異世界最強ロリ魔王のせかいせいふく

第二話 久我冬人のとうぼう

「あぁ？なんて言ったんだ？」
おい、俺、なんで今になって自己紹介してるんだ。
「まぁいい。おい、シャエル。こっちに例のやつがいたぞ」
シャエルってさっきの仲間だよね。そんなの呼んで何するんだよ。俺が一体、何したんだ。ていうか、さっきから気になってたけど、このルードってやつ明らかに人間じゃない。肌は灰色だし、髪は雷で色が抜けたみたいに真っ白だ。それに、真っ黒な翼が背中についてるのが樽の中からちらりと見える。なんだ？悪魔かなんかか？
いや、そんなことはどうでもいいんだ。今はこいつらから逃げる方法を考えないと…
「はーい、今そっちに行きますようだ。」
後ろから女の声が近づいてくる。
やばい、シャエルってやつが来る。なんとか逃げないと。そう思っていると声がかかる。
「おい、早くその中から出て来い。」
そう言われて、樽から出ようとする。はいはい出ればいいんでしょ。
そして、樽から出てルードの体全体を見る。やはり灰色だ。
うん、人間じゃないな。
というか、シャエルってやつ遅くない？
「おい、シャエル、早く来い。何してんだ。」
「ちょっとクモの巣が絡まって動きにくいんだよ～。ほどくの手伝ってよ～。」
「ったく、今行くから待ってろ。」
なんだ、巣が絡まってただけか。…ていうかこれチャンスじゃね？ルードがあっちに行けば、に　げ　れ　るー‼︎と思ってたらルードがこっちを見て、
「絶対そこから動くなよ。逃げたらどうなるかわかってんだよな。」
そう言いシャエルの方へ歩いていく。
ヒェー、こっわ。逃げたらどうなるかわかってんだよな、だって～。
逃げるに決まってんだろ、バカ野郎。　そして、私、久我冬人史上、最も危険な鬼ごっこが始まったのだった。
「あ～、やっとほどけたよ～。キモかったなぁ。あ、あーとうね。ルード。」
「おめぇはちゃんと礼も言えねえのか。気持ちがこもってねえんだよ。」
「はいはいありがとう、ありがとう。」
「ていうか、なんでいきなり蜘蛛の巣なんかにひっかかってんだよ、ってあいつどこいった？」
「あ～そいつならさっき走って逃げってったよ～」
「ってめ！早くそれを言いやがれ！追いかけるぞ！」
「はいはーい」
やばい！あいつら追いかけてきた。ていうか、あいつらめっちゃ足速いな！このままだと追いつかれる。俺の足速くなれー！そう祈ると足が速くなった感覚がした。ん？なんだこれなんちゃら効果ってやつか？いや、それでは説明できないくらいに足が速くなってる。だんだん奴らが後ろに下がっていく。
「おい！このままだと逃げられるぞ！」
「そうだね～」
「てめぇはなんでそんなに呑気なんだよ！ちっ！クソが！死ねや！」
そう言いルードはどこからか出した大剣をこっちに向かって投げてくる。
いや！死ね、って！仮にも俺、捕虜的扱いだったよねぇ！それを殺してもいいの？！
「ちょっと、ルード殺しちゃダメだってリーネ様に叱られちゃうよ！」
そんなことが聞こえている間に大剣は自分の真後ろまで来ていた。
やばい死ぬって！なんとかならんのか！
壁がいきなり出てきて俺を守ってくれるとかよ！
そう祈ると、大剣は、カコンッと音を立てて落ちた。
え？大剣が止まった？そんなことってあるのか？と思っていたが、どうやら違うらしい。
「おい！どうなってんだこの先に行けねえぞ」
「この通路広いけど、全部塞がれちゃってるね～。遠回りしないとね。」
「くそ！おい！ガキ！一体何をしたんだ！」
ルードが叫び、俺に謎の壁について聞いてくる。
「し、知らねぇよ。想像したらできただけだし…」
消え入りそうな声でそう答える。
「想像しただけで？やっぱり…」
シャエルが何か意味深なことを言う。
どういうことだ？やっぱりか、だと？
「おい！シャエル何か知ってんのか？」
「いや、なんでもないよ。」
そんな感じのことをあいつらは話している。内容は気になるがそんなことより早く逃げないと。そうして、久我はその場から全速力で逃げた。