婚約から始まる「恋」

観月 珠莉

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*55* 食事の約束

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やがて、週末を迎え、鮫島さんと食事に行くがやってきた。
人目が気になるから、とホテルへのお迎え控えて貰えるようにお願いしたが、鮫島さんが言うには、別に疚しい事は無いから…とロビーで待ち合わせる事になった。
制服から着替え、ロビーで鮫島さんと落ち合った時に、突如、みのりちゃんに声を掛けられた。

「霧ヶ谷さん、終業後にすみません。一点、確認したい事がありますので、少しだけお時間を頂けますか?」
「あ、はい。」

私は、鮫島さんに断りを入れ、みのりちゃんに応えた。

**********

「ちょっと、さくら!!」
「みのりちゃん、どうしたの?」
「どうしたの?…じゃ、無いわよ!!宝生院家の御曹司とお見合いしたかと思ったら、今度は鮫島電機の専務ってどういう事な訳?」

そうだった…このややこしい状況になってから、みのりちゃんに一切相談していなかった事をすっかり失念していた。

「いやぁ~、これには複雑に絡まり合う面倒な事がございまして…。」
「この状況は、宝生院社長は知っているの?」
「う~ん、知っているような知らないような…。」
「も~、さくらったら、宝生院家に関わってから、何だか奥歯にモノが挟まったようなパッとしない返事ばかり。」
「そう…だよね。ごめん。」
「まぁ、竹を割ったような性格のさくらがのらりくらり言うって事は、きっと色々と複雑なんだろうけれど、私くらいには言ってよね!!」
「わかった。近々、みのりちゃんのお家に泊まりに行っても良い?何処ででも話せる感じでも無いのよ…。」
「了解ッ!!明日にでも、シフト表を見ながら日程を決めようね。」
「ありがとう。」

こうして、近々、みのりちゃんに状況を話す事になった。
話して良いのか迷える気持ちと、一人で抱えなくて良いんだ…という気持ちが交錯している。

「取り敢えず、鮫島専務を余り待たせる訳にもいかないだろうから、今日のところはもう行きなよ。」
「うん…ごめん。」
「さくら、謝ってばかりだよ。」

みのりちゃんは優しい表情で頭を撫でてくれた。
同じ歳なはずなのに、みのりちゃんはお姉ちゃんみたいだ。

「行ってらっしゃい。」
「うん、ありがと。行ってきます。」

**********

みのりちゃんとの話が終わり、鮫島さんの下へと戻った。

「鮫島さん、お待たせしてしまって申し訳ありません。」
「いえいえ。お仕事は問題無さそうですか?」
「はい。本当に小さな確認事項でしたから、大丈夫です。」
「そうですか。では、お店に向かいましょうか。今日は、お薦めのイタリアンのお店にお連れしますよ。」

そう言って、鮫島さんはスマートにエスコートしてくれた。
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