23 / 47
第二章 燃え上がる日々
第八話 悲哀
しおりを挟む
桃子は部活が終わり、家に着くと携帯で電話をかけた。相手は将紘だ。
「あいよ。」
「おい、お前貴哉に何した?」
「は?」
「今日、貴哉が鼻血ダラダラで歩いてたんだよ!」
「あぁ、お前あいつ知ってんのか。見たまんまだよ。」
「ぶち殺すぞこら!」
桃子は声を荒げる。
「おいおい、お前何ムキになってんだよ?」
「うるせぇ!なんであんなことしたんだ!?答えろ!答え次第じゃお前の金玉噛みちぎるぞこら!」
ちなみに桃子に彼氏ができないのはこういうことを平気で言うからである。
「あれはな、貴哉を試したんだ。」
「試しただと?」
「あぁ、脅かしてみたらどんな反応するか見てみたかったんだ。」
「あぁ?」
「あいつ、ああ見えてなかなか気合いの入った野郎だったよ。」
「....そもそもなんで脅かしたんだよ?」
「お披露目式に来たからだよ。」
「お、お披露目式!?あいつ、野球部なの!?」
「そうだぜ。」
桃子は言葉を失いかけるも、それでもどうにか続ける。
「お、脅すにしたって、あれは只の暴力だろうが!」
「そりゃそうだ。」
「あっさり言ってんじゃねぇよ!ぶち殺すぞ!」
「黙れこら!」
将紘が怒鳴り返した。さすがの桃子も固まる。
「いいか、よく聞け?俺が本気であいつを殺そうとしたとでも思ったか?もしそうだったらあれぐらいじゃ済まさねぇよ!」
「じゃ、じゃあ、なんで....」
「教育の一環、ってとこか。」
将紘が少々寂しそうに答えた。
「あいつはまだまだ敬語も苦手で礼儀とかも分からねぇんだ。だからよぉ、分かってもらいたくてな。」
「....」
「俺だって、あんな奴殴るのは嫌だったけど、そういう訳にはいかねぇからよ。」
「....」
「なぁ、バレー部仕切ってるお前なら、分かるだろ?」
桃子は何も言えなくなって電話を切った。彼らは自分と同じで、自分がされてきたことしか出来ないのだろう。分かっていたはずなのに、なぜこんなに辛い気持ちになるのだろうか。相手が貴哉だったからか。恐らくそれだけではない。
「お姉ちゃーん。入るよー。」
間の抜けた声が聞こえる。伯亜だ。なかなか部屋から出て来ないから心配になって見に来たのだ。
「お姉ちゃんどしたの?そんな暗い顔して?」
「伯亜、こっちおいで。」
「?」
近付いてきた伯亜を桃子は強く抱き締める。
「今日、お姉ちゃん1人で寝れそうにないんだ。だから、一緒に寝よ?」
「....うん!」
桃子はいつも落ち込んだ時は伯亜と一緒にいることにしている。
「じゃ、お風呂入ってくるね!」
「行っておいで。」
伯亜が部屋から出ていく。再び1人になった途端、涙が込み上げてきた。
「うぅ....悔しいよぉ....」
結局、自分たちも大嫌いだった先輩たちと同じことしかできない。それが何より悔しかった。
つづく
「あいよ。」
「おい、お前貴哉に何した?」
「は?」
「今日、貴哉が鼻血ダラダラで歩いてたんだよ!」
「あぁ、お前あいつ知ってんのか。見たまんまだよ。」
「ぶち殺すぞこら!」
桃子は声を荒げる。
「おいおい、お前何ムキになってんだよ?」
「うるせぇ!なんであんなことしたんだ!?答えろ!答え次第じゃお前の金玉噛みちぎるぞこら!」
ちなみに桃子に彼氏ができないのはこういうことを平気で言うからである。
「あれはな、貴哉を試したんだ。」
「試しただと?」
「あぁ、脅かしてみたらどんな反応するか見てみたかったんだ。」
「あぁ?」
「あいつ、ああ見えてなかなか気合いの入った野郎だったよ。」
「....そもそもなんで脅かしたんだよ?」
「お披露目式に来たからだよ。」
「お、お披露目式!?あいつ、野球部なの!?」
「そうだぜ。」
桃子は言葉を失いかけるも、それでもどうにか続ける。
「お、脅すにしたって、あれは只の暴力だろうが!」
「そりゃそうだ。」
「あっさり言ってんじゃねぇよ!ぶち殺すぞ!」
「黙れこら!」
将紘が怒鳴り返した。さすがの桃子も固まる。
「いいか、よく聞け?俺が本気であいつを殺そうとしたとでも思ったか?もしそうだったらあれぐらいじゃ済まさねぇよ!」
「じゃ、じゃあ、なんで....」
「教育の一環、ってとこか。」
将紘が少々寂しそうに答えた。
「あいつはまだまだ敬語も苦手で礼儀とかも分からねぇんだ。だからよぉ、分かってもらいたくてな。」
「....」
「俺だって、あんな奴殴るのは嫌だったけど、そういう訳にはいかねぇからよ。」
「....」
「なぁ、バレー部仕切ってるお前なら、分かるだろ?」
桃子は何も言えなくなって電話を切った。彼らは自分と同じで、自分がされてきたことしか出来ないのだろう。分かっていたはずなのに、なぜこんなに辛い気持ちになるのだろうか。相手が貴哉だったからか。恐らくそれだけではない。
「お姉ちゃーん。入るよー。」
間の抜けた声が聞こえる。伯亜だ。なかなか部屋から出て来ないから心配になって見に来たのだ。
「お姉ちゃんどしたの?そんな暗い顔して?」
「伯亜、こっちおいで。」
「?」
近付いてきた伯亜を桃子は強く抱き締める。
「今日、お姉ちゃん1人で寝れそうにないんだ。だから、一緒に寝よ?」
「....うん!」
桃子はいつも落ち込んだ時は伯亜と一緒にいることにしている。
「じゃ、お風呂入ってくるね!」
「行っておいで。」
伯亜が部屋から出ていく。再び1人になった途端、涙が込み上げてきた。
「うぅ....悔しいよぉ....」
結局、自分たちも大嫌いだった先輩たちと同じことしかできない。それが何より悔しかった。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる