香りが警告のように不穏にざわめいた。
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