青春〜或る少年たちの物語〜

Takaya

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第三章 始まる闘い

第十四話 慰霊の日2

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 しばらく歩き回ったが、どうもアメリカ兵らしき者は見当たらない。少し疲れたので、牧志駅の下の広場で休憩することにした。

「さすがによ、平日に那覇までは下りてこないんじゃねぇのか。」

 元々乗り気ではなかった恭典が呟く。

「いや、たまにだけどよ、迷彩柄のごっついYナンバーが走ってるの見かけるぜ?」
「それは仕事だからだろ?プライベートでわざわざ来ないんじゃねぇか?」

 音也と恭典が言い合っているのを恵弥が止める。

「そう熱くなるなよ。あと少し探してよ、いなかったら今日はもう帰ろう。貴哉、それでいいか?」
「あぁ。」

 隅で小さくなっていた貴哉に問いかける。すると、音也が立ち上がった。

「おいおい。お前、さっきから随分静かじゃねぇか。言い出しっぺなんだからもっとやる気出せよ!」
「す、すまねぇ。」

 貴哉の中にはまだモヤモヤとしたものがある。

(俺が言い出したのにすっかり恵弥が仕切ってるし、その上俺は何もできてねぇ。本当にこれでいいのかよ。)

 本当ならもうやめたい所だが、自分から言い出した手前そういう訳にはいかない。

 しばらくして行動を再開し、1時間ほど歩いたが結局アメリカ兵は見つからず、パレット久茂地の前の広場にある噴水あたりで座り込む。

「神様がこんなことすんなって言ってるんだよ。もう帰ろうぜ。」

 恭典がみんなを説得していると、彼らを呼ぶ声が聞こえた。真理亜だ。麗子と麗花もいる。

「あ、恭典だけかと思ったら和人と貴哉もいるじゃない。」
「お前何してんだよ。」

 問いかけた和人を真理亜は蹴飛ばした。

「お前じゃないだろ、ハゲ。」

 和人は適当に真理亜をあしらいながら真理亜のことを紹介した後、改めて本題に入る。

「んで、結局何してんだよ?」
「女バスに明日が誕生日の子がいてさ。美貴って分かるでしょ?その子の誕プレ探しの旅してんのよ。」

 そして、麗子もまだ誕プレを用意していないので一緒に来たこと、麗花は姉に付き合わされていることが語られた。

「ちょっと!そしたら私が意地悪イバヤーみたいじゃないの!」
「実際そうじゃないの?」

 姉たちが言い合っている側で、麗花はなんだかモジモジしている。

(まさか、こんな所で恵弥くんに会えるなんて….)

 視線の先の恵弥は自販機で買ったさんぴん茶を飲んでいる。しばらくして、真理亜の提案でどうせなら一緒に帰るか、という流れになった。

「この人数だしよ、バスよりかは電車に乗ろうぜ。」

 恵弥の提案を受け、パレット久茂地と隣接している県庁前駅に向かって歩き始めた。すると、後方から何やら大声が聞こえた。振り返ると、そこにはガタイの良い白人の男がいた。どうやら、酔っ払っているようだ。彼はフラフラと歩きながら貴哉たちに近付いてくる。そして、真理亜たち女子に向かってこう言った。

「Hey,Shall we dance?」

 何やらニヤニヤ笑いながら話しかけている。ちなみに女3人は英語が苦手だ。男子たちはというと、まだShall we~という構文を習っていないので何を言っているのか分からない。その後も、男は英語で何かを話かけている。そして、左手の人差し指と親指で輪をつくり、右手の人差し指をその中に入れる。

「Are you OK?」

 言葉の意味は分からないが、何を企んでいるかは理解できた。女3人はすっかり怯えている。

エーおい。」

 最初に和人が動いた。

「あんまりふざけてんじゃねぇぞ?」

 すると、白人がいきなり和人の顔を殴った。たまらず、和人は倒れる。女3人の悲鳴があがる。

「お前ら、逃げろ!」

 恭典はそう叫んで真理亜たちを避難させ、白人に飛びかかる。しかし、蹴り飛ばされてしまった。

「恭典!ちくしょう!一斉にかかれ!」

 恵弥の号令で全員で飛びかかる。しかし、白人は1人1人を的確に潰していく。

「日本人、弱イネ。」

 白人が片言の日本語で挑発してくる。

(くそっ!やはり真正面からじゃ敵わねぇか!このままじゃ負けちまう!)

