《完結済み》記憶喪失になったボク。お見舞いに来た「恋人」を名乗るギャル姉と「幼なじみ」清楚系妹の秘密を知ってしまったみたいです。

黒羽あかり

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最終話

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 ボクたちは車で帰路についていた。運転は志島しじまさんがしていた。この人も来ていたのか。助手席にはマリンが、後部座席ではボクとホノカが寄り添って座る。
 勅使河原てしがわらくんは副総長のバイクで2人乗りをしていて凄く嬉しそう。
 高速道路を走る車の外は、日が沈んでいて真っ暗だった。普段なら静寂に包まれているだろうが、今夜はブンブンとうるさいバイクの音がたくさん聞こえる。
 ホノカのこと、みんな「姉御」って呼んでいたけど……まさか、総長だったとは。
 車内では気まずい空気が流れていた。ボクはホノカの初めて見た姿に、どうしても動揺が隠せない。色々聞きたいことがあるけど、なんて話せばいいのか分からない。

なぎさくん、帰ったら何が食べたい?」

 マリンが口を開く。予想外過ぎる質問で、少し戸惑う。

「はぁ? あなたは帰ったら作業でしょうが! ご飯食べる時間なんて無いですからね!」

「うっ……志島は邪魔しないで!」

 締め切り、大変なんだろうな。
 ホノカが総長でマリンが元総長。ってことは、この人も……まさかね。

「え、えっと、ボク、食欲無いから」

「ダメだよ~成長期なんだから。ちゃんと食べないと」

 あんなことがあった後に、食べられる訳がない。

 それにしても、今日一日……濃密すぎたな。退院に学園祭に抗争……思い返すだけで、満腹になる。

「ボクが連れ去られたって、なんで知ってたの?」

「あ~勅使河原から聞いたのよ。風林ふうりんのヤツらに、絡まれて……って」

「そ、そうなんだ」

「あのね……ナギくんに言わないといけないことがあるの」

 マリンの言葉で少し空気が和み、ホノカが口を開く。

「……ナギくんが記憶喪失になったの……ウチのせいなんだ」

「は?」

 衝撃の発言で頭が真っ白になる。

「悪気があった訳じゃないの……その、見られちゃったからね」

「な、何を?」

「そ、その……特攻服」

「は?」

「い、いや、その……ウチの部屋に置いてたのを、見られたから……」

 どんどんと途切れていた記憶が蘇ってくる。
 あれは……ボクの補習を教えて貰おうとした時だ。普段と同じようにホノカの部屋に入ったら、ベッドの上に見たことない服があった。そして、ボクがまじまじと眺めていると、ドアが開く音と共に「何をしてるの?」って、聞こえた。最後に「見ないで~!」って真っ赤な表情のホノカに押し倒されたんだ。それで、床に思いっきり頭をぶつけて……

「ええっ⁉ そんなことで、ボクは記憶を失ったのか……」

「そんなこと⁉ 乙女の秘密を知っちゃったんだよ? ナギくん、酷いんだから……」

 ホノカが泣き出すのを堪えるように、ぐすんと鼻をすする。

「そ、その……どうして総長になったの?」

「喧嘩がだ~い好きだったからだもんね」

 会話の蚊帳の外になるのがイヤだったのか、マリンが口を挟む。

「違うよ! お姉ちゃんが『継げ』って言うから、やったんじゃん!」

 マリンもだったのか……結局、似た者同士の姉妹ってことなのね。

「あのね、こんな族すぐに辞めるから! ナギくん、またいつもみたいに……ね?」

 ホノカが上目遣いでお願いしてくる。そ、そんな表情をされたら……

「酷~い。茉穂まほちゃん、可哀そう」

「じゃあ、また忘れて! もう一回だけ、ね?」

「ヤダよ! また記憶喪失なんて!」

 もう大事なモノを失うのはこりごりだ。

「ええっ⁉ 渚くん、記憶戻っちゃったの⁉」

「そうよ。お姉ちゃんの偽装恋人大作戦もこれで終わりってこと」

 ホノカが勝利を確信したような様子で言った。

「嘘よ! 渚くんはアタシの彼氏だもん!」

、まだ言っているのか……」

「うぅ~呼び捨てになってるし……じゃあ、もう1回、記憶喪失になって?」

「ならない! でも、どうして恋人のフリなんてしたんだ?」

「そ、それは……」

「ウチらが羨ましかったのよねぇ~。ふたりきりで手取り足取りギターを教えてくれるナギくんとウチらのことが」

 ホノカがこの前の仕返しをするように、ボクの腕に抱き着いて見せつける。

「うぅ……だって、楽しそうだったんなんだもん! アタシも教えて欲しかった!」

「じゃあ、今度はマリンも一緒に教えよっか?」

「ほんとに⁉」

「ええっ⁉ それじゃあ、意味ないよ……」

 ポツリとホノカが呟く。

「でも真実を知って、ホノカが乱暴者だって幻滅したでしょ? だから、渚くんはアタシと……ね?」

「お姉ちゃんの方がヤバいもん! ナギくん、ウチのこと嫌いになった?」

 2人に見つめられる。もう一生、逃れることは出来ないな……

「……幻滅なんてしないよ。でも、隠しごとはもう止めてよね!」

「うん」

「……第一、こんなことで関係が変わる訳ないし。むしろ、それ以上の関係になりたいっていうか……」

 小さくボクが呟く。その言葉に、「何か言った?」とホノカが聞いてくる。

「な、何もない!」

「え~教えてよ。隠しごとはナシなんでしょ!」

「そ、そうだね。じゃあ――」

 そして、ボクはホノカの耳元でそっと囁いた。
 貴女への想いは、何十、何百、何千年……どんなことがあっても絶対に変わらない。
 そのことを『好き』の二文字に込めて。
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