独裁者サマの攻略法

観月 珠莉

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【08】 捕獲

*087* 苦しい胸の内

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悠李は、まさかこのタイミングで、何も教えて貰えない答えを貰えるとは思っていなかった。

「な…んで…?」
「こちらがスパイで入り込むという事は、その逆もまた然り…だ。」
「……。」
「内通者が居たんだ。」
「そんな…。」
「俺が戻った時、護衛対象者は、既に虫の息だった。」

悠李は、話を聞きながら身体の震えを止める事が出来なかった。

「国の未来を守る為に、護衛対象者は、何種類かある国宝の中から、その一種類を俺の手に託して逃げるように言ったんだ。」
「一條は、その人の事が本当に好きだったのね。」
「護ってやりたいと思っていた。好き…とはちょっと違うが、本当に大切に思っていたのは事実だ。」

一條の話を聞き、悠李は苦しそうな表情を浮かべながらようやく口を開いた。

「それは……ヨハンナね?」
「……そうだ。」

解っていたはずの事なのに、それを肯定されると悠李の胸は息が出来ない程に苦しくなった。

「来い!!」

突然、一條が悠李の手を引き、寝室へと引っ張って行った。
悠李は、その勢いにただ、転ばないように付いて行くしかない。
勢い良くクローゼットを開けると、以前に置かれていたアレキサンドライトの国宝が消えていた。
悠李は、驚きのまま固まってしまった。

「……。」

意味が解らない悠李は、一條の顔を見上げるしか無い。

「折角の機会だったから、お前を迎えに行ったタイミングで、国王陛下にお返しした。」
「国を守る為に預かっていたんじゃ…?」
「もう、何年も預かっていた。今では、あの国の状況も変わっている。そろそろ良い頃合いだろう?」

確かに、ある意味、縁もゆかりも無い一條が、何時までも持ち続けているのも可笑しな話だ。

「ここにお前が訓練生として入ってきた時、正直、驚いた。まるで、王女殿下が護り切れなかった俺に何かを伝える為に、俺の前に戻ってきたのかと思った。」
「……。」
「お前は、今後、どうするつもりなんだ? 冬馬は、お前にこんな危険な事はさせたくないと言っていただろ? この仕事は、何時でも危険と隣り合わせだ。お前にその覚悟はあるのか?」

一條は、苦しそうな表情を浮かべ、悠李の身体を抱き込んだ。
悠李の頭が一條の胸に当たり、珍しく、一條の心音がバクバクと早く脈打っているのが判る。
何時でもポーカーフェイスの一條の心臓が早鐘のように鳴っているのは、とても不思議な感じがした。

「一條…私……。」

悠李は、そっと一條の腰の辺りに手を廻した。
何を言ったら良いのか、上手い言葉が見つからない。
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