 白人の後方に飛ばされた貴哉は焦っている。

(ちくしょう!俺が言い出したことなのによ、情けねぇ!こうなったら意地でも勝ってやる!)

 次の瞬間、貴哉は白人の背後に向けて思いっきり飛びかかった。

「いい気になってんじゃねぇよ!人殺し!」

 貴哉は思いっきりスリーパーホールドを決める。

「俺ごとやっちまえ!」

 貴哉がそう叫んだ直後、思いっきり白人の耳に噛みついた。白人の顔が苦痛で歪む。そこに恵也が渾身の飛び蹴りを食らわせた。さすがの白人も貴哉ごと吹っ飛んでいく。

「Oh,××××!」

 倒れた白人がヨロヨロと立ち上がるが、その瞬間、恵也の渾身の右フックが決まり再び地面に突っ伏した。

「やったか!?」
「あぁ!手応えありだ!それより早く逃げるぞ!ついて来い!」

 恵也に促されるまま、貴哉たちは現場を離れ1km程離れた久茂地交差点の辺りまで全力疾走した。

「はぁ....はぁ....喧嘩の後に走らせねぇでくれよ。」

 久茂地交差点付近の細い路地で、貴哉たちは恵也に抗議する。

「お前ら、よく耳を澄ませてみろよ。」

 周囲にパトカーのサイレンの音が響いている。

「県警本部が近くにあったの、すっかり忘れてたぜ。」

 恭典はそう呟きながら、恵也に礼を言う。

「それよりよ!お前、すげぇじゃねぇか!あの外人を沈めるなんてよ!」

 和人が恵也に憧れの眼差しを向けている。

「俺はお前みたいな友だちがいてマジ誇りに思うぜ!」

 音也や謙治、奏もそれに同調する。

「俺の蹴り技が全然通じねぇなんてよ、俺は悔しいぜ。」
「まぁ、そうへこむなって。お前だってよくやったじゃねぇか。」

 落ち込んでいる春樹を裕明が励ます。

「でもよ、今回勝てたのは貴哉のお陰だ。あいつがいなきゃ、勝てなかったろうよ。」

 恵也が切り出す。

「そう言えば貴哉がいねぇぞ。あいつどこいったんだ?」

 逃げることに精一杯で周りを見ていなかった。恵也自身も、最後に貴哉を確認したのは白人とまとめて蹴り飛ばした時だ。不吉な展開が全員の頭をよぎる。すると、

「おーい。」

 少し離れた所からくたびれた声がした。貴哉だ。ノロノロ歩きながらやって来る。

「はぁはぁ....お前ら、走るの速ぇよ....」

 その姿を見て恵也たちは一安心する。貴哉はゆったりと地面に座り込んだ。息切れしながら、顔を下に向けている。

(ちくしょう....結局、俺じゃ勝てなかったじゃねぇか....)

 1人で行こうとするぐらいの啖呵を切っておきながら倒せなかった。貴哉はそれが悔しい。

「貴哉、顔上げてろよ。」

 恵也が優しく話かける。

「一緒に蹴飛ばして悪かったな。」
「....気にしてねぇよ。俺が言ったことだしよ。」
「お前があの時噛みつかなかったらよ、俺たちは勝てなかったぜ。」
「....」
「やっぱりお前は大した男だよ。ありがとな。」

 恭典たちも続いて礼を言う。

(ちくしょう、みんな、余計な気使いやがって....)

 無論、恵也たちは本心で言っているが、今の貴哉にはそうは聞こえない。すっかりマイナス思考に陥っている。

(このままじゃ、ダメだ。もっと、もっと強くならねぇと!)

 貴哉はどうにかして立ち上がる。そして、その後は全員で近くのバス停まで歩き、そこからバスで帰った。

つづく


 
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